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第11回 Webサイトは消費行動を喚起し企業価値を向上させる

2024.4.24 WED

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AKIHIRO HARUSAWA
日本ブランド戦略研究所 代表

東京大学法学部卒。北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科博士前期課程修了。コーポレートディレクション、トーマツコンサルティング、デロイトトーマ ツコンサルティング(現アビームコンサルティング)を経て2003年に日本ブランド戦略研究所を設立。おもな著書に「知的資本とキャッシュフロー経営」 (生産性出版)、「図解ブランドマネジメント」(東洋経済)などがある。
url. japanbrand.jp/



第11回
Webサイトは消費行動を喚起し
企業価値を向上させる



ECが唯一の販売チャネルとなっている企業にとって、Webサイトの価値は企業価値そのものだ。一方、ECの重要性が低い大半の企業にとって、Webサイトの効果を実感する機会は限られている。その背景には、Webサイト外で行われる消費行動の分析が十分に行われていないことがある。


ECはなくても売り上げに大きな貢献

Webがほかの広告媒体と比較して優れている点として、効果測定が容易であることがよく挙げられる。ネット広告の場合、インプレッション効果という実感がわきにくい効果だけでなく、クリックされたという事実に基づいて誘導効果を把握できる。クリック単価など費用対効果の把握も容易だ。キャンペーンであれば、どれだけのアクセスを集めることができたかで、効果の大小を評価することができる。

もっとも、実際の消費者の購買行動はWebサイト外で行われており、残念ながらアクセスログ解析ではそれを追うことはできない。しかし、Webサイトでの直接的な販売はたとえゼロであっても、多くの消費者の行動を喚起することができれば、結果的に大きな売り上げ貢献をしたことになる。


閲覧後の行動推移に着目する

こうした売り上げ貢献度を正しく知るためには、アクセスから購買までの消費者行動を把握することが重要となる。

アクセスの大小はもっとも把握が容易な指標だが、アクセスが多いからといってユーザーが皆満足しているとは限らない。ユーザーの満足度は1人当たりの閲覧ページ数や滞在時間である程度推定することができるが、ユーザーアンケートも有効な手段である。

さらに、来訪者のその後の行動を調べることによってアクセスが実際の購買につながったかどうかを知ることができる。グラフ【1】は自動車会社5社について、ユーザーがアクセスしてから購入するまでの行動の推移を見たものである。アクセス、再訪問、購入検討、購入と段階を追うに従って人数は少なくなるため、基本的に右下がりのグラフとなる。

【1】自動車業界各メーカーにおけるユーザーの行動推移を表した図。ホンダはアクセスではトヨタ、日産に及ばないが、購入検討から購入までの効率が非常に高い(データ:日本ブランド戦略研究所「Web Equity 2007」より)














【1】自動車業界各メーカーにおけるユーザーの行動推移を表した図。ホンダはアクセスではトヨタ、日産に及ばないが、購入検討から購入までの効率が非常に高い(データ:日本ブランド戦略研究所「Web Equity 2007」より)


トップメーカーのトヨタがいちばん上の所を推移しているのは当然だが、むしろ日産とホンダが非常に健闘していることが注目される。国内販売台数シェアではトップのトヨタに倍かそれ以上の差をつけられているが、Webサイトの集客ではそれほど大きな差はない。

特に、ホンダの場合には、アクセスから再訪問、購入検討、購入と推移するに従って右下がりのグラフの下がり方がほかのメーカーと比べて小さい。さすがに絶対数でトヨタを逆転することはないものの、効率性という点ではむしろ上回っていると見ることができる。


夢のある情報が行動を喚起する

購買行動における情報源がカタログなどの紙媒体からインターネットに置き換えただけではゼロサム的であり、行動喚起というには迫力に乏しい。

ここで、ホンダのサイトを見ると、商品情報のほかに、コミュニティなどの商品周辺情報が充実していることがわかる。
「ユーザーズボイス」はオーナーが自分のクルマを自慢するコーナーだ。バイクのオーナーが愛車を自慢する「ライダーズボイス」もある。

「クルマ家族会議」は購入までに至るまでのエピソードをつづったものだ。クルマという高額商品ならではの購入の苦労を楽しい思い出としてこれから購入しようとする人と共有できる。

「Honda Dog」は犬を連れてドライブを楽しみたい人のためのコンテンツだ。高速道路のサービスエリア・パーキングエリアの情報は犬を飼っていない人にとっても有益だ【2】。

【2】夢のあるコンテンツの例「Honda Dog」(www.honda.co.jp/dog/)
【2】夢のあるコンテンツの例「Honda Dog」(www.honda.co.jp/dog/


このように、商品を購入することそのものの楽しみや、ライフスタイルに溶け込む道具としての喜びなどを効果的に訴求している。Webサイトには、夢のある情報を伝えることによって、新しい需要を喚起する力がある。そのポテンシャルをいかに引き出すかがWebサイトの価値を高める鍵となる。


本記事は『Web STRATEGY』2008年1-2 vol.13からの転載です



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