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Illustrator定番&最新チュートリアル

2023.10.11 Wed

【Illustrator】大正ロマン×ホラー・怪奇小説をテーマにした文字「悪魔」の作り方

作例制作:櫻井美那 編集:山口優

10月は「大正ロマン」をテーマに作例を作っていただきました。デザイナーの櫻井さんが手がけたのは、当時の怪奇小説や探偵小説をイメージさせるようなホラーテイストの作字。手描きのラフを用意したら、Illustratorのペンツールでトレース。パスの変形やスタイライズなどの効果でレトロ感を演出しています。ラフの描き方や色使いのポイントも参考に。
*本連載はIllustratorで作る定番&最新グラフィックの制作工程を、一から手順通りに解説するHow to記事です。

■使用する機能「ペンツール」「透明パネル」「ラフ」「アピアランスを分割」「パスのオフセット」「パスファインダーパネル」「角を丸くする」「選択ツール」「光彩(内側)」「グラフィックペン」「画像トレース」「長方形ツール」「メッシュツール」

1.手描きのラフを作成してトレースする

まずは作字のテーマを決め、それを元に手描きのラフを作成する。今回は「大正ロマン×ホラー」というテーマを念頭に置き「悪魔」を作字のモチーフに。悪魔が神に反する存在であるというところからイメージをふくらませ、あえて血痕を後光に似せた形で背景に配置することにした(図1)。ラフを描いたら、スキャンして取り込んでJPEGなどの画像ファイルとして保存しておく(Procreateなどのペイントソフトで作成した場合もJPEGなどの画像ファイルに書き出しておく)。

図1。作成した手描きのラフ。櫻井さんの場合は、ペイントソフトで作成し、大正ロマンをイメージしているので悪ではなく旧字体の惡を使用。

続いて、Illustratorで新規ドキュメントを[カラーモード:RGBカラー]で作成したあと、ファイルメニュー→“配置...”でラフのファイルを指定してアートボード上に配置する(図2)

図2。ファイルメニュー→“配置...”を選ぶと、ファイルを選択するダイアログが表示されるので、保存しておいたラフの画像ファイルを指定。そのままアートボード上をクリックすると、その位置にラフを配置することができる

選択ツールで配置したラフをクリックして選択したら、トレースする際にペンツールで描くパスが見やすいよう透明パネルで[不透明度:10%]程度に設定しておく(図3)(図4)

図3。ここでは[不透明度:10%]に設定したが、自分の作業しやすい数値に設定すればOK
図4

次に、ペンツールを選択したら[塗り]をブラック、[線]を[なし]に設定し、ラフを参考にしながら文字部分をトレースしていく。その際、ペンツールでアートボード上をクリックしたあと、shiftキーを押しながらその横の方をクリックすると水平の線を引くことができる(図5)。また、shiftキーを押しながら縦方向をクリックすると垂直の線が(図6)、斜め方向をクリックすると45° 斜めの線を描くことが可能(図7)。ここではできるだけきれいに見えるよう、角度を揃えながら線を引いてトレースしていった(図8)https://www.mdn.co.jp/reference/Illustrator/103)。

図5。ペンツールを選び、shiftキーを押しながらアートボード上をクリックしていくと、描画される線(セグメント)が45°単位でロックされる。水平のまっすぐな線を引きたい場合は、shiftキーを押しながら横方向をクリックする
図6
図7
図8。ペンツールでのトレースでは「形を整えながらも、元のラフの良さが消えないようにしました。ラフからトレースする際は、格段に形の良さをグレードアップさせられるようにしています」と櫻井さん

トレースが完了したら、選択ツールでラフをクリックして選択し、deleteキーを押して削除しておく(図9)

