第6回 企業Webサイトは企業ブランドの訴求に力を持つ | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-

第6回 企業Webサイトは企業ブランドの訴求に力を持つ

2024.4.27 SAT

【サイトリニューアル!】新サイトはこちらMdNについて
榛沢明浩のWEBトレンドナビゲーション


AKIHIRO HARUSAWA
日本ブランド戦略研究所 代表

東京大学法学部卒。北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科博士前期課程修了。コーポレートディレクション、トーマツコンサルティング、デロイトトーマ ツコンサルティング(現アビームコンサルティング)を経て2003年に日本ブランド戦略研究所を設立。おもな著書に「知的資本とキャッシュフロー経営」 (生産性出版)、「図解ブランドマネジメント」(東洋経済)などがある。
url. japanbrand.jp/



第6回
企業Webサイトは企業ブランドの訴求に力を持つ



企業Webサイトには直接的に商品を宣伝し売り上げを向上させるという役割のほか、企業広報の一環として、さまざまなステークホルダーに対して企業の活動を伝えるという役割を担っている。

前者の効果は経営者にとって理解しやすく、必然的に注目度も高くなるが、実は後者の効果もけっして小さくない。


企業Webサイトはどのような効果が期待できるか

Webサイトの効果を知るには、被験者に目的のWebサイトを閲覧させ、閲覧前後のイメージの変化を測るという方法がある。

この方法を用いて会社概要、経営理念、ニュースリリース、環境・CSR活動への取り組み、IR情報など企業情報サイトの効果を測定した結果は興味深いものである【1】。

【1】企業好感度への効果が高いサイト。順位は企業好感度への効果が大きい順(データ:日本ブランド戦略研究所「BtoBサイト調査2006」より)























【1】企業好感度への効果が高いサイト。順位は企業好感度への効果が大きい順(データ:日本ブランド戦略研究所「BtoBサイト調査2006」より)


被験者はすべてのイメージが一律的に向上するわけではなく、まずは情報公開や誠実・公正な経営に積極的に取り組んでいる、さらには顧客、地域、社会、地球環境に貢献しているというイメージが向上する。さらには企業好感度や購買意向の向上という連鎖が生まれる。一方、株主、取引先、従業員を大切にしているというイメージにはほとんど影響がなく、同時に投資意向、取引意向、就職意向にも有意な変化は見られないことが多い。


どんなサイトで特に効果が大きいか

企業好感度をはじめ、幅広いイメージ項目で向上効果を実現しているものに飲料メーカーのWebサイトがある。

実は、企業情報サイトで差別化の重要な鍵となるコンテンツはCSR関連の情報なのだが、単にCSRレポートをアップするだけでは専門的すぎて多くのユーザーに敬遠されてしまう。これに対して、飲料メーカーではその内容を一般ユーザー向けに噛み砕き、知的好奇心を満たしながら、楽しく読めるように加工したコンテンツを豊富に用意している。

その中でも特に優れているのはサントリーのサイトである【2】。同社の企業情報にはCSRに関連した有益なコンテンツが豊富に用意されているほか、「water web」という、CSR関連情報の興味深いポータルが用意されている。ここにはダイジェストの情報があり、さらに興味を喚起されたユーザーを詳細な情報に誘導して、同社の企業理念を理解する重要なきっかけを提供している。サイトのイメージも企業メッセージとよく合致している。

【2】サントリーのコンテンツ「水と生きるサントリー」(www.suntory.co.jp/company/mizu/)
【2】サントリーのコンテンツ「水と生きるサントリー」(www.suntory.co.jp/company/mizu/


「顧客を大切にしている」イメージの大幅な向上が見られるものにANA、JALの航空会社のサイトがある。

それぞれ、「これまでのお客様の声」、「お客様の声を形にしました」というコンテンツを持つ。これらは、さまざまな形で寄せられた利用者からの声に対して企業としてどのように対処したかを具体的に示すコンテンツとして評価が高い。

BtoB企業の中でサイトがイメージ全般に貢献している例としてはNTTデータのサイトがある。

同社はNTTというブランドを冠しているものの、けっして一般になじみがある企業ではない。しかし、企業情報を一通り見たあとで同社が優良企業であることがあらためて多くの人に認識される結果となっている。


企業ブランドの力を重視せよ

多くの企業では、広告の優先順位は販売促進にある。たとえ企業イメージ向上に効果があるとわかっていても、マスメディアを用いた企業広告は高価なものであるだけに積極的に展開しづらいのが実情だろう。

しかし、企業ブランドは商品ブランドの上位にあってその信用を背後から支える重要な役割をしている。けっしておろそかにすべきではない。

そこで着目されるべきはWebサイトである。企業の情報開示義務はステークホルダーのリクエストがあったときに即時に対応できるものであるべきである。この点でWebは適合性の高いメディアといえる。そのうえで、企業ブランドを向上させる役割を十分に担える中心的メディアとして、今以上に有効活用されてもよいのではないだろうか。


本記事は『Web STRATEGY』2007年3-4 vol.8からの転載です


twitter facebook このエントリーをはてなブックマークに追加 RSS
【サイトリニューアル!】新サイトはこちらMdNについて

この連載のすべての記事

アクセスランキング

8.30-9.5

MdN BOOKS|デザインの本

Pick upコンテンツ

現在