
AKIHIRO HARUSAWA
日本ブランド戦略研究所 代表
東京大学法学部卒。北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科博士前期課程修了。コーポレートディレクション、トーマツコンサルティング、デロイトトーマ ツコンサルティング(現アビームコンサルティング)を経て2003年に日本ブランド戦略研究所を設立。おもな著書に「知的資本とキャッシュフロー経営」 (生産性出版)、「図解ブランドマネジメント」(東洋経済)などがある。
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第10回
BtoB企業こそWebに注力すべき
世の中の企業の大半はBtoB企業である。しかし、BtoC企業と比べ、BtoB企業のサイトへのアクセスはかなり少ない。ECによる売り上げは多くの場合微々たるものだ。サイトを通じた問い合わせも少ない。話題になるキャンペーンもほとんどない。結局注文を取るのは営業員だ。そのためBtoB企業はWebの役割を軽視しがちだ。しかし、実はBtoB企業におけるWebの役割はBtoC企業以上に大きい。
■アクセスは購入検討に直結
BtoBサイトのユーザーは基本的に何らかの業務上の課題を抱え、それを解決するために情報収集している。製品情報を見るのは、それが自分の課題解決に直結するからだ。こうした背景から、情報に満足したユーザーが閲覧後に該当製品を購入の選択肢に入れる可能性は高い。
グラフ【1】はBtoBサイトユーザーのうち、閲覧した製品・サービスの購入を検討した人の割合を示したものである。もっとも高いライフサイエンス研究用製品・サービスでは実に75%、もっとも少ない建設機械でも41%に達する。これはBtoCの場合と比べ、顕著に高い。このように、BtoBサイトのアクセスはBtoCサイトと比べて少ないかもしれないが、ひとつひとつのアクセスの価値は非常に高いのである。

【1】ユーザーのうち閲覧後に製品・サービスの購入を検討した人の割合(データ:日本ブランド戦略研究所「BtoBサイト調査2007」)
BtoB企業の営業は顧客へのコンタクトがスタートと考えがちだが、本当の競争は顧客が事前に行う情報収集段階から始まっている。その主役はWebサイトである。ここで顧客ニーズに応え、早い段階で購入検討先リストに入れてもらうことが重要なのである。
■貢献度の把握の仕方に問題
BtoB企業がWebサイトを軽視しやすいひとつの原因として、問い合わせフォームへの入力など、Webサイトを経由して入ってくる問い合わせの数が非常に限られていることが挙げられる。しかし、問い合わせ数は、サイトがよくできていたからではなく、製品魅力度などサイト上の表現とは異なる部分で決まることが多い。
Webサイトのビジネス貢献度を測るもっとも主要な指標は、そもそもターゲットに到達しているかどうかであり、到達している場合にはユーザーがもつ情報ニーズを充足しているかどうかである。少なくとも、Webサイト経由の問い合わせ数だけを貢献度の指標とするのはまちがっている。第一、Webサイトを見たからWeb経由で問い合わせがあると考えるのは大まちがいだ。実際には営業員に声をかけるなど、Webサイトを経由しない経路による問い合わせのほうがはるかに多いのが実情だ。
■先行者のメリットは大きい
BtoB企業では、企業規模の割にお粗末な状態のままWebサイトを放置しているケースがまだまだ少なくない。その中で、いち早くWebサイトの重要性に気づき、取り組んできた企業は大きな成果を挙げるようになっている。その好例がオムロンだ【2】。FAという分野で、同社のWebサイトは購入関与者の64%に到達し、ニーズ充足度も非常に高い。単に情報が充実しているだけでなく、マイページのような、ユーザーへの利便性の提供にも十分な配慮がなされている。その結果、製品の販売を支える重要な情報インフラの役割を果たしている。

【2】オムロンBtoBサイト「オムロン制御機器インターネットサービス」(www.fa.omron.co.jp/)
ほかの事例としてTOTOの建築専門家向けサイトが挙げられる。ターゲットへの到達度こそオムロンほどではないが、ニーズが充足されたユーザーの割合は90%近くにまで達する。建築設計を行う際に必要となるCADデータなど、専門家にとって便利な機能を備えることでユーザーの高い支持を得ている。
いずれもBtoCのようなインパクトの強いビジュアルを多用した派手さはない。しかし、ユーザーの立場に立って使いやすさを追求した結果、一種の機能美とでもいうものを感じさせる。多くのBtoB企業で、Webサイトに積極的に取り組む価値は非常に大きいことがもっと意識されるべきである。
本記事は『Web STRATEGY』2007年11-12 vol.12からの転載です



