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リーディングカンパニーのWeb戦略に迫る 第2回 サントリー

2024.4.25 THU

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リーディングカンパニーのWEB戦略に迫る


第2回 サントリー







サントリー株式会社
広報部 eコミュニケーショングループ
坂井康文氏


消費者を魅了するコンテンツを展開し続ける
サントリーのWEBへの取り組み


企業Webサイトの全体的な評価を実際のユーザーが行うという、日本ブランド戦略研究所による日本の有力企業250社の企業情報サイトを評価する調査「企業情報サイト調査2005」の結果によれば、食品・飲料メーカーのサイトがトップ10中に7社もランクインしている。さらにトップ5は、すべて飲料メーカーで独占。それほどに飲料メーカーのWebサイトへのユーザーの期待は大きく、利用頻度も抜群に高いといえる。

車や機械製品とは異なり、食品・飲料品に関しては、ユーザーが商品スペックなどの情報を検索するとは考えにくい。したがって、これら飲料メーカーのサイトには、商品以外の魅力的な情報およびコンテンツが存在しているはずだ。

今回は、総合酒類・飲料メーカーの老舗であるサントリー(株)でコーポレートサイトのマネジメントにあたる、広報部eコミュニケーショングループの坂井康文氏にお話をうかがった。

文=仲町六朗 撮影=橘田龍馬



1 Webサイトは企業の顔!
それゆえに品格が必要


Web STRATEGY(以下、WS) 現在、商品カテゴリだけでなく、さまざまな切り口で膨大な情報コンテンツを掲載しているサントリーサイトですが、御社が考えるWebサイトのビジネス的な利用について、まずはお聞かせください。

坂井氏 当社がWebサイトを開始したのは1995年9月とすでに10年前となりますが、その間、Webサイトに期待する役割は変遷しています。現在は、ブランディングツールとしての役割なども含め、大きく3つの視点で考えています。まずひとつめが、コーポレートサイトとしてサントリーの企業活動を消費者の方々に認知・理解していただく手段。インターネットを通じて企業情報を得るというのは、いまや常識ともいえますので、企業情報だけでなく業務内容から社会貢献活動なども含めて広く情報を公開し、サントリーの活動を知って理解いただくという目的を達成する手段としてWebサイトがあります。言ってみれば、Webサイトは企業の顔であり、人格といってもいいかもしれません。

サントリーがWebに担わせたい役割(1)
■サントリーがWebに担わせたい役割(1)
コーポレートサイトとしての役割


WS サントリーの企業活動を理解してもらうということは、まさに企業全体のコミュニケーション活動も包括しているわけですね。

坂井氏 そうですね。当然、ブランディングの一環としてもWebサイト運営はとらえています。今いったようにWebサイトは企業の顔として認知されますので、企業品質を高めるコンテンツ提供を意識しています。

サントリーのコーポレートサイトトップ「サントリー ホームページ」(http://www.suntory.co.jp/)
■サントリーのコーポレートサイトトップ
「サントリー ホームページ」(http://www.suntory.co.jp/


WS 御社のサイトでは単に商品情報を掲載するだけでなく、さまざまな周辺情報をコンテンツ化して掲載していますが、それもブランディングの一環ととらえてよいのでしょうか。

坂井氏 そうですね。ブランディングだけでなく、ファンの育成という側面もあります。飲料品という商品の特質として、商品そのものとメーカーが直結しないという現実があります。たとえば缶コーヒーを飲むときに、サントリーの缶コーヒーを飲もうと発想する方は少ないんですね。ボスを飲もうと考える。要するにボスを飲んでいるときに、サントリーを思い浮かべるというケースは少ないわけです。そこでWebではボスとサントリーをつなぐための役割を担わせる。ボスというキーワードから訪れたユーザーがサントリーという企業のほかの側面を知り、それによってサントリーという企業に共感を感じてくれるようなコンテンツ展開を行う。これによって、長期的サントリーファンを育成していくというのも、Webサイトの大きな役割のひとつと考えています。


2 初期段階から現在まで、
マーケティングツールとして活用するWebサイト


WS なるほど。では、残りふたつの視点はどういったものなのでしょうか。

坂井氏 もうひとつの役割はマーケティング的な活用ということです。新製品へは認知度のアップに重きを置いて展開し、その他の商品は周辺情報を充実させることで、より商品の理解を促進できるような内容を目指して活用しています。これは、ひとつめの役割とも重なりますが、マーケティングという視点においてはマスでは伝えきれない詳細な情報をWebサイトでは伝えることができる。そういったWebならではの特質を十分に生かして、商品を訴求していくという役割を重視しています。また、商品の普及活動としてはキャンペーンなどもありますが、当然そのキャンペーンへの応募ツールとしての利用価値も高いですし、さらに一歩踏み込んで、従来は実現しにくかったコアな消費者(ユーザー)との直接的なコミュニケーション手段としても利用価値は高いと考えています。

