似て非なる画材、この差って何?
あべちゃんのサブカル画材屋 紀行
日常をアートに彩る額縁の世界 第八回/ラピアーツ 〜額編〜 ②
選択肢は無限大。作品に合わせて額縁を選ぼう
藤本さんに、ひとつめのイラストに合う額縁を選んでもらう。
「ふきだしに文字が入っているので、絵本の1ページのような作品ですね。親しみらしさが感じられますので、ナチュラルな額縁がマッチするでしょう。描かれている植物と調和させるように、葉のレリーフが彫られている額縁を選ぶことでより可愛らしくもなる。金が施された額縁ならば、 品のよさも感じられますね」
「ふきだしに文字が入っているので、絵本の1ページのような作品ですね。親しみらしさが感じられますので、ナチュラルな額縁がマッチするでしょう。描かれている植物と調和させるように、葉のレリーフが彫られている額縁を選ぶことでより可愛らしくもなる。金が施された額縁ならば、 品のよさも感じられますね」
額縁が変わるたび、イラストのかわいらしさはそのままに新しい表情をみせてくれる。額縁だけで見るとかなり違いがあるが、作品にはどれも調和しているから不思議だ。
版画の方はどうだろう。こちらはなかなか難しそうだ。
「世界感が強い作品の場合、大きく 2つの選択肢が考えられます。印象を和らげる額縁と、逆に世界感を強くする額縁です。不特定多数の人が鑑賞する喫茶店や会社のロビーに置くならば、作品の印象を和らげる額縁がいいでしょう。逆に、書斎などパーソナルな空間であれば、所有者の趣味性に合わせてさらに世界感を出してあげてもいいですね」
額縁が違うだけで、作品がこんなにも違って見えるとは……! どちらの選択肢も、作品の世界感が活きているのに、印象は全く違って見える。
「額縁は、単に作品と調和すればよいわけではありません。飾る場所がパブリックかプライベートなのか。作品をどのように見せたいのかによって選択肢は変わります。それに、お客さまの好みを知ることも大切です。小説のテーマを伺って、好みの参考にすることもありますね」 と、藤本さん。
作品と額縁だけでなく、観る人の存在をよく理解することが、いい額縁選びには不可欠だという。なるほど。私が購入した作品の額縁には、鑑賞する「私」が欠けていた。どんな気持ちで購入したのか、どこに飾りたいのか、そうしたことが一致していなかったということだ。これが、作品が届いた時に感じた違和感の正体だったのだ。
「額縁は、単に作品と調和すればよいわけではありません。飾る場所がパブリックかプライベートなのか。作品をどのように見せたいのかによって選択肢は変わります。それに、お客さまの好みを知ることも大切です。小説のテーマを伺って、好みの参考にすることもありますね」 と、藤本さん。
作品と額縁だけでなく、観る人の存在をよく理解することが、いい額縁選びには不可欠だという。なるほど。私が購入した作品の額縁には、鑑賞する「私」が欠けていた。どんな気持ちで購入したのか、どこに飾りたいのか、そうしたことが一致していなかったということだ。これが、作品が届いた時に感じた違和感の正体だったのだ。
作品の見え方を大きく変える厚紙・マット
初めて購入した作品だから、納得できる額縁を選びたい。額縁を購入して作品を入れ替える決意をした筆者だが、購入を検討するにあたり無視できないのは「マット」の存在だという。マットとは、作品とダストカバー(作品を保護しているガラスやアクリル)の間に挟まれた厚い紙のことだ。
「マットは作品を引き立てる効果があります。入れるか入れないかで、作品の印象はかなり変わりますね。それに、水彩画や版画の場合には、作品がダストカバーに直接触れないようにする目的もあります」と、藤本さん。
白いマットは見たことがあるが、色は豊富だという。たとえば2つ下にある「書」の作品では、マットがダブル(2枚重ね)になっており、内側を作品の紙と色を揃えてあることが分かる。額縁と作品の間に立ち、調和を助けているようだ。
白いマットは見たことがあるが、色は豊富だという。たとえば2つ下にある「書」の作品では、マットがダブル(2枚重ね)になっており、内側を作品の紙と色を揃えてあることが分かる。額縁と作品の間に立ち、調和を助けているようだ。
ポスターの場合には、マットを使わないことも多いという。けれど、マットという存在が作品と額縁の調和に一役も二役も買っていることがよく分かった。額縁のデザインだけでなく、マットでも変わる作品の見え方。額縁の世界はかなり奥が深そうだ……!!
