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豪華絢爛なだけじゃない! 無限の可能性を秘めた金箔の魅力 第九回 箔座日本橋 〜金箔編〜(後編)

2019.2.17 SUN

似て非なる画材、この差って何?
あべちゃんのサブカル画材屋 紀行


豪華絢爛なだけじゃない! 無限の可能性を秘めた金箔の魅力
第九回/箔座日本橋 〜金箔編〜(後編)

金沢が育んだ金箔の歴史

金箔の歴史は古く、紀元前1200年頃に古代エジプトで製造が始まったと考えられている。日本では、少なくとも平安時代までに、金箔の製造技術があったといわれている。

金沢では、1593年(文禄2年)に加賀藩初代藩主・前田利家が、金箔・銀箔の製造を命じた書が残されているそうだ。今では、金沢市で全国における99パーセントの金箔が作られており、箔座の本社も金沢に位置している。

「金沢は湿度が高く、紙の湿気の調整が要となる金箔づくりに適していました。夏は暑く冬は寒い厳しい気候のなかで、我慢強く金沢人の気質が育まれたと考えられています。時間も手間もかかる繊細な金箔作りは、忍耐強い金沢の人々が支えてきたのです」と北嶋さん。

今でこそ掘りつくされたと考えられている日本の金だが、江戸時代・1600年前半のゴールドラッシュから幕末までの約270年にわたり、計41トンもの金が採掘されたという。1696年(元禄11年)になると、江戸に箔類の製造販売を統制する機関「箔座」が設置。これによって、江戸と京都以外で箔の製造・販売は禁止され、加賀藩でも箔の使用停止命令が出された。江戸幕府が終わるまでの長い間箔打禁止令は続いたものの、金沢では全焼した金沢城ニの丸の再建や、箔の打ち直しなどを名目にこつこつと箔打ちの腕を磨き続けたという。

前田家の文化振興策によって美術工芸が保護された金沢で、金箔は工芸材料として需要があった。さまざまな要因が重なって、金沢箔は成熟したのだ。

金箔の仕上がりを左右する「箔打紙」

さて、ふたつの金箔「縁付」と「断切」について、「箔打紙(はくうちがみ)」の違いがあることを前半で触れた。箔を1/10,000ミリにのばす「箔打行程」では、「上澄」と「箔打紙」を交互に1700〜1800枚重ねて叩くことによって金を薄くする。箔打紙の出来が悪いと、金がのびなかったり金箔に穴が開いてしまうという。

「金箔の善し悪しを左右するといわるほど、『箔打紙』は大切なもの。別名「ままがみ」とも呼ばれています」と、北嶋さん。

「まま」とは「まんま(ご飯)」のこと。箔打紙を上手に仕込んで金箔が作れるようになると「おまんまが食べられるようになる」(=お金を稼いでご飯が食べられる)」という意味が込められているという。

縁付製法の箔打紙は、雁皮紙(※4)を水や藁の灰汁、柿渋、卵白など自然由来の材料に浸して仕込まれる。また、機械で叩いて紙の繊維を潰す作業と交互に繰り返して作られるそうだ。

※4)雁皮紙……雁皮という材料を使った和紙のこと。詳しくは『第六回/山形屋紙店 〜和紙編〜 ②』の「和紙って一体なんだろう? 洋紙との違いは原料にあり」の項目を参照ください
「縁付」では、1700〜1800枚の箔打紙と金を交互にはさんで作られている

「縁付」では、1700〜1800枚の箔打紙と金を交互にはさんで作られている

手漉きの雁皮紙(左)と、箔打紙(右)

手漉きの雁皮紙(左)と、箔打紙(右)

半年かけて作られる箔打紙は繰り返し使用され、紙が傷んできたら「仕込み」を重ねて大切に使われる。

一方、断切には化学的な材料も使われている。グラシン紙に特殊なカーボンを塗布したものが箔打紙として使用される。

手間はかかるけれど、天然の素材で作られた箔打紙を使用する伝統的な技法・縁付。そして、行程の短縮を実現した現代の技法・断切。この二つが共存してこそ、金箔を量産してお客さまのお手元に届けることができる、と北嶋さんは話してくれた。

| ディープな豆知識 |


箔打によって何度も叩かれた紙は、繊維がつぶれてツルツルの状態。実は、紙の繊維がつぶれているほど油分を吸収しやすくなるため、顔の皮脂などをとる「あぶらとり紙」として使われるようになったとか。つまり、あぶらとり紙は金箔の副産物なのだ。使い込まれた箔打ち紙は「ふるや紙」と呼ばれ、高級なあぶらとり紙として取引されていたという。

