あべちゃんのサブカル画材屋 紀行/知っているようで知らない和紙の世界 第六回 山形屋紙店 〜和紙編〜 ② | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-

あべちゃんのサブカル画材屋 紀行/知っているようで知らない和紙の世界 第六回 山形屋紙店 〜和紙編〜 ②

2018.12.14 FRI

似て非なる画材、この差って何?
あべちゃんのサブカル画材屋 紀行


知っているようで知らない和紙の世界
第六回/山形屋紙店 〜和紙編〜 ②

和紙って一体なんだろう? 洋紙との違いは原料にあり
怒られるのを覚悟で、正直に言おう。そもそも、「和紙」って何だろうか。
なんとなく分かっているつもりだったのに、説明しようとすると何も知らない自分に気がつく。

実は「和紙」と呼び始めたのは明治の頃から。西洋から導入された機械漉きの紙と区別するために、それまで国内で作られていた手漉きの紙を「和紙」と呼び始めたそうだ。とはいえ、現在では機械漉きの和紙もあるため、洋紙と明確に区別することは難しい。

「洋紙と一番違うところは、原料だと思います。洋紙はパルプ(※4)が使われますが、和紙は、楮(こうぞ)・三椏(みつまた)・雁皮(がんぴ)が三大原料として知られています。混ぜて使われることもありますね。いずれも樹木の名前ですが、これらの靭皮(じんぴ/植物の外皮の下にある柔らかい内皮)が使われます」

※4)パルプ……木材チップなどを溶かして繊維を取り出したり、古紙などからつくられていることが多いようだ。印刷目的で発展したため、安価で大量生産が可能な機械漉きのものが多い
三大原料の中でも、和紙を代表するのは「楮」紙。繊維が太く長く、出来上がった紙は丈夫だ。公文書や経典、書籍など長期間保存するものから、障子紙といった日用品まで幅広い用途に使われている。

「三椏」は、明治以降の紙幣用の局紙として開発されてきた。繊細で光沢のある平滑な紙は、墨やインクとの相性が良いという。(現在の紙幣には、輸入の三椏が使用されている)

「雁皮」は、別名「紙の王」とも呼ばれる美しい紙。繊維が細く、短く、緻密な紙に仕上がる雁皮紙は、紙肌がなめらかで、光沢がある。丈夫で虫の害にも強く、写経用紙や手紙など細い字を書くのに適しているそうだ。

店内を見渡すと、模様が印刷された千代紙や、色が付けられた染め紙なども豊富に揃っていることに気がつく。

「金箔入りのもの、藍染めされたもの、穴が空けられたものなど……たくさんあります。書の展示会用に、いつもと違う紙をお求めにくる方も多いですよ。それに、字や絵を描く支持体(絵や字が書かれるもの)としてだけでなく、インテリアや壁紙のように使う方もいます。もちろん、昔ながらの使い方として、和傘や提灯、紙箱に使ったりと、とても自由度が高いところが和紙の魅力です」と田記さん。

和紙のポテンシャルの高さに驚くばかりだ。
楮紙に印刷が施された千代紙

楮紙に印刷が施された千代紙

楮から作られている吉野紙(奈良県)は、透けるほどの薄さ。漆を漉す時に使われるのだとか

楮から作られている吉野紙(奈良県)は、透けるほどの薄さ。漆を漉す時に使われるのだとか

肥前名尾和紙。楮の原種である梶(かじ)を原料に作られている

肥前名尾和紙。楮の原種である梶(かじ)を原料に作られている

梶は、楮よりも繊維が長く、丈夫。紙の端を引っ張ると繭のように繊維が出てくるほど。こちらも肥前名尾和紙

梶は、楮よりも繊維が長く、丈夫。紙の端を引っ張ると繭のように繊維が出てくるほど。こちらも肥前名尾和紙

和紙の特性「表裏」と「目」を理解しよう
日本で紙が作られるようになったのは、5〜6世紀頃だと考えられている。中国から日本にその製法が伝わり、さまざまな工夫や改良が加えられたことで、和紙は日本独自に発展してきた。特に、粘性の高い植物・トロロアオイの根を使う製法は、日本で編み出されたもの。トロロアオイのおかげで、水よりも比重の重い楮などの繊維を均一に分散させることが可能になった。それによって、日本の和紙は、厚みが均一で薄くても丈夫に仕上がるそうだ。