|マットのひみつ|
ぱっと見ただけでは気づかないが、マットにはある秘密があるという。
「実は、上よりも下を少し長くとっています。というのは、額縁は目線より下に飾るということはまずあり得ない。椅子やソファのある空間に飾られていれば、尚更見上げて鑑賞することになる。すると、上下が均等だと下が短く見えてしまう」
逆に、和室にかけられる掛け軸では、上が広く、下が広く空間がとられているという。作品まわりの空間は、鑑賞者の目線までも考慮されているのだ。
ぱっと見ただけでは気づかないが、マットにはある秘密があるという。
「実は、上よりも下を少し長くとっています。というのは、額縁は目線より下に飾るということはまずあり得ない。椅子やソファのある空間に飾られていれば、尚更見上げて鑑賞することになる。すると、上下が均等だと下が短く見えてしまう」
逆に、和室にかけられる掛け軸では、上が広く、下が広く空間がとられているという。作品まわりの空間は、鑑賞者の目線までも考慮されているのだ。
<<< 第一回目 「鳩居堂本店」〜筆編〜
<<< 第二回目 「伊勢半本店」〜紅(べに)編〜
<<< 第三回目 「喜屋」〜岩絵具編〜
<<< 第四回目 「ならや本舗」〜墨編〜
<<< 第五回目 「うぶけや」 〜はさみ編〜
<<< 第六回目 「山形屋紙店舗」 〜和紙編〜
<<< 第七回目 「インクスタンド」 〜カラーインク編〜
>>> 第九回目 「箔座日本橋」 〜金箔編〜
<<< 第八回目 「ラピアーツ」 〜額縁編〜
>>> 番外編 「菊屋」 〜左利き用品編〜
>>> 第十回目 「宝研堂」 〜硯編〜
>>> 最終回 「岩井つづら店」 〜つづら編〜
●LapiArts(ラピアーツ)
“アートとフレーミング”というコンセプトの額縁専門店。イタリアを中心に、輸入額1200種以上を取り揃えている。額に入れたいものを持ち込むと、知識豊富な店員さんが、適したマットや額についてアドバイスをしてくれる。オーダーしてから約1週間で受け取り可能(時期や入れるものにもよる)。小さなものや立体物もフレーミング可能なので、ぜひ一度足を運んでみては。
住所/東京都港区六本木5-17-1 AXISビル 2F
アクセス/営団地下鉄日比谷線・都営地下鉄大江戸線「六本木駅」より徒歩約8分、東京メトロ南北線「六本木一丁目駅」より徒歩8分
営業時間/11:00〜19:00(土・日曜日、祭日は12:00〜19:00)
休業日/夏期と冬期のビル休館日に準ずる
TEL/03-3583-0861
※ショップ情報については、「アクシスラピアーツ」で検索
●福岡工業株式会社
フレーム事業部 ケイプリモ
住所/埼玉県ふじみ野市大井武蔵野1351
TEL/049-257-7561
URL http://www.fukuoka-ind.com/
<作品協力>
箕輪千絵子(みのわ・ちえこ) https://www.chiekominowa.com/
山本花南(やまもと・かなん)
“アートとフレーミング”というコンセプトの額縁専門店。イタリアを中心に、輸入額1200種以上を取り揃えている。額に入れたいものを持ち込むと、知識豊富な店員さんが、適したマットや額についてアドバイスをしてくれる。オーダーしてから約1週間で受け取り可能(時期や入れるものにもよる)。小さなものや立体物もフレーミング可能なので、ぜひ一度足を運んでみては。
住所/東京都港区六本木5-17-1 AXISビル 2F
アクセス/営団地下鉄日比谷線・都営地下鉄大江戸線「六本木駅」より徒歩約8分、東京メトロ南北線「六本木一丁目駅」より徒歩8分
営業時間/11:00〜19:00(土・日曜日、祭日は12:00〜19:00)
休業日/夏期と冬期のビル休館日に準ずる
TEL/03-3583-0861
※ショップ情報については、「アクシスラピアーツ」で検索
●福岡工業株式会社
フレーム事業部 ケイプリモ
住所/埼玉県ふじみ野市大井武蔵野1351
TEL/049-257-7561
URL http://www.fukuoka-ind.com/
<作品協力>
箕輪千絵子(みのわ・ちえこ) https://www.chiekominowa.com/
山本花南(やまもと・かなん)