第9回 顧客接点のすきをつくらない | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
【サイトリニューアル!】新サイトはこちらMdNについて
榛沢明浩のWEBトレンドナビゲーション


AKIHIRO HARUSAWA
日本ブランド戦略研究所 代表

東京大学法学部卒。北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科博士前期課程修了。コーポレートディレクション、トーマツコンサルティング、デロイトトーマ ツコンサルティング(現アビームコンサルティング)を経て2003年に日本ブランド戦略研究所を設立。おもな著書に「知的資本とキャッシュフロー経営」 (生産性出版)、「図解ブランドマネジメント」(東洋経済)などがある。
url. japanbrand.jp/



第9回
顧客接点のすきをつくらない


企業と顧客の接点として、多くの企業が重視するのは営業員や店舗など、顧客と直接やりとりをして購入を決定づける部分である。一方、Webサイトなど顧客からの反応がつかみにく、購入決定要因としての位置づけが不透明なものはとかく軽視されやすい。しかし、顧客はその企業との間にある多くの接点を総合的に判断して購入を決めていることが多い。


情報システム購入者の9割が閲覧

弊社では今年4月初め、企業で情報システムの購入に関与している人たちが、これから調達先として選定しようとしている候補企業のWebサイトをどの程度閲覧しているか、調査を行った。

調査の結果、「必ず閲覧」31%、「だいたい閲覧」29%、「必要があれば閲覧」31%と、実に90%以上の人が候補企業のWebサイトを閲覧していることがわかった【1】。しかも、閲覧目的として「新規取引先の情報収集を行うため」と答えた人の割合が51%と多いのは当然であろうが、さらに「既存取引先について新しい情報を得るため」が46%と、新規取引先とあまり変わらない割合で既存取引先の情報収集が行われているのである。

【1】企業情報サイト内の閲覧コンテンツ(データ:日本ブランド戦略研究所「情報システム購入関与者に対するアンケート)











【1】企業情報サイト内の閲覧コンテンツ(データ:日本ブランド戦略研究所「情報システム購入関与者に対するアンケート)


その背景には、新規、既存にかかわらず起案の際に候補企業の情報を確認する行為が、多くの企業で業務プロセスに組み入れられていることがある。たとえば、稟議書に調達先の正式社名(株式会社が付く位置)や資本金の記入欄があれば、それを埋めるために候補企業のWebサイトで該当項目をチェックしなければならない。


企業情報では多様なコンテンツを閲覧

先の調査では、さらに購入候補企業のWebサイトを閲覧する人のうち、90%近くは会社概要、ニュース、IR情報などの企業情報を閲覧することもわかった。その企業情報の中でもどのコンテンツを閲覧しているかを示したのが【2】のグラフである。

【2】企業情報サイト内の閲覧コンテンツ(データ:日本ブランド戦略研究所「情報システム購入関与者に対するアンケート)










【2】企業情報サイト内の閲覧コンテンツ(データ:日本ブランド戦略研究所「情報システム購入関与者に対するアンケート)


正式社名、資本金などの基本情報が書かれた会社概要と、最新情報をチェックするためのニュースの閲覧が多いのは当然であるが、採用情報を除くそのほかのコンテンツ(経営理念、環境情報、IR情報、CSR情報)もかなりの割合の人が閲覧している。これらのコンテンツが起案のためにどの程度必要なのか、はっきりしたことはわからない。恐らく、候補企業のことをできるだけ理解しようと、さまざまなコンテンツに目を通そうとする人が多いのではないかと思われる。


顧客接点の質がブランド力を左右する

企業と顧客との間には、製品・サービスそのものに加え、営業員などの社員や、店舗、ショールーム、コールセンター、広告、報道などさまざまな接点がある。これらの中で、顧客に対して販売を行うもの、たとえば営業員に対しては企業は多くの経営資源を配分することが多い。

一方、ECサイトなど一部の例外を除けば、Webサイトの販売効果はなかなか見えづらいため、Webサイトに対しては十分な資源配分を行っていない企業は少なくない。

しかし、顧客は営業員の言うことをそのまま鵜呑みにしているわけではない。さまざまな情報をクロスチェックする中で、ひとつの情報源としてWebサイトも閲覧しているのである。

一般に、人はあらかじめ自分が抱いていたイメージに沿って物事を理解しようとする傾向がある。この点を考慮すると、事前に候補企業のWebサイトを閲覧して好印象を抱いた購入担当者は、商談に際して好意的な態度で臨む可能性が高いと期待される。逆に、いったん好ましくない印象を与えてしまうと、意識的あるいは無意識のうちに競合との間で不利な序列をつけられ、それが持続する可能性が高くなる。

企業ブランドを高めるためには、営業体制を増強するなどの高価な施策だけでなく、Webサイトのような企業組織内では目立たないが、まちがいなく顧客接点の輪の一部を形成しているものについてもきちんと取り組む必要があるのだ。


本記事は『Web STRATEGY』2007年9-10 vol.11からの転載です



twitter facebook このエントリーをはてなブックマークに追加 RSS
【サイトリニューアル!】新サイトはこちらMdNについて

この連載のすべての記事

アクセスランキング

8.30-9.5

MdN BOOKS|デザインの本

Pick upコンテンツ

現在