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モノづくり探訪記

2021.08.17 Tue

【第十七回】清廉なターコイズブルーがあらゆる「食」を彩る「瑞光窯」のテーブルウェア

江戸時代後期より受け継がれる伝統工芸「清水焼」と、モダンなターコイズブルーの釉のマリアージュが、料理を彩る鮮やかなテーヴルウェアを生み出した。今回のモノづくり探訪記では、しっとりと手に馴染む陶器の肌触りと、料理を素敵に盛り付けたくなる美しい色彩が楽しめる「瑞光窯」の器の魅力に迫っていこう。

料理を引き立てるターコイズブルーの器たち

京都・清水寺へと向かう参道のある五条坂界隈の窯元から生み出された「清水焼」。その特徴である落ち着きある端正な色使いを、現代的なテーブルウェアへと取り込んだのが「瑞光窯」の陶器。その中でもひときわ目を引くのが、研究と試作を重ねて生み出されたオリジナルの釉薬を使ったターコイズブルーのアイテムの数々だ。

<span style="color: #666699;">マグカップ (ターコイズブルー釉)</span>
マグカップ (ターコイズブルー釉)

口縁のブロンズ色から次第に深い青へと変化していくグラデーションの妙に注目して欲しい。「ターコイズブルー釉」と名付けられたこのオリジナル釉薬は、先代の父親が積み重ねてきた釉薬の研究を受け継ぎ、六代目・土谷瑞光氏が様々な天然鉱物の配合を試した結果辿り着いたもの。

見ているだけで心が落ち着くような「青」は見る角度によって深い海のように表情を変え、色の揺らぎが絶妙なグラデーションとなって器を彩っている。ガラス質は細かな結晶のように表面を覆い、光の当たり方によって細かな煌めきで目を楽しませてくれる一品だ。

釉薬は窯の熱で化学変化を起こして様々な色合いとガラス質の光沢を生み出していくので、狙った色を出すには長年の試行錯誤が必要だ。さらに特定の窯の一部の場所でしか理想の「青」が出ないなど、焼成の難易度も高い。

しかし、そうして仕上がったターコイズブルーの器たちはとても豊かな表情をもち、奥行きのある青が日々の料理を「最高のごちそう」へと引き上げてくれるのだ。

<span style="color: #666699;">表情豊かな「ターコイズブルー釉」の器は、料理を盛り付けた時にも奥行きが出るスペシャルな器</span>
表情豊かな「ターコイズブルー釉」の器は、料理を盛り付けた時にも奥行きが出るスペシャルな器

瑞光窯の魅力は青のみにあらず!「料理を映える」を突き詰めた3色の彩り

瑞光窯を引き継ぎ、7年前からターコイズブルー釉の研究を続けてきたという六代目・土谷瑞光氏。釉薬ができても狙った色を安定して出せるように焼くための研究も必要で、商品化に辿り着いたのは昨年の春だったとのこと。

大手の窯元の陶器は大量生産のために安定した色をブレずに出せる釉薬を使うが、瑞光窯は少量生産でも表情のある美しい色をまとった「料理が映える、感動のうつわ」にこだわった。そのためにカラーバリエーションは「ターコイズブルー釉」に加えて、金属のような深みある色合いの「ブロンズ釉」と、結晶の輝きを楽しめる「パール釉」の3色に絞っている。どの色も料理を引き立てる絶妙の色合いと質感を持つ、選りすぐりの釉薬だ。

●キラキラした結晶が美しい「パール釉」

適量のチタンを配合することで、真珠のような淡いホワイトと光によって浮かび上がる結晶の煌めきを楽しめる仕上がりを実現したのが「パール釉」。シンプルな色だけに、なるべく貫入(釉薬のひび割れ)がでないように美しく焼き上げるのが難しく、瑞光窯でも窯のごく一部の場所でしか焼成することができない。なんと、ターコイズブルーよりも焼成が難しく量産ができないとのこと。

●アンティーク調の渋さが素敵な「ブロンズ釉」

まるで長年使い込まれた金属のような風合いとザラザラした質感を楽しめるのが「ブロンズ釉」。結晶の輝きも控えめな渋い仕上がりとなっており、この風合いを出すために釉薬の調合にはこだわった。

