暖かい日もあれば急に気温が下がるなど、なかなか気候が安定しない季節の変わり目。体調を崩しやすい時期でもありますよね。そこで今回は、日々の暮らしを快適に過ごすための食生活に注目します。テレワークになって自炊する機会が増えた、食生活を見直したい、そんな人にもおすすめの情報です!解説は鍼灸院「アキュサリュート高輪」院長の瀬尾港二先生。イラストはお笑いコンビ蛙亭の中野さんです!
知っておきたい食べ物の“陰と陽”とは……?
瀬尾 気温や湿度の上下によって、体内のバランスも変化しやすくなってしまいます。そこで、健康を維持するために大切なのは、体の「陰陽バランス」の中庸を保つこと。それには、気功や瞑想のような「内丹術」と、食事や漢方から取り入れる「外丹術」がありますが、今回は外丹術の中から“食事の面”に着目していきます。
食べ物は、その元々の性質、季節や気候などの育つ環境によって「陰性」の食べ物と「陽性」の食べ物に分けられます。しかし、わたしたちが生きる現代は、年中さまざまなものを食べることができてしまいます。だからこそ、自分の体質に必要な食べ物を意識して、取り入れていくことが重要と言えるのです。
自分の体調や季節の変化に合わせた食生活を
瀬尾 大まかに分けると、陽性、陰性の食べ物はこのように言われています。
陽性の食べ物 | 冬の時季や寒い地域で育つ植物 →寒さに耐えるため、温める力が強い |
陰性の食べ物 | 夏の時季や暖かい地域で育つ植物 →暑さに強く、冷ましてくれる力がある |
暑い夏は、体を冷ましてくれる陰性の食べ物を多く摂り、寒い冬は、体を温める陽性の食べ物を摂ってバランスを整えます。昔はその季節にその土地で育つ食物を食べることで、体内の陰陽バランスが取れていましたが、現在は、全国・季節を問わずなんでも手に入る時代ですので、あらかじめ知識を持って食材を選ぶ必要があります。
さらに、体質によっては、外気温が暑い夏でも体が冷えてしまう人や、寒い冬でも体がほてってしまう人もいます。そんなときのためにも、食材が温・冷どちらの特性を持っているかを知り、自分の今の体に合った食事を摂ることが大切です。初めは意識して食事を選び、慣れたら次第に体が自然と旬の食物を欲するようになっていくのが理想的です。
食物には陰陽四性と、どちらでもない平性がある
瀬尾 食物を陰・陽で大きく分けましたが、陰性も陽性もその特性の度合いによってさらにふたつに分けられます。加えて、温冷どちらでもない平性の食材も。家庭でよく使用される食材を分類しましたので、食事の際の参考にしてみてください。
寒性の食べ物(体を冷やす) | トマト、バナナ、柿、海苔、緑茶 |
涼性の食べ物(体をやや冷やす) | ほうれん草、大根、きゅうり、豆腐 |
平性の食べ物(どちらでもない) | じゃがいも、さつまいも、牛乳、キャベツ、豚肉 |
温性の食べ物(体をやや温める) | 玉ねぎ、かぼちゃ、ネギ、生姜、鶏肉、紅茶 |
熱性の食べ物(体を温める) | 唐辛子、胡椒、シナモン |
瀬尾 食材の組み合わせによって、陰陽のバランスを変えることも可能です。例えば、豆腐は涼性なので体を冷やしますが、温性のネギや生姜を加えることで中和できます。このように、夏でも冷やしたくないときなどは、食材を掛け合わせてみるのがおすすめです。
瀬尾 また、具体的な説明は次の機会にしますが、食物は味によって5つの効果を持つ「食物の五味」というものもあります。陽気が上がってくる春から初夏のシーズンは、苦味のある食べ物で少し冷ますのがおすすめです。木の芽、蕗のとう、ふき、わらびといった旬の山菜や緑茶を意識して摂ってみましょう。
プロフィール
- 瀬尾港二
- アキュサリュート高輪院長
- 1960年宮崎生まれ。ICU理学科卒業後、北京中医学院(現北京中医薬大学)針灸推拿学部に入学。在学中から気功や武術の大家に師事。92年卒業。2010年にアキュサリュート高輪を開設。一般社団法人日本中医薬学会理事・事務局長、神奈川衛生学園専門学校非常勤講師、東京医科歯科大学非常勤講師。著書に「図解 よくわかる東洋医学―漢方薬・ツボ・食事、3つの養生法で治す」「家庭でできる漢方〈4〉不眠症―原因・タイプ別 眠れるからだに体質改善!」など。
2023.05.12 Fri