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第14回 WebサイトにもM&Aの波が訪れようとしている

2024.4.27 SAT

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榛沢明浩のWEBトレンドナビゲーション


AKIHIRO HARUSAWA
日本ブランド戦略研究所 代表

東京大学法学部卒。北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科博士前期課程修了。コーポレートディレクション、トーマツコンサルティング、デロイトトーマ ツコンサルティング(現アビームコンサルティング)を経て2003年に日本ブランド戦略研究所を設立。おもな著書に「知的資本とキャッシュフロー経営」 (生産性出版)、「図解ブランドマネジメント」(東洋経済)などがある。
url. japanbrand.jp/



第14回
WebサイトにもM&Aの波が訪れようとしている



マイクロソフトによるYahoo!買収提案に関連するニュースがマスコミをにぎわせている。これほど大型でしかも象徴的な案件はそう頻繁にあるものではないが、その影で取引されるWebサイトは着実に増えようとしている。


Webサイトが淘汰される時代

少し前まで、ブロードバンドの普及の速度に合わせ、どのWebサイトも一律的にかつ急速にアクセスを伸ばしていた時期があった。しかし、ここ最近、インターネットの世帯普及率が80%を超えたころから、多くの企業でアクセスが伸び悩む状況が見られるようになっている。

動画共有サイトの影響でユーザーがインタネットで過ごす時間は依然として伸びているという状況はあるものの、ページビューや訪問者数といった指標では確実に踊り場に差しかかったようである。

その一方で、新規に開設されるWebサイトは着実に増えている。確かにインターネットの世界はまだまだ多くのニッチな市場があり、新たな事業領域を開拓する余地は旧来の業界と比べてけっして少なくない。しかし、ひとつの市場で生き残ることができる企業の数は限られており、流れの速い業界の中で急速に明暗が分かれるようになっている。このような中で、多くのWebサイトが市場から淘汰されざるを得ない状況が迫りつつある。


サイト売買の仲介ビジネスが勃興してきた

市場には、先行し拡大を続けるサイトの影で、単独では生き残りが困難なサイトが増えている。両社をマッチングさせるのはひとつの必然的な流れといえる。こうした状況を背景に、サイト売買を仲介しようとする企業が現れている。

先行事例のひとつはデジパ(株)が運営する「サイトストック」である【1】。もうひとつ、代表的な事例として(株)バトラァーズが運営する「SiteM&A.jp」がある【2】。いずれもサイト上で売却案件の一部を紹介しており、もちろん購入希望を出すこともできる。売却案件では、そのサイトの収益モデルや希望価格を知ることができる。売買実績も着実に積み重ねられているようである。

【1】デジパ(株)が運営するサイト売買サイト「サイトストック」(www.sitestock.jp/)
【1】デジパ(株)が運営するサイト売買サイト「サイトストック」(www.sitestock.jp/

【2】(株)バトラァーズが運営するサイト売買サイト「SiteM&A.jp」(www.sitema.jp/)
【2】(株)バトラァーズが運営するサイト売買サイト「SiteM&A.jp」(www.sitema.jp/


情報共有と評価手法の標準化がこれからの課題

現状では案件は仲介業者各社が売り手と買い手の両方を見つけてくる仕組みである。当然、売り案件を多く抱える業者と買い案件を抱える業者が現れる。これに対し、不動産業界や証券業界のように共通のデータベースを構築して情報共有の仕組みができれば成約の確率が非常に高まり、売り手、買い手ともにメリットは大きいが、これはサイト売買が業界として成長するための将来的な課題であると考えられる。

もうひとつの課題は、評価手法の標準化である。最終的な価格は売り手の経済事情や買い手の経営戦略によって左右されるため、ひとつの方程式に当てはめれば自動的に算出できるような単純な話ではない。しかし、価格を算出するうえで必要な要素、たとえばユーザーの定義やその裏付けの仕方、潜在的なリスクの洗い出しなど、ビジネスのデューデリジェンス(適正な査定手続き)の基本的な方法は共通化できよう。

このような課題に、業界として対応していくための取り組みも現れている【3】。日本サイト売買協会は、会員が保有するサイト売買案件情報の共有データベース構築やサイト価値算定方法の研究、業界動向の報告など、サイト売買取引における標準化の研究を行う機関である。

【3】日本サイト売買協会(JSTA)のサイト(www.jsta.jp/)
【3】日本サイト売買協会(JSTA)のサイト(www.jsta.jp/


こうした取り組みを通じてWebサイトの買収がより一般化することは、ビジネスの展開がより迅速に行える環境として多くの企業にとってメリットがあるであろう。インターネット関連業界が踊り場を脱却するひとつの社会インフラとして今後に期待したい。


本記事は『Web STRATEGY』2008年7-8 vol.16からの転載です
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