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人気のインクスタンドで、オリジナルインク作りに挑戦! 第七回 インクスタンド 〜カラーインク編〜(後編)

2018.11.18 SUN

似て非なる画材、この差って何?
あべちゃんのサブカル画材屋 紀行


人気のインクスタンドで、オリジナルインク作りに挑戦!
第七回/インクスタンド 〜カラーインク編〜(後編)

水性顔料インクと染料顔料インク。その違いは?
インクスタンドで使用できるインクは、水性顔料インクだ。だが、市販されている万年筆用のインクは水性染料インクがほとんど。この違いはなんだろう? 顔料と染料の違いを知るために、知っているようで知らないインクの種類について、まずはすこし解き明かしてみたい。

大きく分けて、インクにはまず油性と水性がある。インクの主な成分は、溶剤と着色剤のふたつ。油性の溶剤は揮発性有機溶剤で、水性の溶剤は主に水でできている。油性ペンがツーンとした匂いがするのは、揮発性有機溶剤の匂いというわけだ。そして、着色剤が溶剤に溶けるかどうかで、染料と顔料に区別される。
水性顔料は、水性でありながら水にとけない顔料を使っているため「耐水性」となる

水性顔料は、水性でありながら水にとけない顔料を使っているため「耐水性」となる

水性染料インクは、発色が良くカラーバリエーションも豊富。メンテナンスが容易だが、その分、水や光に弱い。紙に書いた字を、濡れた指でうっかり触るとたちまちにじんでしまう。

一方、水性顔料インクはどうか。ペンインクの歴史は、実は顔料インクからスタートしている。紙にしっかり固着するため、筆記用のインクとして愛用されてきた。乾燥後は光や水に強く、上から水彩絵具などで着色することができるのが大きな魅力。しかし、吸引式などのペンに入れると詰まりやすいことや、乾くと洗浄が難しいなどのデメリットがある。

2014年、インクスタンドがオープンした時は、「プライベートリザーブ社」(アメリカ)の水性染料インクを使っていたそうだ。だが、途中で供給が困難になったことをきっかけに、ターナー色彩株式会社と共同で新しいインクの開発に取りかかったという。

「リニューアルにあたって、最も重要視したのは“混ぜられるインク”であることでした。顔料の粒子を小さく、なるべく大きさを揃えることで、“詰まりづらい、混ぜられる万年筆用水性顔料インク”を開発しました。ほかの色と混ぜても、均一に色が混ざることが特徴ですね」

市販のカラーインクは、混ぜると分離してしまう色がある。筆者もよく、混ぜたインクを紙に置いた瞬間に頭を抱えることがある。けれどここでは、インクの相性を気にすることなく、混ぜることに集中できるというわけだ。
使う筆記具に合わせて色を確認しよう
絵を描くことに抵抗がある大人は多いかもしれない。けれど、色を混ぜるという行為の前では、大人も子どもも、絵が苦手な人も得意な人も、楽しいということにおいて平等だ。

「お店にいらっしゃるお客様のなかには、つくりたい色がすでに決まっている方もいらっしゃいます。けれど、半数以上の方は『万年筆を使ったことさえないけれど、色を混ぜるのが楽しそうだから来ました』という方なんですよ。インクを作ったことをきっかけに、初めて万年筆を買われる方もいらっしゃいますね」
写真を参考にしてスタッフの皆さんが作った色見本。色の比率を参考にしたい

写真を参考にしてスタッフの皆さんが作った色見本。色の比率を参考にしたい

隣で色を混ぜている男性編集者のIさんも、「これは楽しい……」と満足げにひとこと。

私は、混ぜたインクが入ったカップを傾けて、ガラスペンを指先でくるりと回転させる。紙の上にペン先を滑らせて色を確かめる。ガラス棒が紙にシャリシャリと当たる音がまた気持ちいい。

「試し書きの時には、できるだけ線を長く書いてくださいね。ガラスペンは同じ向きで色継ぎをせずに書くと、インクの量が段々少なくなってきます。太字のペンを使う予定なら線の最初の方、細字のペンなら線の後の方を参考になさると、実際に使う色に近くなります」