表面の質感は、釉薬に含まれる原料の“融点”の違いを利用したものだが、溶けやすい原料ばかりでも釉薬の表情が乏しくなり、溶けづらい原料が多く凹凸が大きくても使いにくい器になってしまう。瑞光窯では、天然の鉱物をうまく配合することで、深みのある色合いと理想的な質感を同時に生み出した。伝統的な茶器が持つ侘び寂びの風合いも楽しめる渋好みな一品だ。

色鮮やかな「ターコイズブルー釉」、清楚な輝きを放つ「パール釉」、渋好みの「ブロンズ釉」と対照的な3色だが、同じテーブルに並べてみると見事に調和する。家族で使い分けたり、料理に合わせて組み合わせたりとコーディネートも楽しめる3色なのだ。

<span style="color: #666699;">コーディネートも楽しめる珠玉の3色 </span>
コーディネートも楽しめる珠玉の3色

料理が映えるだけじゃない! 美しいカタチは食を楽しくする

カタチの美しさは機能性にも繋がる。瑞光窯のテーヴルウェアを実際に使ってみれば、それが実感できるはずだ。ここまで“料理を映える”色や質感へのこだわりを紹介してきたが、それをさらに高めているのが計算され尽くした器の「カタチ」だ。

●美しさと機能性が形になった「スープカップ」

例えばラインナップの中でも一番人気の「スープカップ」は、伝統的な抹茶碗を思わせる口の広さと低めの背を優美な曲線でまとめ上げた一品。口径が大きいのでスープだけでなく、パスタや煮物の器としても使いやすい。絶妙のサイズ感だ。

美しいラインを描くように高台は小さめの仕上がり。しかしカップの重心が低く、傾いても完全には倒れない形状になっているので中身をこぼしてしまう心配はない。美しいだけでなく使い勝手も考えられたデザインなのだ。

<span style="color: #666699;">スープはもちろん、様々な料理を盛り付けられる絶妙なサイズ感が魅力</span>
スープはもちろん、様々な料理を盛り付けられる絶妙なサイズ感が魅力
<span style="color: #666699;">裏の高台を見ると驚くほど小さい。しかし、低い重心と絶妙なフォルムのおかげで完全にひっくり返ってしまうことはない</span>
裏の高台を見ると驚くほど小さい。しかし、低い重心と絶妙なフォルムのおかげで完全にひっくり返ってしまうことはない

●「余白」を楽しめるサイズ感にこだわったシンプルプレート

シンプルなプレート皿は職人の丁寧な手仕事で、市販の皿よりも縁が薄くシャープな仕上がりとなっている。さらに盛り付けた際にキレイな余白ができるように、器の美しさが料理を引き立てる仕掛けが織り込んである。

例えば中皿(21cm)は、トースト1枚を置いたときに美しい余白ができるように計算されたサイズ。何気ない料理もごちそう変えてしまう魔法のようなプレートなのだ。他にもワンプレートで色々盛り付けられる大皿(24cm)と、一人用のデザートや料理の取り皿にピッタリな小皿(16cm)の計3サイズがラインナップされており、いずれも考え抜かれたサイズ感となっている。

<span style="color: #666699;">「プレート」は、大皿(24cm)、中皿(21cm)、小皿(16cm)の3サイズ。写真は「プレート・中皿 21cm (ターコイズブルー釉)」</span>
「プレート」は、大皿(24cm)、中皿(21cm)、小皿(16cm)の3サイズ。写真は「プレート・中皿 21cm (ターコイズブルー釉)」

● たっぷり入る万能選手「リムプレート」

熟練のロクロ職人の技で生み出された細く美しいダブルリム(二重の縁)と、3種類の色の組み合わせが目を引く一品。深さがあるのでパスタやカレー用の皿としてもピッタリで、使い込めば料理の油分によってヴィンテージな味わいも生まれてくる。

<span style="color: #666699;">どんな料理にも使いやすい「ダブルリムプレート 24cm(パール釉)」</span>
どんな料理にも使いやすい「ダブルリムプレート 24cm(パール釉)」
<span style="color: #666699;">深さがあるのでたっぷりと入るのも魅力</span>
深さがあるのでたっぷりと入るのも魅力

