色合い・模様・コロンとしたフォルムと全部が可愛らしいがま口バッグ。レトロな味わいもあって、こんなにも女子をワクワクさせてくれるデザインもなかなかないだろう。そして昔から受け継がれてきたスタイルだけに使い勝手もバツグンなのです。今回のモノづくり探訪記では、インポートファブリックを使ってつくる、どこかノスタルジックな「pavots」のがま口バッグの魅力に迫ります。
2021年7月7日
●取材・構成:編集部 ●文:石黒直樹 ●撮影:下山剛志[ALFA STUDIO]
カワイくて使いやすい! がま口バッグの魅力
明治時代にフランスから輸入された口金式のバッグや財布が、やがて日本ならではの小銭入れとして広まった「がま口」。使い勝手の良さと、開いた様子がカエルのように見えたことから「お金が帰る(カエル)」との縁起担ぎもあり、長年愛されてきたスタイルだ。
見た目の可愛らしさもあって、「がま口」は現代にも絶えることなく引き継がれ、平成・令和の世ではポーチやバッグ、リュックサックなどに形を変えて再び人気を博している。そんながま口のバッグを専門につくるブランドが今回ご紹介する「pavots」だ。それでは、キュートなアイテムに込められたこだわりと魅力を順番にお見せしていこう。
ノスタルジックに演出するインポートファブリック
「pavots」のがま口バックが他のブランドと一線を画しているのが、バック本体に使われているファブリックの数々だ。作り手・アワネさんがインターネットを通じて発掘してくる、国内外のファブリックはどれも立体感のある個性派ぞろい。今回はその中から三点をピックアップしてご紹介したい。
● フランスのジャガード生地で作った「ゼファー(Green)」
生地を織る段階で模様も織り込んでいくジャガード織りの生地。このゼファーにはスペイン製のジャガード生地が使われており、まるで刺繍のようなきめ細かな模様が美しい一品になっている。
口金を開けば、中が広く見渡せる構造はがま口バッグならでは。底面に組み合わせたPUレザーは、経年劣化が少なく、しっとりした触り心地のものがセレクトされている。この底革は、模様に方向性があるファブリックを正しく配置するために導入されたものだが、丈夫さを担保し、デザイン面でもワンポイントとなっている。
● スペインのゴブラン織りで作った「TRIANGLE(カラフル)」
TRIANGLEには、アワネさんが「ショップで見て一目惚れした」というゴブラン織りのファブリックが使用されている。カラフルな三角形が織りなす幾何学模様は、色の多さにもかかわらず派手さの無い落ち着いた雰囲気を醸し出すシックな仕上がり。ショルダータイプよりマチが広く、手提げ&肩掛けの2Weyで使えるのもうれしい。
● 日本の素材も! ビンテージ加工された帆布で作った「マスタード×ターコイズ」
がま口バッグの中でももっとも売れているというのが、この二色の帆布を組み合わせた「マスタード×ターコイズ」。頑丈さと経年変化の味わいで人気の帆布にビンテージ加工を施して落ち着いた味わいをプラス。シンプルなカラーリングと丈夫さでシチュエーションを選ばず持ち歩ける気軽さが大きな魅力だ。ファスナーを開けるとチラリと覗く水玉模様も可愛らしい。
女性ならではの目線で、可愛くて信頼できる相棒に
趣味でハンドメイドを楽しむ主婦だったアワネさんが、できあがった物を販売する手段を探したことがきっかけで2018年に始まった「pavots」。そんなアワネさんのがま口バッグには「カワイイ」に加えて女性ならではの細やか気遣いがたくさん詰め込まれている。
何気なく持っても素敵に見えるように、デザインやボリューム感にこだわり、型紙には何度も改良を重ねた。大事な物を入れても傷つかないようにと、内張りにはバッグでは珍しい厚手のキルティングを使用している。他にも、外側と内側それぞれにジッパーポケットを付けて使い勝手を高めるなど、実際に使う女性層を意識した工夫が満載されているのだ。
そして、真鍮の輝きと質感がシックな味わいを醸し出す「口金パーツ」は、長年つきあいのある工場に作ってもらっている特注品。アワネさんが理想とするバッグの形にあわせて、pavotsのがま口バッグのためだけに設計されたスペシャルなパーツが使われている。
ショルダー紐を装着する「ショルダーカン」の位置にも工夫がある。ショルダーカンを内側につけ、口金が外側に開くように作るのが一般的だが、pavotsのがま口バッグは外側にショルダーカンが付いている。これは、「中にいっぱい物を入れていたら、知らないうちにがま口が開いてしまっていた」という購入者の声に応えて改良したもの。がま口が内側に開くようにしておけば、たくさん歩きまわっても、勝手にバッグの口が開くことがないので安心だ。
オーダーの時に伝えれば、ショルダーカンを内側に着けてもらうこともできるので、普段持ち歩く荷物の量に合わせて選ぶといいだろう。
作り手から使い手へ、ワクワクを運ぶハンドメイド
「pavots」は家族による受注生産というミニマムなブランドだ。大量生産はできないが、一点ずつ丁寧な手作業で作られているので豊富なバリエーションと使い手に合わせた細かな対応ができる。さらにバッグ作りを楽しんでいるアワネさんのイマジネーション×懐かしいがま口×世界の最新ファブリックというかけ算から、スピーディーに新製品が誕生してファンのワクワクを刺激していく。
日々の暮らしで、ネットのウエイトが大きくなりつづけている今だからこそ可能になった、作り手と使い手の近い距離での幸福な関係……。レトロだけど新しいがま口バッグの愛らしさは、その象徴なのかもしれない。
「pavots」
世界のファブリックとレトロながま口を組み合わせたオリジナルバッグを「creema」「minne」などで販売している個人ブランド。2018年始動。可愛らしい形状とバラエティ豊かな品ぞろえで、女性からの高い支持を得ている。
creema:https://www.creema.jp/c/pavots
minne:https://minne.com/@pavots
2021.07.02 Fri