図9。トレースが完了した状態

2.文字の縁にニュアンスをつける

トレースした文字を加工していく。選択ツールを選び、shiftキーを押しながら文字のパーツをクリックしてすべて選択したあと、オブジェクトメニュー→“グループ”を実行してグループ化しておく(図10)。そのグループ化した文字が選択された状態のまま、効果メニュー→“パスの変形”→“ラフ...”を、[サイズ:0.1%]、[詳細:7/inch]、[ポイント:ギザギザ]で適用する(図11)(図12)。これによって、文字の縁にアナログ的なニュアンスを加えることができる(図13)

図10。文字のパーツをすべて選択してグループ化しておく
図11。[サイズ:0.1%]、[詳細:7/inch]、[ポイント:ギザギザ]に設定する
図12
図13。文字の縁を拡大したところ。「ラフ」効果を適用したことで、文字の縁が手で描いたように微妙にブレているのが分かる

続いてオブジェクトメニュー→“アピアランスを分割”を実行したら(図14)、この文字をcommand+Cキー(Macの場合。WindowsではCtrl+Cキー)でコピーして、編集メニュー→“背面へペースト”を実行。さらにオブジェクトメニュー→“パス”→“パスのオフセット...”を[オフセット:10px]、[角の形状:ラウンド]、[角の比率:4]で適用する(図15)(図16)

図14。オブジェクトメニュー→“アピアランスを分割”を実行することで、「ラフ」効果がパスに反映される
図15。[オフセット:10px]、[角の形状:ラウンド]、[角の比率:4]に設定する
図16

次に選択ツールでアートボードの余白部分を1回クリックして文字の選択を解除したら、オフセットが適用された方をクリックして選択し(図17)、パスファインダーパネルの[形状モード:合体]をクリック(図18)(図19)。続いて[塗り]を淡いグレー(ここでは[R:201、G:202、B:202])に変更する(図20)。さらに効果メニュー→“スタイライズ”→“角を丸くする...”を[半径:8px]で適用して、文字の縁取りに滲んで角が取れたような効果をつける(図21)(図22)

図17。選択ツールでオフセットを適用した方を選択する
図18。パスファインダーパネルの[形状モード:合体]をクリックする
図19
図20。[塗り]を淡いグレー(ここでは[R:201、G:202、B:202])に変更する
図21。[半径:8px]に設定する
図22。文字の一部を拡大したところ。縁取りの角が部分的に丸まっているのが分かる

3.文字にかすれたような質感をつける

文字に質感をつけていく。まず選択ツールで前面の黒い文字をクリックして選択したら、[塗り]を濃いグレー(ここでは[R:62、G:58、B:57])に変更する(図23)

図23。[塗り]を濃いグレー(ここでは[R:62、G:58、B:57])に変更する

次に、効果メニュー→“スタイライズ”→“光彩(内側)...”を[描画モード:乗算]、[光彩のカラー]を黒、[不透明度:100%]、[ぼかし:30px]、[境界線]で適用(図24)(図25)。これにより、黒い文字にうっすらとした濃淡がつく。

図24。[描画モード:乗算]、[光彩のカラー]を黒、[不透明度:100%]、[ぼかし:30px]、[境界線]に設定する
図25

続いて、効果メニュー→“スケッチ”→“グラフィックペン...”を[ストロークの長さ:15]、[明るさ・暗さのバランス:38]、[ストロークの方向:右上から左下]で適用し(図26)(図27)、文字にかすれたような質感をつける。

図26。[ストロークの長さ:15]、[明るさ・暗さのバランス:38]、[ストロークの方向:右上から左下]に設定する
図27

4.背景を作成してビジュアルを仕上げる

文字の背景を作成していく。まず、手描きで血痕のラフを作成し(図28)、スキャンして取り込みJPEGやPNGファイルに保存しておく(Procreateなどのペイントソフトで作成した場合はJPEGやPNGファイルなどに書き出して保存しておく)。続いてIllustratorで新規ドキュメントを[カラーモード:RGBカラー]で作成したあと、ファイルメニュー→“配置...”で血痕のラフのファイルを指定してアートボード上に配置する(図29)

図28
図29

選択ツールで血痕のラフをクリックして選択したら、コントロールパネルの[画像トレース]の右横にある下向きの矢印からサブメニューを開き、“シルエット”を選択(図30)