ガラスペンのペン先。溝の間にインクが溜まり、紙に設置するとインクが流れる仕組み。想像しているよりもずっと扱いやすい

ガラスペンのペン先。溝の間にインクが溜まり、紙に設置するとインクが流れる仕組み。想像しているよりもずっと扱いやすい

筆者が所有しているコンバーター式ボールペンのペン先は中字。書き始めよりも少し後の線を見て、試し書きを繰り返す。色の比率を変えたり、3色目を追加したりして、少しずつ自分の好みの色に近づけていく。

何度か色遊びをしているうち、作りたい色のイメージが湧いてきた。既に所有している茶色のインクよりも、もっとシックで日常的に使えるような汎用性の高い色にしよう。
さらに広がる、自由な色の世界
あれこれ悩みできあがったのは、浅くくすんだブルーブラック。

グレーの「Meteorite(メテオライト)」、水色の「Paddle(パドル)」、青の「Dress Blue(ドレスブルー)」の3つで、<6:1:1>の比率だ。

色が決まったら、スタッフの方が、容量の大きなもので作り直してくれる。

杉田さんは、私がお願いした色の比率を元に、縦長のメスシリンダーでインクの量を計る。ビーカーで3つの色を混ぜた後、紙に試し書きをし 、乾燥させた色をチェックする。色味が整うまで微調整をして、最終確認となる。
今回は、中段の線を中字のペンの参考にした

今回は、中段の線を中字のペンの参考にした

「こちらが最終のお色味になります」

と見せて頂いた。う〜ん、我ながらシブい!! まるで、青墨のようだ。確認が終わると、四角いガラスのボトルに色が充填されていく。ラベルが貼られると、世界でひとつだけのカラーインクが完成した。
完成したオリジナルインク。1瓶で、コンバーター約5、60回分は使えるという

完成したオリジナルインク。1瓶で、コンバーター約5、60回分は使えるという

色の配合とナンバリングがされたレシピカード

色の配合とナンバリングがされたレシピカード

本年新しくディープカラーが誕生して、さらに色を混ぜる楽しみが広がったインクスタンド。これから新しい展開もあるのだろうか。

「姉妹店・カキモリの旧店舗に、新スペースをオープン予定です。こちらでは、お客さまにとって、インクを身近に感じていただけるよう工夫していこうと考えています。より使いやすい筆記具の提案や、現在使用している瓶(約33ml)よりも小さいサイズでの展開など、まだインクを使ったことがない人にとって訪れやすい空間になるといいですね。色の楽しさ、インクの多様性に親しんでもらえる空間にしたいと考えています」

今冬にオープン予定の新店舗。すでにワクワクしている筆者は、インク沼に片足を突っ込んでいるのでは……、と内心ひやひやだ。

杉田さんの手で、丁寧に箱につめられていく、私のインク。ほかの人から見れば、既製品のブルーブラックと変わらないかもしれない。もっと言えば、気にもとめない色かもしれない。このブルーブラックを使う喜びは、私にしか分からない。けれどもそれで構わない。色は、自由なのだ。

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●インクスタンド バイ カキモリ(inkstand by kakimori)
2010年に総合文具店・カキモリがオープンし、2014年に姉妹店としてオープンしたインク専門店。14色のベースカラー、3色のディープカラーの17色とうすめ液を調合して、自分の好きなカラーのインクをつくることができる。開店当時は「プライベートリザーブ社」(アメリカ)の水性染料インクを使用していた。途中で供給が困難になったことをきっかけに2016年にリニューアルし、「ターナー色彩株式会社」との共同開発により現在の形に。今冬(2018年)には新スペースがオープン予定。1回90分(調色時間45分まで+スタッフ製作時間約40分から)、一日の定員は最大25名(各回4〜5名ずつ)の予約制。1瓶(約33ml)2700円。受付は2ヶ月前から。

住所/台東区蔵前4-20-12クラマエビル1F
アクセス/都営浅草線「蔵前駅」より徒歩3分、都営大江戸線「蔵前駅」より徒歩5分
営業時間/11:00〜19:00
休業日/月曜日(祝祭日の場合は営業)
TEL/050-1744-8547
URL http://inkstand.jp/(予約もこちらから)
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