サントリーがWebに担わせたい役割(2)
■サントリーがWebに担わせたい役割(2)
マーケティングツールとしての役割


WS マーケティングツールとしてのWeb活用は当初から行われていたのでしょうか。

坂井氏 はい。そうですね。先ほども申しましたように当社Webサイトは1995年に開設いたしましたが、当初は会社案内やプレスリリースを掲載するといった、インターネット黎明期にありがちなコンテンツ展開でした。もちろん当初から商品情報やちょっとした周辺情報も掲載していましたが、プロモーション的な活用はだいたい1997年ごろからでしょうか。はじめはオープンキャンペーンの応募ツールのひとつとして利用しはじめたといった感じです。当時はまだインターネットも普及段階でしたので、オープンキャンペーンの応募手段としてはWebサイトは補助的にとらえていましたが、現在では主要な位置を占めているといえるでしょうね。

WS テレビCMや紙媒体広告などと連動したクロスメディアプロモーションも現在では行われていますね。そのあたりの詳細は後ほどおうかがいするとして、最後の視点とはどんなものなのでしょう。

坂井氏 Webサイトの3つめの役割としては、ビジネス直結型とでもいいましょうか。直接的な営業販売ツールとしての活用です。ただし、飲料品に関してはその商品特性から全商品をオンラインショップで扱っているわけではありません。シングルモルトようなレアな商品がオンライン販売に適していると考えています。また、当社では飲料品以外の商品も販売しており、特に健康食品に関してはオンラインショップを重要な販売チャネルのひとつととらえています。商品によってオンラインショップで扱いやすいものがあると思います。特にサプリなどの健康食品に関しては、商品自体の情報もWebコンテンツでは深く詳細にお伝えできますし、健康食品を通販で購入するというのが消費者にも主要な手段として広まっていますので、販売チャネルとしては重要ですね。

さらに営業支援ツールとしての役割もあります。サントリーグルメガイドのように、飲食店などのお得意先の売り上げアップに貢献できるようなコンテンツも揃えています。

サントリーがWebに担わせたい役割(3)
■サントリーがWebに担わせたい役割(3)
ビジネスに直結した機能性


3 周辺情報を切り口としたコンテンツ展開で
サントリーファンを育成


WS 先ほども少しうかがいましたが、御社のサイトではさまざまな周辺情報をコンテンツ化してメインメニューとして展開していますが、この狙いについてお聞かせください。

坂井氏 まず当社のWebサイトのカテゴライズですが、商品情報だけでもソフトドリンクやビール・発泡酒、ワイン、ウィスキーなどのカテゴリごとにさまざまなコンテンツを展開しています。これらはグローバルナビゲーションの[製品情報]に属しています。グローバルナビゲーションでは、ほかに[知る・楽しむ]、[グルメガイド]といったカテゴリを用意しており、それぞれに役割があるのです。たとえば[知る・楽しむ]というカテゴリには「おでかけサントリー」というコーナーがありますが、これはサントリーが企業活動の一環として行っている各種参加型イベントを紹介するものです。エリアやジャンル、日付などでイベント検索ができるほか、体験レポートなども掲載しています。

ほかにも「文化・スポーツ」「環境活動」「天然水の森」「キッズドリームプロジェクト」といったコーナーを用意し、サントリーが行っている広範な社会貢献活動を消費者の方々にも知ってもらうという役目をおっているのです。

サントリーの製品情報インデックスページ。「製品情報 サントリー」(http://www.suntory.co.jp/products/)。ソフトドリンクや水、ビール・発泡酒、ウイスキーなど製品カテゴリごとにポータルサイトが用意されている
■サントリーの製品情報インデックスページ「製品情報 サントリー」(http://www.suntory.co.jp/products/
ソフトドリンクや水、ビール・発泡酒、ウイスキーなど製品カテゴリごとにポータルサイトが用意されている

イベント紹介コンテンツのひとつ「おでかけサントリー」(http://www.suntory.co.jp/enjoy/event/)さまざまな周辺情報をカテゴリー別に用意することで、商品認知度やサントリーが行っている広範な活動の認知度を向上させる
■イベント紹介コンテンツのひとつ「おでかけサントリー」(http://www.suntory.co.jp/enjoy/event/
さまざまな周辺情報をカテゴリー別に用意することで、商品認知度やサントリーが行っている広範な活動の認知度を向上させる


WS 確かにサントリーホールでのクラシック演奏会などは知っていても、ほかにもこんなにさまざまな社会活動を行っているというのは、Webサイトで初めて知りました。

坂井氏 古くからのサントリーファンであれば、サントリーホールをはじめとしたサントリーの社会貢献についてご存じだとは思いますが、ほかにも幅広い活動を行っていることを伝えるにはWebサイトは非常に有益です。こういった幅広い社会貢献活動を行っているということを伝えることで、社会性を有した企業としてのサントリーの特質をより広範に訴求していくことができると考えています。そして、これによって商品だけでなく、サントリーという企業自体に共感を感じていただき、より多くのサントリーファンを育成するというのがWebサイトの大きな役割だとも考えるわけです。