配合率によって変わる金箔の輝きと、未来の可能性
金箔にはさまざまな種類がある。金の配合率によって色味もだいぶ異なって見える。作品づくりをする時には、一体どれを選べばいいだろうか。

「工芸関係では、一般的に四号色(※5)の金箔を使われることが多いですね。お仏壇などにもよく使われています。一号色(※6)は金の配合率が高く、国宝などの修復などにも使われています」
※5)四号色……純金94.438、純銀4.901、純銅0.661パーセント
※6)一号色……純金97.666、純銀1.357、純銅0.977パーセント
店内で販売されている各種箔素材

店内で販売されている各種箔素材

銀箔や色箔(銀箔に色をつけたもの)、銅箔、アルミ箔など、箔座では約100種の箔を扱っている。 (※写真内の「洋金箔四号色」は、現在「真鍮箔四号色」に名称変更)

銀箔や色箔(銀箔に色をつけたもの)、銅箔、アルミ箔など、箔座では約100種の箔を扱っている。
(※写真内の「洋金箔四号色」は、現在「真鍮箔四号色」に名称変更)

一号色金箔(左)、四号色金箔(右) 一号色の方が少し赤みがかっているのに対し、四号色はやや黄色っぽく見える

一号色金箔(左)、四号色金箔(右)
一号色の方が少し赤みがかっているのに対し、四号色はやや黄色っぽく見える

一号色の輝きは素晴らしく、とても上品な色合いに思えた。さらに、箔座のオリジナル金箔「純金プラチナ箔」が目に留まる。それまで存在していなかった、純金とプラチナの合金箔だという。数字で見るとたった数パーセントだが、こうも印象が変わるものかと驚くばかりだ。

純金プラチナ箔永遠色(箔座オリジナル箔)……純金99、純プラチナ1パーセント

純金プラチナ箔永遠色(箔座オリジナル箔)……純金99、純プラチナ1パーセント

純金プラチナ箔久遠色(箔座オリジナル箔)……純金92、純プラチナ8パーセント ※純金プラチナ箔は2種とも、箔そのものの販売は行なっていない

純金プラチナ箔久遠色(箔座オリジナル箔)……純金92、純プラチナ8パーセント

※純金プラチナ箔は2種とも、箔そのものの販売は行なっていない

金の配合率や、土台となる材料によってさまざまな表情をみせる金箔。利用用途があまりに広すぎてつかみどころがない画材だと思っていたけれど、金箔について知るほど「もっともっと色々なことができるんじゃないか」と思うようになった。「金箔の魅力を未来に繋げるため、箔の歴史や本来の価値を大切にしながら新たな可能性を見つけていきたい」と北嶋さんはいう。

「箔座ではこれまで、さまざまな金箔の商品を展開してきました。これからは、さらに多くの方に金箔の魅力を知って頂くため、プロダクトに留まらないものづくりに挑戦できないかと考えています。建築や舞台芸術など、その時、その場でしか体験できない、金箔の空間づくりや新たなコンテンツを実現できたら素敵ですね」。

金箔でしか到達しえない極薄の世界。それを実現するの職人の卓越した技術。金沢という土地が育てた究極の画材といえそうだ。紀元前から使用されてきた伝統的な金箔は、まだまだあらゆる可能性を秘めた画材であることを思い知った。


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●箔座日本橋
昭和初期に初代社長の高岡源治が、金箔の製造と販売を目的に「高岡金箔店」としてスタートさせた金箔の専門店。本社のある石川県金沢市では、金箔約4万枚で仕上げた黄金の茶室を構える「箔座本店」のほか、さまざまな金箔の魅力が楽しめる店舗を複数展開。取材で訪れた「箔座日本橋」は、石川県外唯一の店舗として2010年にオープン。箔座のフラッグシップショップだ。各種箔素材や道具などを店頭で購入可能。一部取り寄せ商品もあり。

住所/東京都中央区日本橋室町2-2-1 COREDO室町1・1F
アクセス/半蔵門線・銀座線「三越前」またはJR「新日本橋」駅 直結、銀座線・東西線・都営浅草線「日本橋」駅 徒歩5分
営業時間/10:00~20:00
休業日/1月1日、その他不定休(COREDO室町1に準じる)
TEL/03-3273-8941
https://www.hakuza.co.jp/
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