図30。[画像トレース]のサブメニューから“シルエット”を選択する

その際、「この大きさの画像にトレースを実行すると、時間がかかる可能性があります。続行しますか?」という警告が表示された場合は[OK]をクリックして続行する(図31)

図31

続いてコントロールパネルで[拡張]をクリックして(図32)、トレースオブジェクトをパスに変換し(図33)、[塗り]を赤(ここでは[R:181、G:38、B:35])に変更(図34)。これで血痕のオブジェクトが完成。

図32。コントロールパネルで[拡張]をクリックする
図33。トレースオブジェクトがパスに変換される
図34

次に「悪魔」の文字のドキュメントに戻ったら、レイヤーパネル下部にある[新規レイヤーを作成]ボタンをクリックして新規レイヤーを追加し、パネル上でドラッグして文字のレイヤーの背面に移動しておく(図35)。そのレイヤーが選択された状態のまま、長方形ツールを選んで[塗り]をブラック、[線]を[なし]に設定し、アートボード全体を覆うように長方形を描いて背景とする(図36)

図35。この時点のレイヤーの状態。レイヤーパネルで新規レイヤーを作成し、文字のレイヤーの背面に移動しておく。ここではレイヤー名部分をダブルクリックして分かりやすく名称を「背景」に変更しておいた
図36

レイヤーパネルで背景のレイヤーの前面に新規レイヤーを作成し、先ほど作成した血痕のオブジェクトをコピー&ペーストで前面に配置する(図37)。ここでは、さらにAdobe Stockからダウンロードしたインクの飛沫の素材を配置し、[塗り]を血痕と同じ赤色に変更して血飛沫とした(図38)

図37
図38。今回はAdobe Stockで提供されている素材を使用したが、血痕オブジェクトを作成したのと同じ要領で自作してもOK

続いて、レイヤーパネルで最前面に新規レイヤーを作成し、長方形ツールを選んで[塗り]をブラック、[線]を[なし]に設定。アートボード全体を覆うように長方形を描く(図39)

図39

ツールバーでメッシュツールを選び、その長方形の内側をクリックするとメッシュポイントが追加される(図40)。そのメッシュポイントが選択された状態でカラーパネルで色を変えると、そのメッシュポイントを中心にグラデーションが作成される(図41)。ここでは、メッシュポイントをいくつか追加し、それぞれメッシュツールで選択して色をグレーに変えたり、メッシュポイントをドラッグして移動させたりしながら、もやもやした煙のような模様を描画した(図42)

図40。画像左、赤枠のアイコンがメッシュツール。メッシュツールでクリックした箇所に表示される小さな菱形がメッシュポイント
図41
図42

このもやもやのオブジェクトが選択された状態のまま、効果メニュー→“スケッチ”→“グラフィックペン...”を[ストロークの長さ:15]、[明るさ・暗さのバランス:80]、[ストロークの方向:右上から左下]で適用する(図43)(図44)

図43。[ストロークの長さ:15]、[明るさ・暗さのバランス:80]、[ストロークの方向:右上から左下]に設定する
図44

レイヤーパネルでこのレイヤーを文字のレイヤーの背面に移動し(図45)、透明パネルで[描画モード:比較(明)]に変更すれば完成(図46)(図47)

図45
図46。透明パネルで[描画モード:比較(明)]に設定する
図47。完成ビジュアル

「手書き感の演出に特にこだわり、単調な形はできるだけ排除しました。参考にしたのは、大正、昭和の広告文字を集めた本です」と櫻井さん。以上、大正ロマンをテーマにした文字「悪魔」の作り方でした。

プロフィール

櫻井美那
デザイナー
武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業後、インハウスデザイナーを経て、フリーランスデザイナーとして活動中。広告、CDジャケット、テレビ番組タイトルデザイン、WEBなど広いデザイン経験を持つ。公式サイトhttps://sakuraimina.com/
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