伝統的な手漉き和紙の行程は、20近い行程を経て、手間と時間をかけて丁寧に作られている。
それを、ごくごく簡単に説明するならば、以下のようになる。

1、植物の繊維を取り出して、加工する
2、紙を漉く
3、漉いた紙を脱水して乾かす
「材料や漉き方は、産地によっても変わります。ただ、どの和紙でも変わらないことがあります。それは、紙に表裏があること。表はツルツルしていて書きやすく、裏はガサガサして筆やペンがひっかかりやすい。あえて裏を使って質感を楽しむ方もいます」

とは、山形屋紙店に13年務める吉澤さんだ。

紙の表裏は、紙を漉く時と乾燥させる時に決まる。手漉きの工程上、必ず発生するものだ。和紙の表裏は、和綴じのノート・和帳を見るとよく分かるという。

「和紙で作られる和帳は、記入する面がすべてを表にして綴じられています。紐で綴じるものは袋状に、折り帳は互い違いにして作られているんです」

そういわれて思い出してみれば、和紙の芳名帳や御朱印帖も確かに袋状になっている。裏表のある和紙ならではの工夫というわけだ。
こちらは私物の御朱印帖。一枚の紙が袋状になっており、内側に紙の裏面が見える

こちらは私物の御朱印帖。一枚の紙が袋状になっており、内側に紙の裏面が見える

こちらが折り帳

こちらが折り帳

ページが途切れないため、連続して使うことができる

ページが途切れないため、連続して使うことができる

上から見るとじゃばら状になっていることがわかる

上から見るとじゃばら状になっていることがわかる

内側を覗くと、紙の裏面になっていることが理解できる

内側を覗くと、紙の裏面になっていることが理解できる

背表紙がなくシンプルな構造の和帳は、比較的容易に自作できるという。紙一枚ずつに詩や作品を描いてから、綴じることも可能だ。和紙の中には印刷できるものもあるため、活用の幅はとても広い。これは、ぜひ挑戦してみたい。

ただ、「ご自分で綴じる場合には、注意点があります」と吉澤さん。

「和紙には目があります。目というのは、紙を漉く段階でできる繊維の方向のこと。目の向きに逆らってしまうと、折り目がきれいにつかなかったり、文字を書く時に筆の運びがスムーズにならない。大きいサイズから裁断する時にも、必ず目の向きには気をつけなければなりません」

表裏と目の向き。和紙を使いこなすポイントはこの二つだ。
次のページは「1000年先に残るもの。時を超える和紙の時間」

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●山形屋紙店
明治12年(1879年)創業の、和紙専門店。初代・田記 俵次郎(たき・ひょうじろう)が日本橋の「松本紙店」につとめ、その後のれんわけする形で独立。東京・神保町に「山形屋」の店舗を構えた。以後130年、同じ場所で紙店を営んでいる。店の裏手には、大正2年の神田の大火、関東大震災、東京大空襲にも耐え抜いた貴重な蔵があり、外からでも3階建てのレンガ造りの蔵を見ることができる。店内には楮紙、奉書紙、書道用半紙、障子紙、千代紙、手芸用和紙をはじめ、オリジナルの便箋、封筒、カード類、ポチ袋などの取り扱いがある。

住所/東京都千代田区神田神保町2-17
アクセス/都営新宿線・半蔵門線・都営三田線 「神保町駅」A6出口より徒歩1分
営業時間/10:00〜18:00
休業日/土・日曜日、祝日
TEL/03-3263-0801
URL http://www.yamagataya-kamiten.co.jp/
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