昭和レトロに続き、“大正ロマン”の文化にも注目が集まっています。そこで、大正時代を中心に、明治、昭和初期の図案やイラストを使ったアイテムをピックアップ。大正ロマンを代表する画家・竹久夢二のデザイン画を用いた一筆箋、モダンガールを描いた絵葉書、セルロイド製の万年筆……。和洋折衷のモダンな趣、抒情的でロマンチックな世界へと誘われて。

山口青旭堂「高橋春佳　はがき」
幻の図案家・高橋春佳の美しくも儚いロマン絵葉書

通なコレクターの間で“幻のイラストレーター”と知られる高橋春佳。生前、京都の版元で働いていた春佳は、大正末期から昭和初期にかけて1000を超える図案を残しました。2021年には、当時の版元であった山口青旭堂がブランド化。「SHUNKA TAKAHASHI.」の名で、絵葉書や一筆箋などがラインナップし、原画そのままの抒情的な雰囲気を堪能できます。

今回紹介するのは、乙女をモチーフにした3枚の絵葉書。ハート柄のワンピースを着た少女や、着物姿でソファに腰掛ける少女など、優美でいて、どこか憂いを帯びた表情や色使いにうっとり。

またメインの画像に掲載している絵葉書も高橋春佳のイラスト。1920年代に登場したモダンガール、通称“モガ”を描き、ピンク、グリーン、ブルーのコントラスト、大胆な構図、そして粋なファッションが相まって、今見てもなお現代的な美しさを感じさせてくれる1枚です。

京都セルロイド「金魚シリーズ　万年筆」
今や希少なセルロイド製。艶やかな金魚柄の美麗万年筆

鮮やかな朱色、深みのある象牙色が幾重にも入り混じった筆記具は、京都で作られるセルロイド製の万年筆。

セルロイドは、1800年代に誕生した世界初のプラスチック素材で、天然素材から合成された樹脂を使用しているのが特徴です。なめらかな光沢が美しく、しっとりと手に馴染みどことなく温かみも。

こちらの「金魚シリーズ　万年筆」はその名の通り、金魚がモチーフ。昔からある定番の柄でありながら、京都セルロイドの金魚柄は、一般的なものよりも大きな柄で鮮やかなデザインだから、グッと垢抜けてモダンな印象に。ペン先はドイツのシュミット製を採用しており、抜群の書き心地。手元を華やかに演出してくれるレトロモダンな万年筆で、日記や手紙をしたためてみませんか？

榛原「竹久夢二一筆箋『薔薇』」「千代紙小箱　丸紋花づくし」 
花柄の千代紙がかわいらしい。乙女心くすぐる小箱

創業200年、和紙舗「榛原」のかわいらしい小箱……。こちらは、明治大正期に販売していた人気の千代紙を復刻し、使用した「千代紙小箱」シリーズ。

花の丸紋を散りばめた「丸紋花づくし」は、明治期の画家・梶田半古の筆によるもの。アヤメ、モミジなど、四季折々の花が一堂に会するデザインは、机や棚に飾っておくだけで場が華やぎます。

メインの写真に登場している、可憐なバラの一筆箋も榛原のアイテム。大正時代を代表する画家・竹久夢二の図案で、ブルーとピンクの色の取り合わせがなんとも上品。お気に入りの万年筆とインクで文章をしたためれば、おしゃれな初夏の便りになりそうです。

夢二郷土美術館「御朱印帳 夢二のいちご」
夢二デザイン！大胆でポップないちご柄の御朱印帳

アンティークな趣がありつつも、モダンでポップないちご柄の御朱印帳。このデザインの元となっているものは、先ほども紹介した竹久夢二によるものです。

夢二の故郷・岡山に位置する「夢二郷土美術館」のオリジナルアイテムで、大正3年頃に夢二がデザインした黒繻子帯「いちご」の図案が元になっています。表紙と裏表紙は布製で、同館が監修の下、460年の歴史を誇る京友禅の老舗「千總」の職人たちが丁寧に仕上げているのだそう。

大胆な図案、触り心地もよく高級感ある佇まいの御朱印帳は、神社仏閣に持ち歩くのはもちろん、アルバムやノートとして使うのもおすすめ。
 

丸善「アテナインキ　セピア （丸善オリジナル）」「丸善ミニ便箋 #6000」
戦前の文豪気分に。机をモダンに彩る丸善の復刻インク

書店の「丸善」では、戦前に販売されていたアイテムの復刻版を発見。万年筆やつけペン用のインク「アテナインキ」は、実際に大正期に発売されていたもので、2009年、創業140周年記念に限定復刻したところ、好評だったため定番品に。

今回紹介しているインクは、ノスタルジックな雰囲気漂うセピア色。ボトルのフォルムやラベルデザインも、どこか懐かしいデザインで心くすぐられます。

同じく大正時代に発売された不動のロングセラーの便箋「#6000便箋」。こちらをミニサイズにしたメモ帳「丸善ミニ便箋 #6000」も人気。装飾文様の華やかな表紙を捲ると、中面は幅にゆとりのある書きやすい横罫入り。インクボトルとともに机に置けば、大正時代にタイムスリップした気分になれそう。