4 マスではできないプロモーションも
Webなら展開できる


WS では次に、Webサイトをメディアとして考えた場合のサントリーとしての活用法についておうかがいします。

坂井氏 そうですね。Webサイトをメディアとして考える場合、ふたつの側面があると考えていますね。

WS ふたつの側面というと、どういったとらえ方なのでしょうか。

坂井氏 まず、ひとつめはいわゆる媒体というとらえ方です。企業が情報を伝えるメディアを利用するシーンとしては、「広報活動」と「プロモーション」のふたつがありますね。前者は企業広報といったほうがわかりやすいかもしれません。後者は商品の宣伝活動ですね。いずれの場合も、そのとき扱う情報と情報を伝えなければならない状況にあわせて、既存のマスメディアおよびWebサイトを組み合わせて活用することになります。これはケースバイケース。必要に応じて、Webサイトの比重が高くなることもあるかもしれませんが、あくまでもケースバイケースです。

WS 販売する商品や企業活動の詳細情報を伝えるという意味では、Webサイトがもっとも適しているということでしょうか。

坂井氏 それだけではないですね。当社ではさまざまな製品を生産していますが、たとえばボスといったブランド製品であれば、予算的にも大きなプロモーションを仕掛けられますが、製品によってはそれほど大きな予算をかけられないものも多数あります。インターネット黎明期においては、こういった小さな商品はマスメディアに載せるのは難しく、またWebサイトでも情報提供といった程度でしか扱えませんでしたが、現在ではWebサイトを使ってどんな商品でもキャンペーンを展開することが可能です。スポット的なプロモーションも低予算で実現できるわけですから。しかも、深い情報を掲載できますので、コアユーザーへの訴求も可能です。

「ボスtoto」(http://www.suntory.co.jp/softdrink/boss/toto/)。Webを利用してより深いコミュニケーション活動ができるようになった。コアユーザーとブランドの世界観を共有できる有効な手段になっている
■「ボスtoto」(http://www.suntory.co.jp/softdrink/boss/toto/
Webを利用してより深いコミュニケーション活動ができるようになった。コアユーザーとブランドの世界観を共有できる有効な手段になっている


WS もうひとつの側面はどういったことなのでしょうか。

坂井氏 コミュニケーションツールとしてのメディア的な活用ですね。既存のマスメディアを使った広報・宣伝活動は、消費者の認知の出発点と考えています。メディアによって特質は変わりますが、基本的にツールとしては横並びであり、ユーザーとの接点の入り口といった感じでしょうか。そしてそこを出発点としてWebに誘導する。Webサイトでは、より詳細な情報を掲載することができ、さらにマスメディアはできない、消費者とのダイレクトなコミュニケーションを実現できます。もちろんキャンペーンやアンケートといった手法でマスメディアでもコミュニケーションはできますが、Webサイトではダイレクトコミュニケーションが実現できるのです。これは、消費者の動向を直接知ることができるという意味で非常に有益なメディアだと考えられます。

サントリーEニュース(http://www.suntory.co.jp/enews/)。メールマガジンもコーポレート情報の発信手段としてとても重要な役割を果たしている。企業活動など多くの情報を伝えている
■サントリーEニュース(http://www.suntory.co.jp/enews/
メールマガジンもコーポレート情報の発信手段としてとても重要な役割を果たしている。企業活動など多くの情報を伝えている


5 これからのWebサイト展開の課題

WS これだけ膨大なコンテンツを保有するサイト運営について、その管理体制なども含めておうかがいします。

坂井氏 Webサイト開設期からセクションごとにコンテンツ展開を行った結果、ある時期企業サイトとしてはコンテンツに収拾が付かない時期がありました。これは企業イメージを伝えるコーポレートサイトとしては問題がありますので、2001年あたりからコーポレートサイトとしての統一感を持たせるためのレギュレーション作成を行い、それ以降は1年に1回のリニューアル作業と同時にレギュレーションの見直しといった作業を行っています。また、Webサイトには製品ごと、もしくは周辺情報ごとのカテゴリがあり、それぞれにポータル的な展開をしていますが、これに関しては各ポータルオーナーが主管としてコンテンツの企画・制作を行っています。ただし、レギュレーションおよびガイドラインに関しては広報部にて一括管理していくというワークフローを構築しています。

WS コンテンツ管理に関してはCMSなどのツールは利用されているのでしょうか。

坂井氏 CMSについては、過去に導入を検当したこともありますが、ブランディングの一環としてデザイン性を重視していることもあり、また各種ポータルが存在していることもあわせると、全体を統括するようなCMSの導入は現時点では難しいですね。ただ、運用・更新作業の効率性を考えれば、CMSの導入は今後の課題だと認識しています。その際、実験的導入ではなく、費用対効果を十分に検討した導入作業が必要だと考えています。

WS 最後に、今後のWebサイトの活用やコンテンツ展開をどうお考えでしょうか。

坂井氏 Webは、企業の顔としてコーポレート情報発信の中核になってきました。これからも消費者を中心とした全ステークホルダーと、企業理念の共有に役立てられるようにWebを活用していきたいと思っています。また、マーケティング利用に関しては、既存メディアとうまく組み合わせ、最適な活用方法を模索し続けて経験値を蓄積したいと考えています。




役職、部署名、取材内容等は取材当時のものです。


本記事は『Web STRATEGY』2005年 冬号 vol.2からの転載です
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