「クリムト展 ウィーンと日本 1900」
東京都美術館 会期:2019年4月23日(火)~7月10日(水)
※7月23日(火)より、愛知の豊田市美術館でも開催
「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」
国立新美術館 会期:2019年4月24日(水)~8月5日(月)
※8月27日(火)より、大阪の国立国際美術館でも開催
2019年5月29日
(取材・文/編集部)
常に探求を止めないその姿勢は権威筋からの批判を浴びることも多く、ウィーン大学の天井画を製作する仕事では、その赤裸々な表現が数々の議論を巻き起こし、完成を断念するといった出来事もあった。
私生活では多くのモデルと愛人関係を持ち、少なくとも14人の子供がいたという。しかし、こういったスキャンダルから連想する色男とは程遠く、いつももじゃもじゃ頭にガバッとしたスモックを着ているような人物である。分離派メンバーの同志たちと撮った記念写真でも、周りがタキシードとシルクハットで決める中、一人トレードマークの青いスモック姿だ。もっとも、スモックの中は裸だったようなので、洒落っ気がないというよりも、これもクリムトの特異性の一端だったのかもしれない。
それではまず、東京都美術館で開催されている「クリムト展 ウィーンと日本 1900」から見ていこう。
クリムトの代名詞となった「黄金様式」の時代の作品はもちろん、タイポグラフィが現代的なウィーン分離派展のポスター、壁画「ベートーヴェン・フリーズ」の再現、ウィーン大学の天井画制作のための習作など、クリムトが手掛けた総合芸術の世界が展開されている。
「17歳のエミーリエ・フレーゲの肖像」「ヌーダ・ヴェリタス(裸の真実)」「ユディトⅠ」などでは、絵画だけでなく、額もセットでデザインされており、より世界観を楽しめる演出だ。額装の中には、金細工師だったクリムトの実の弟ゲオルク・クリムトが手掛けたものもあったようである。
親友のフランツ・マッチュや、クリムトに大きな影響を与えたハンス・マルカトらの作品も展示されているが、どれもクリムトとの関係性という視点で紹介されている。
そして後半に行くにつれ、モチーフは華やかな女性たちから、人間の生と死という深淵なテーマを色濃く反映したものへと移行していく。40歳以降に描かれた「赤子」「女の三世代」「家族」などでは、煽情的な女性たちとはまた違った部分で、見るものを不安にさせる寓意的な作品が続いている。クリムト作品の何とも言えない不安と危うさ、絵画の奥底から漂ってくるひんやりとした空気のようなものが、体感できる美術展である。
世紀末芸術を堪能するなら「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」
同展は、マリア・テレジア(1717-1780年)と幼いヨーゼフ2世が描かれた巨大な絵画からスタートする。1862年に生まれたクリムトが画壇で活躍した時代を中心に、神聖ローマ帝国の時代から、クリムト以降に台頭してきたエゴン・シーレ、オスカー・ココシュカといった表現主義の画家たちの作品までを見ていくわけだから、扱う時代は優に100年を超えている。
また、絵画だけでなく、当時の家具や食器、宝飾品にドレスまでが展示されており、正直な所、観覧者にとって1日で消化するには無理があると言えるほど、バラエティに富み、数も膨大である。展示作品数は約400点(大阪会場では約300点)というから、一般的な美術展の優に2~3倍の作品数と言えるだろう。
登場するアーティスト(画家・建築家・音楽家など)の数も膨大なので個々の紹介は控えるが、この企画展で実感できるのはウィーン芸術界の潮流の変化だ。社会の革新を目指す啓蒙思想がビーダーマイアー※の概念を生み出し、ウィーンのモダニズム文化の萌芽となって、19世紀末の絢爛豪華な芸術活動へと発展していく。作品を見ていても、クリムトが活躍した1900年前後を境に、絵画が古典的で写実主義的な作品から、より大胆で個性的な画家の作品へと大きく変化しているのがわかる。
※ビーダーマイアー:日常生活に実用的な美を見出す、19世紀前半の市民文化の形態の総称
会場に着いたら、まずはざっと全体を見渡し、もう一度最初に戻って「自分なりの視点」で、世紀末ウィーンの世界にトリップしてみてはどうだろうか。
https://klimt2019.jp
会期:2019年4月23日(火)~7月10日(水)
休室日:5月20日(月)、27日(月)、6月3日(月)、17日(月)、7月1日(月)
開室時間:9:30~17:30(金曜日は16:00まで)※入室は閉室の30分前まで
場所:東京都美術館 企画展示室
問い合せ先:03-5777-8600(ハローダイヤル)
観覧料:一般 1,600円、大学生・専門学校生 1,300円、高校生 800円、65歳以上 1,000円
https://klimt2019.jp
会期:2019年7月23日(火)~10月14日(月)
休館日:月曜日(ただし8月12日、9月16日、9月23日、10月14日は開館)
開室時間:10:00~17:30 ※入室は閉室の30分前まで
場所:豊田市美術館
問い合せ先:0565-34-6748(6/1まで)、
観覧料:一般 1,600円、大学生 1,300円、高校生以下無料
https://artexhibition.jp/wienmodern2019/
期間:2019年4月24日(水)~8月5日(月)
開館時間:10:00~18:00(入場は閉館の30分前まで)
※毎週金・土曜日は、5・6月は20:00、7・8月は21:00まで。
休館日:毎週火曜日
場所:国立新美術館 企画展示室1E
問い合せ先:03-5777-8600(ハローダイヤル)
入館料:一般 1,600円、大学生 1,200円、高校生 800円、中学生以下無料
https://artexhibition.jp/wienmodern2019/
期間:2019年8月27日(火)~12月8日(日)
開館時間:10:00〜17:00(入場は閉館の30分前まで)
※8、9月中の金曜・土曜日は21:00まで開館、10~12月中の金曜・土曜日は20:00まで開館。
休館日:毎週月曜日
※ただし、9月16日、23日、10月14日、11月4日は開館し、翌日休館。
場所:国立国際美術館
問い合せ先:06-6447-4680
入館料:一般 1,600円、大学生 1,200円、高校生 800円、中学生以下無料
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