素朴な温かみと心地よい肌触り、そして使うほどに手に馴染み、経年変化の味わいも楽しめる木製の道具達。それに都会的で洗練されたエッセンスが加わった「＋LUMBER」のアイテムはどうやって生み出されたのか？ 今回のモノづくり探訪記では、デザイン雑貨ブランド「＋LUMBER」のブランディングの秘密に迫ります。

唯一無二を叶える「＋LUMBER」のデザイン

「＋LUMBER」は、木工製品の魅力をより身近に、リーズナブルに体感して欲しい。そんな思いから2014年に木工品ブランド「Hacoa」の姉妹ブランドとして誕生した雑貨ブランドだ。伝統の技とモダンなデザインが融合した製品は、どれもオシャレで特別感が感じられるものばかり。

ラインナップも文房具やスマートフォングッズ、インテリア製品、ファッション系アイテムなどを取り揃え、我々のライフスタイルをあらゆる方面から彩ってくれる。まずは日常的に使うことが多い文房具から紹介していこう。

● 育てる楽しみが味わえる「＋LUMBER」の文房具

年月をかけて使い込んだ「自分だけの道具」を持つことには誰もが憧れるもの。その筆頭と言えるのが普段遣いの機会が多い文房具だろう。安価な物から高級品まで多種多彩な商品が出回っているジャンルだけに「ちょっと尖ったもの」が作りたい。そう考えて生み出されたのが、ユニークなボールペン＆シャープペン「TRIANGLE BODY」シリーズだ。

その特徴はなんといっても三角形に削り出された銘木製の軸。指にしっくりくる持ちやすさと書きやすさに加え、金属部分の丸みから三角形の木軸へとシームレスに繋がっていく仕上げの見事さ。同じ木目は2つとないので、それぞれが唯一無二の品となっているのも嬉しいポイントである。時間をかけて使い込めば経年変化が加わり、自分だけの一本に育てる楽しみも味わえる。

「＋LUMBER」には他にも、木目をカラフルに染め上げた「MINI BALLPOINT PEN」や、アルミ削り出しのボディに六角形の銘木軸を組み合わせた万年筆「FOUNTAIN PEN HEXAGON」など、さまざまな筆記具が用意されているので、自分に合った一本を探してみてほしい。

●「神は細部に宿る」ーー シンプルに仕上げるが、手は抜かない

「カードケース」と「ペンケース」は、「＋LUMBER」のデザインへのこだわりが一番感じられるアイテムだ。金属製のケース部分とそれを挟み込む銘木製パネルというシンプルな構成だが、その中にはたくさんのこだわりが詰まっている。

金属部分は暗めのガンメタル色でセンスよく仕上げられており、銘木製パネルと見事なコントラストを描き出している。パネル部分には、重厚感があり、色のバリエーションが広い海外の木材を採用。「チェリー」「ウォールナット」「パープルハート」「カリン」「エボニー」の5種類をラインナップし、自然本来の色を味わいながらも、選ぶ楽しみを提供する。

ケース内部は表面とはテクスチャが異なる艶消しのブラック。シンプルだが、細部にまで手を抜かない姿勢が、独特の個性と高級感を生み出している。美しさと使い易さを両立させる。そんな「＋LUMBER」のコンセプトを体現するようなアイテムである。

●「＋LUMBER」の品質を支えているのは、職人たちの「伝統の技」

「＋LUMBER」の母体である「山口工芸（現 Hacoa）」の創業は1962年。その背景には、伝統工芸士の技を引き継ぐ職人たちの技術があり、難易度の高い木材加工をサラリとこなしてしまえるのも強みの一つだ。それがもっとも発揮されているアイテムが「電卓」と「腕時計」である。

伸縮する「木」という素材を反り返ることないように薄くカットし、細かい加工を施していくのは、木の扱いに慣れていないメーカーでは難しい。しかし「＋LUMBER」では、製品を生み出すデザイナーたちが、同時に職人でもある。

デザインする段階から「木」という素材と向き合い、無理のない加工工程や、長年使っていくことを考慮した設計を行っているので、高品質な製品が次々と生まれてくるのだ。

●「すべて自分たちの手で」―― それがブランディングの秘訣

「＋LUMBER」では、企画、製造、小売り、さらにチラシやパンフレット、Web、SNSまでを、すべてを自分たちで考えて実行している。これが統一感のあるデザインとブランディングの秘訣と言ってよいだろう。理想実現のために他社の力を借りることはあるが、プランはすべて社内で考える。だからブレない。

デザイン面では、伝統の技をしっかりと受け継ぎながら、工芸チックになりすぎてもいけない。常にお客さんに喜んでもらえるデザインを――そんなインナーブランディングのもと、社内のデザイナー兼職人達がやわらかい頭で考えている。

直営店からは、顧客の生の声を毎日くみあげ、製品をブラッシュアップしていく。顧客層が限られるゴルフグッズやメジャーといったアイテムが誕生し、評判となっているのも、このような柔軟性とブラッシュアップサイクルが存在するからなのだ。

＋LUMBERの目標は「もっともっと身近な存在に」

唯一無二の木工ブランドとして存在感を増していく「＋LUMBER」。さぞかし世界的な展望があるのだろうと想像して「今後の目標」を聞いてみた。すると意外なことに「まずは足元を固めたい」との言葉が。そのためには顧客が手に取りやすい値段であることも重要だという。一つ一つのプロダクトについてお伺いする中でも、高価格帯になることを避ける工夫が随所に見受けられた。

優れたデザインと高い加工技術で生み出されたアイテム、それも自分の趣味や職業に寄り添うちょっとニッチなアイテムまでがお手頃価格で手に入る。こんな嬉しいことがあってよいのだろうか。これから誕生する新製品にも期待していきたい。

「＋LUMBER」
https://plus-lumber.com/
福井県鯖江市を拠点に展開する木工ブランド「Hacoa」から、よりリーズナブルで身近な木工アイテムをというコンセプトで2014年にスタート。文房具にアクセサリー、さらにはiPhone用ケースや時計・電卓など、日常使いのアイテムを多数展開。木の魅力を使いながら楽しめるライフスタイルを提案している。