第16回 Webサイトのロイヤルティ効果に注目する必要がある | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-

第16回 Webサイトのロイヤルティ効果に注目する必要がある

2024.4.25 THU

【サイトリニューアル!】新サイトはこちらMdNについて
榛沢明浩のWEBトレンドナビゲーション


AKIHIRO HARUSAWA
日本ブランド戦略研究所 代表

東京大学法学部卒。北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科博士前期課程修了。コーポレートディレクション、トーマツコンサルティング、デロイトトーマ ツコンサルティング(現アビームコンサルティング)を経て2003年に日本ブランド戦略研究所を設立。おもな著書に「知的資本とキャッシュフロー経営」 (生産性出版)、「図解ブランドマネジメント」(東洋経済)などがある。
url. japanbrand.jp/



第16回
Webサイトのロイヤルティ効果に注目する必要がある



Webサイトでは、従来のアプローチでは容易に実現することができなかった顧客との密接なコミュニケーションを行うことができる。その結果得られる高い顧客のロイヤルティはWebサイトを通じた事業活動の指標としてもっと注目されてよいのではないか。


顧客との関係は購入から始まる

多くの企業において、売り上げを実現することは営業活動の重要なゴールである。マーケティング理論も、いかに売り上げにまでいたるかに注目して構築されたものが多い。

代表的なものとしてAIDMAモデルがある。これはリーチの広いマスメディアを通じて最初に広範囲な消費者の認知を獲得し、そこからいくつかの段階を経て購買にいたらしめるというモデルである。最近Webの分野でよく耳にするAISASも、途中に検索(Search)や共有(Share)というプロセスが介在するものの、認知から始まり購入をゴールとする基本的な枠組みに変わりはない。

しかし、今日多くの商品は消費者がすでに持っているとか購入したことがあるものである。こうした商品の場合、消費者がどうやって認知したかなど、もはや問題ではない。むしろ、すでに購入した状態から企業との関係をとらえたほうが妥当なことが少なくない。


従来は難しかった顧客とのコミュニケーションをWebサイトが支える

自社商品を購入した、ないし所有している顧客とのコミュニケーションの手段は営業員であったり、あるいは店頭や電話であったりするが、こうした従来の「リアル」の手法は費用がかかりすぎて、顧客一人ひとりをきめ細かくフォローするには不都合であった。これに対し、Webを使うことによって、企業は従来よりもより広範囲な顧客と継続的に関係を維持・強化することができるようになっている。

購入者に対する施策は、メルマガの発行や購入後の商品の理解に役立つ情報、キャンペーンなどのおもてなし情報、商品の利用に関する情報、トラブル解決に役立つ情報、自分だけの情報をまとめたマイページなど、さまざまなものがあるが、リアルの資源を投入するより企業にとって負担は少なくてすむことが多い。

もちろん、Webサイトにおいても最終的な問題解決には人的コミュニケーションが決め手となることは少なくない。しかし、日常的な関係が構築されていれば、顧客といざ直接のやりとりが必要になったときも密度の高い対話が可能になる可能性が高い。


携帯電話会社のサイトは高いロイヤルティ効果で事業に貢献している

携帯電話は典型的な「だれでも加入している」サービスのひとつだ。これから新規加入を検討する人は稀少な存在となっている。まして今さら携帯電話というサービスを知らない人など皆無に等しい。携帯電話会社の加入者シェアは、新規に加入する人の動向ではなく、大半を占める既加入者の動向にかかっている。とすれば、携帯会社のWebサイトの事業貢献度を見る場合には、Webサイトを通じてどれだけ新規顧客を獲得したかではなく、どれだけ既存顧客の満足を高め、他社への流出を食い止めたかが重要な指標となってくる。

【1】は携帯3社について、購入後のユーザーによる各社サイトへのアクセス状況と、各ユーザーの継続意向を示したものである。新規契約者の獲得において苦戦を伝えられるNTTドコモだが、既契約者のアクセス率は他社を上回っている。それに加え、アクセス者に占める継続意向者の割合は明らかに他社を上回っている。逆に、話題性のある販売手法で新規獲得を伸ばしているソフトバンクのユーザーのロイヤルティは他社と比べやや低い。NTTドコモのWebサイトは、既存顧客が大半を占める市場の中で、すでに獲得したシェアの維持のため貴重な役割を果たしていると考えられるのである【2】。

【1】購入後のアクセスと再購入意向の関係(データ:日本ブランド戦略研究所「Web Equity 2008」)
【1】購入後のアクセスと再購入意向の関係(データ:日本ブランド戦略研究所「Web Equity 2008」)

【2】NTTドコモのサイト(www.nttdocomo.co.jp/)
【2】NTTドコモのサイト(www.nttdocomo.co.jp/


本記事は『Web STRATEGY』2008年11-12 vol.18からの転載です
twitter facebook このエントリーをはてなブックマークに追加 RSS
【サイトリニューアル!】新サイトはこちらMdNについて

この連載のすべての記事

アクセスランキング

8.30-9.5

MdN BOOKS|デザインの本

Pick upコンテンツ

現在