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第13回 “お客さまの声”に対する取り組みで好循環をつくる

2024.4.25 THU

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AKIHIRO HARUSAWA
日本ブランド戦略研究所 代表

東京大学法学部卒。北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科博士前期課程修了。コーポレートディレクション、トーマツコンサルティング、デロイトトーマ ツコンサルティング(現アビームコンサルティング)を経て2003年に日本ブランド戦略研究所を設立。おもな著書に「知的資本とキャッシュフロー経営」 (生産性出版)、「図解ブランドマネジメント」(東洋経済)などがある。
url. japanbrand.jp/



第13回
“お客さまの声”に対する取り組みで
好循環をつくる



インターネットの登場によって、一般消費者が企業に意見や要望を伝えられる手軽なルートがひとつ増えた。

企業によっては流行に乗って企業ブログなどを始めたところもあるが、あいにく多くの場合、定着したとはいえない状況のようだ。しかし、取り組み方のいかんによっては企業ブランド価値を大いに高める可能性がある。


「お客さまの声」へのニーズは高い

【1】のグラフで示したのは、企業情報サイトユーザーがどのようなコンテンツを求めるかを質問したアンケート調査の結果である。もっとも回答が多かったのは企業情報の基本となる会社案内(79%)であり、これだけがほかのものから突出して高い数値を示している。次いで7つの項目がそれほど大差なく40%台の回答者割合で並んでいる。これらのうち、経営理念やIRなどはほとんどの会社(ただしIRは上場企業中心)に存在する。

【1】ユーザーが重要と考える企業情報コンテンツ(データ:日本ブランド戦略研究所「企業情報サイト調査2007」)

























【1】ユーザーが重要と考える企業情報コンテンツ(データ:日本ブランド戦略研究所「企業情報サイト調査2007」)


「安全への取り組み」や「品質」については、たとえ独立したコンテンツを提供していなくても、少なくともCSR報告書の一項目として多くの企業に存在する。その一方、ユーザーが重要と考えているにもかかわらず提供している企業がけっしてあまり多くないのが「お客さまへの声への取り組み」である。


良い対応は優れた体制を示唆する

ひと言でユーザーとのコミュニケーションといっても、ブログやSNSを通じたWeb管理者との会話のキャッチボールだけにとどまるものではない。

むしろ、ユーザーからのさまざまな問いかけに対して、企業としてどのように真摯に取り組むかが問われている。

重要なことは、外部からの声が直接の窓口にある人たちにとどまらず、企業のもっと奥へと伝達するための情報チャネルを内部にもつことである。

さらに、内容によっては製品開発部門、営業部門、品質管理部門などが協力して企業力を挙げて取り組まなければならないものもある。部門横断的な取り組みが実現できる組織体制と運用の実体がなければならない。

もうひとつ重要なこととして、取り組みの結果を外部に公開することがある。情報を吸い上げる仕組みとそれを実現する仕組み、そして情報公開の姿勢が一体となって、企業の優れた体制のひとつの証しとなる。

こうしたコミュニケーションは窓口と問い合わせ者という狭い範囲にとどまらず、もっと大がかりなものとなる。にもかかわらず今日すぐにキャッシュを生むようなことでは必ずしもない。しかし、企業の信頼を高め、ブランド価値の向上を通じて明日の企業価値を高める効果が期待できる。


顧客を情報提供へ前向にし、良質な声を呼ぶ

Webサイトを通じたお客さまの声への対応に関する情報公開に積極的に取り組んでいる企業に航空会社がある。

JALの「お客さまの声を形にしました」というコンテンツでは、顧客からのさまざまな意見や要望にどのような形で応えたかが紹介されている【2】。このような情報は以前は機内誌くらいしか目に触れる機会があまりなかった。しかも、カウンターや機内、電話などの情報を吸い上げるルートと結果が公開されるルートは異なり、しかもタイムラグが小さくなかった。

【2】JALの企業情報コンテンツ「お客さまの声を形にしました」(www.japanairlines.fr/ja/corporate/voice/)
【2】JALの企業情報コンテンツ「お客さまの声を形にしました」(www.japanairlines.fr/ja/corporate/voice/


今日ではインターネットを通じて顧客はその会社の取り組みに関する体系的な情報に接し、その結果会社の取り組み姿勢をより深く理解できる機会が得られるようになっている。しかも、インターネットを通じて情報を受け取ったあとにさらに意見を述べることも行いやすくなった。こうして、多くの人が自分たちの声が企業から受け止められていると実感するようになれば、より質の高い意見や要望が集まりやすくなってくるのではないだろうか。

ツールとしての目新しさにとらわれて外部との情報のやりとりを表層的なやり方で処理するのではなく、より深層からの仕組みをつくることによって好循環が期待できるのである。


本記事は『Web STRATEGY』2008年5-6 vol.15からの転載です


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