●伝統のホーローマグカップをリスペクトした「コーヒーカップ」

飲み口部分が外側に広がる伝統的なルックスのホーロー製マグカップ――そのスタイルをロクロ職人の手作りで再現したこのカップは、オリジナルにはない清水焼ならではの軽さがあり使い易さ抜群。トールサイズは240ml(満水容量300ml)の大容量なので、たっぷりとコーヒーを注いでゆったりした時間を過ごすのにピッタリだ。

<span style="color: #666699;">レトロで可愛らしい形が魅力の「コーヒーカップ tall」</span>
レトロで可愛らしい形が魅力の「コーヒーカップ tall」

この他にもスタッキングしてカラフルかつ機能的に収納できる「スタッキングマグ」や、幅広の花びらが美しい「輪花小皿」などがラインナップされており、テーブルを色々なスタイルで彩ることができる。

唯一無二の輝きを発掘する「新釉薬」の開発

約250年の歴史を持つ「瑞光窯」はいま、「新しい時代の陶器を極める」を目標にモダンなテーブルウェアの開発に精力を注いでいる。そんな動きと共に進めているのが新しい色の釉薬の開発だ。

コロナ禍でできた時間を活かして新たな釉薬が開発されており、今年の7月にはクラウドファンディングにも挑戦した。

クラウドファンディングサイト「Makuake」
自然派のあなたへ。釉薬の“ゆらぎ”が美しい陶磁器アクセサリー。
プロジェクトでは、新しく開発した釉薬を含む「9つのスペシャルな釉薬」を活かしたアクセサリーを販売。開始から4日で見事目標金額を達成した。

瑞光窯の釉薬は繊細で、特定の窯でしか理想の色が出ないなど、窯との相性もある。商品の形状が変われば同じ風合いになるとは限らない。瑞光窯ではこれまで1000個以上の焼成テストを重ねており、新色の商品化を目指しているそうだ。

<span style="color: #666699;">瑞光窯の焼成テストは、小さな器型の焼き物で行う。一般的に使われる四角い陶器片のテストピースと比べると手間はかかるが、これでなければ実際の色は分からないという</span>
瑞光窯の焼成テストは、小さな器型の焼き物で行う。一般的に使われる四角い陶器片のテストピースと比べると手間はかかるが、これでなければ実際の色は分からないという

そして直近の新製品として予定しているのが「一輪挿し」。細長く繊細なラインの一輪挿しは限られた職人にしか作ることができず、大量生産には向かない一品だが、それこそが「陶芸界のロールスロイスを!」という六代目・土谷瑞光氏の、ひいては瑞光窯の目標なのだ。

職人の手仕事ならではクオリティとこだわりの新釉薬で、小さな窯元だからできる妥協のないモノづくりを目指す。効率的なモノ作りが歓迎される昨今だが、瑞光窯はあえて「非効率を極める」ことで唯一無二のテーブルウェアを生み出していく。

憧れのターコイズブルーを手に入れる「陶芸体験」

瑞光窯では、京都清水店と東山工房店の2店舗で陶芸体験教室も実施している。20分で湯呑みサイズのカップが作れるライトプラン(2,090円/税込)、30分で好きな器を一つ作れるスタンダードプラン(3,190円/税込)、60分で好きな器を作り放題(2個までは料金内、3個目からは1個につき1,100円で焼成可能)のズイコウプラン(5,390円/税込)があり、どのプランも職人さんが丁寧に指導してくれるので、誰でも「世界一美しい器が作れる陶芸体験」を楽しめる。

釉薬の色も「ターコイズブルー」、「パール」、「ブロンズ」に加えて、「檸檬」と「飴色」が選択可能。釉薬掛けなどの仕上げは職人さんが行ってくれる形式だ。自作の瑞光窯陶器が欲しい人は、京都観光も兼ねて足を運んでみてはどうだろうか。

瑞光窯の「陶芸体験」
https://www.taiken-kiyomizu.com/

「瑞光窯(ずいこうがま)」
https://zuikougama.theshop.jp/
江戸時代中期に清水焼を始めた陶工の一人・清水六兵衛氏の流れを汲み、明治時代に初代・土谷瑞光氏によって「瑞光窯」が始まる。1928年に清水・五条坂から今熊野に移って登り窯を開き、以降はいち早くガス窯を導入するなど革新的な器作りに取り組む。現在は六代目・土谷瑞光氏のもと、オリジナルの釉薬を用いたテーブルウェアなどモダンな作品を世に送り出している。

 

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