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第15回 BtoBサイトの貢献度は売り上げの29%にも達する

2024.4.26 FRI

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榛沢明浩のWEBトレンドナビゲーション


AKIHIRO HARUSAWA
日本ブランド戦略研究所 代表

東京大学法学部卒。北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科博士前期課程修了。コーポレートディレクション、トーマツコンサルティング、デロイトトーマ ツコンサルティング(現アビームコンサルティング)を経て2003年に日本ブランド戦略研究所を設立。おもな著書に「知的資本とキャッシュフロー経営」 (生産性出版)、「図解ブランドマネジメント」(東洋経済)などがある。
url. japanbrand.jp/



第15回
BtoBサイトの貢献度は売り上げの29%にも達する



さまざまなコミュニケーション手段を駆使するBtoC企業と比べ、たとえ大手であってもBtoB企業のコミュニケーションは限定的であることが少なくない。典型的BtoB企業は営業員というもっとも高コストな販売手段に多大な資源を投入しながら、それ以外のコミュニケーション手段には見向きもしない。だが、さまざまなコミュニケーション手段を組み合わせることで費用対効果を向上させることにもっと目が向けられてもよい。


BtoB顧客の間でWebサイト利用が広がりつつある

ここ2、3年、BtoCユーザーによる企業サイトのアクセスは伸び悩んでいる。それに対し、BtoB顧客のほうは、事業所でのインターネット環境の整備の進展を受けて、Webサイト利用が着実に定着しつつある。

主要な264のBtoBサイトを調査した【1】によると、BtoBサイトユーザーのうち業務目的で各サイトに過去1年以内にアクセスしたことがあるユーザーの割合は、昨年から1.6倍へと大幅に増加している。業種によってアクセス度にばらつきはあるものの、どの業種もおしなべて増加している。もっとも、BtoCの場合がそうであったように、利用度が増加しつつあるここ数年でユーザーにとって価値の高いサイトが選別される可能性がある。今こそBtoB各社の真剣な取り組みが求められているように思う。

【1】ターゲットに占めるアクセス経験者の割合(業務上目的/過去1年以内)(データ:日本ブランド戦略研究所「BtoBサイト調査2008」)
【1】ターゲットに占めるアクセス経験者の割合(業務上目的/過去1年以内)(データ:日本ブランド戦略研究所「BtoBサイト調査2008」)


BtoBの売り上げ貢献度はBtoCの3倍以上

BtoBの売り上げ貢献度を「サイト効果」という指標で把握した【2】。

【2】(データ:日本ブランド戦略研究所「BtoBサイト調査2008」「Web Equity 2007」)
【2】(データ:日本ブランド戦略研究所「BtoBサイト調査2008」「Web Equity 2007」)


サイト効果はふたつの要素からなる。ひとつは当企業の製品・サービスを購入した人のうち、購入に際してサイトを利用した者の割合であり、サイト利用率と呼ぶ。もうひとつはサイト利用者がサイトから得た情報の割合であり、サイト関与率と呼ぶ。サイト効果はサイト利用率とサイト関与率を掛け合わせることによって得られる、売り上げに対して情報面でWebサイトがどれだけ関係したかを示す指標である。調査の結果、BtoBのサイト効果は29.0%となった。BtoCのサイト効果は9%なので、BtoBのほうがBtoCより3倍以上売り上げに対する効果があるという結果となった。

サイト効果を決めるふたつの要素のうち、特にBtoBで高いのはサイト利用率のほうである。BtoCの場合は店頭に直接行ってその場で購入を決めるなど、購入の過程でWebサイトが一切利用されないという購買行動が少なくない。一方、BtoBの場合には購入関与者の多くがWebサイトを参照している実態がこのデータに現れている。


営業代替ではなく、あくまで営業補完

このような議論をすると、今度はWebサイトがあたかも営業員を代替する新たな営業チャネルであるかのようなとらえ方で議論されることがある。しかし、Webで販売が完結することはまれである。多くの場合、あくまで営業員への橋渡しをするための補完的手段である。ユーザーはWebで購入を決定する必要はなく、営業員に問い合わせをするかどうかを決めるための情報が得られれば十分なのである。実際、サイト効果を決めるもうひとつの要素であるサイト関与率ではBtoBのほうがむしろBtoCより低い。BtoCではWebも利用するが、営業員の説明そのほかの情報も重要であり、重要な購入決定要因となっている。

サイト効果が高い業界のひとつに半導体などの電子材料の業界がある。なかでも東芝セミコンダクター社のサイト【3】は業界の中でもっともサイト効果が高いもののひとつである。同社のサイトはECサイトではない。豊富な製品情報やサポート情報は提供しているが、直接は販売していない。しかし、関心を持ったユーザーからの問い合わせにつなげることによってWebサイトとしての役割は十分に果たしていると見ることができるのである。

【3】サイト効果の高い東芝セミコンダクター社(www.semicon.toshiba.co.jp/)
【3】サイト効果の高い東芝セミコンダクター社(www.semicon.toshiba.co.jp/


本記事は『Web STRATEGY』2008年9-10 vol.17からの転載です
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