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第3回 ユーザーを満足させる情報こそが最上の広告

2024.4.18 THU

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AKIHIRO HARUSAWA
日本ブランド戦略研究所 代表

東京大学法学部卒。北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科博士前期課程修了。コーポレートディレクション、トーマツコンサルティング、デロイトトーマ ツコンサルティング(現アビームコンサルティング)を経て2003年に日本ブランド戦略研究所を設立。おもな著書に「知的資本とキャッシュフロー経営」 (生産性出版)、「図解ブランドマネジメント」(東洋経済)などがある。
url. japanbrand.jp/



第3回
ユーザーを満足させる情報こそが最上の広告



少し前にインターネットの広告費がついにマス4媒体のひとつ、ラジオを抜いたと報じられたが、成長を続けるインターネットに対する広告媒体としての期待はますます高まっている。

企業のWebサイトで提供される情報のうち、もっとも中心的なもののひとつは商品情報であり、これは広告そのものといえる。しかし、なかには、商品の売り上げにそのまま結びつくとはとても思えない情報を満載する企業サイトも少なくない。実は、こうしたコンテンツは企業ブランドの向上に少なからず貢献していることはもっと注目されてよい。


広告効果の測定は容易でない

企業がネット広告を重視し始めた大きな理由のひとつとして、広告効果の測定がしやすいと考えられていることが挙げられる。

テレビのCMであれば、何人の人にリーチ(到達)したか、が重要な効果の指標とされている。しかし、リーチはあくまで広告効果が発現するまでのひとつの過程にあるにすぎず、本来実現したい売上増にいたるまでの関連性ははっきりしないことが少なくない。

これに対し、ネット広告では、クリックという明確なレスポンを把握できるため、1クリック当たりの広告費など、費用対効果が指標化しやすいといわれる。しかし、誘導先の企業サイトで必ずしも商品を直接販売しているわけではない。この場合にはやはり、最終的な効果は間接的にしか把握できない。


ユーザーが求める情報へのアクセス方法が確立された

テレビの視聴者は基本的に受動的である。限られた電波資源を通じて届けられるコンテンツの中から見たいものを選ぶしかない。視聴者が自由になるのは番組と番組との間のCMの時間帯である。そこで、CMの広告主は、番組と同様、あるいはそれ以上に視聴者を楽しませ、画面の前に釘づけにする努力をしてきた。

これに対して、インターネットではユーザーにとってのコンテンツの選択肢ははるかに広い。そして、検索エンジンという強力なツールを得て情報を能動的に探し回っている。たとえば取引先の情報を得たい場合には企業名で検索するのが効率的という認識が広がる【1】など、情報ニーズに応じてほしい情報にアクセスするルートが確立された。

【1】取引先(候補を含む)に関する情報のアクセス方法(データ:日本ブランド戦略研究所「BtoBサイト調査2006・ITサイト編」より)


















【1】取引先(候補を含む)に関する情報のアクセス方法(データ:日本ブランド戦略研究所「BtoBサイト調査2006・ITサイト編」より)


ユーザーにとって有意義な情報を提供しよう

このような中で、企業Webサイトもユーザーの多様な情報ニーズを満たすことが求められる。

とはいえ、ユーザーが企業に対して抱く関心事は、おのずとその企業の活動やそこから派生したものが中心となる。そこでの関心の広がりをうまくとらえ、おもしろい、ためになる情報を提供すれば、ユーザーがそのサイトに愛着を抱き、それは企業に対する好感度のアップにも結びつく。

ここで参考になるのはキリンビールのキリンビール大学である【2】。ここでは、ビールの歴史など、ビールにまつわるさまざまな分野の知識を分類し、各ユーザーの興味に応じて、大学になぞらえた7つの学部や研究所などの付属施設を通じて楽しく学ぶことができる。課外活動としてサッカー部も用意されている。

【2】キリンビール大学(www.kirin.co.jp/daigaku/)
【2】キリンビール大学(www.kirin.co.jp/daigaku/


それぞれのコンテンツは基本的にユーザーの知りたい欲求を満足させるものであり、この場であえて同社の商品の宣伝に誘導するということは控えられている。しかし、こうした情報に満足したユーザーの多くは同社のサイトをまた見たいと思うであろうし、何度も見ているうちに次第に同社に対する好感度がアップしていくことはまちがいない。

このように、売り上げに直結する商品情報だけでなく、ユーザーの情報ニーズを上手に汲み取った有意義な情報を提供することは、企業Webサイトのより好ましく洗練された広告のあり方として、より多くの企業に取り入れられてよいであろう。


本記事は『Web STRATEGY』2006年9-10 vol.5からの転載です


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