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バイラルクリエイター養成講座


入門編 第5回 バイラルのケーススタディ

今回は、入門編の最後として、バイラルのケーススタディを紹介していこう。事例として、海外と国内の事例をピックアップしているが、国内事例は皆さんもご存知と思われるので、「これぞ、バイレル」と実感できるはずだ。
解説:バイラルエンジン


[プロフィール]

バイラルエンジン●東京都出身。バイラルディレクター。オフライン・ソーシャルネットワーキング、完全紹介制の覆面クリエイターユニット「バイラルエンジン」代表。カンヌ国際広告賞、Eyeblaster Creative Awards、宣伝会議賞、東京インタラクティブ・アド・アワードなど受賞。世の中のムーブメントは、すべて人が仕掛けている。


自然発生するバイラル

バイラルをきっかけにヒットする商品がここ数年活況である。2ちゃんねるをきっかけに映画化まで発展した「電車男」やヒットソング「恋のマイアヒ」など記憶に残っていることだろう。また、毎日ひとコマずつ連載しているWEB発の人気漫画「きょうの猫村さん」は、数年前から徐々にファンを増やしている。今ではファンコミュニティがSNSで拡大している。

歌舞伎俳優・九代目、中村屋華右衛門の「結婚式スピーチ」は、笑わずに最後まで見続けるのは困難なほど大爆笑できるバイラルムービーだ。あまりのアクセス集中によりサーバがダウンするほどの騒ぎを引き起こした。クイズに正解しないと下車できないというナンセンスなFlashムービー「山手線チャレンジングクイズ」も根強い人気だ。

ある歌手が還暦を迎える日までをカウントダウンするブログパーツ「ヒデキ還暦」などもブログを中心に話題が広がっている。秋葉原を舞台に、カラフルなヒーロー連隊が、地味なビジネスマンを見つけては取り囲む「NikeCosplay」など、バイラルムービーでハートをギュッとわしづかみにするのがうまい。そのサンプルが図17だ。


図17(第1回からの継続図版)

図17(第1回からの継続図版)

海外のバイラル事例「STILL FREE」

大統領専用機に落書きをするバイラルムービーで話題をさらったのは、2006年のカンヌ国際広告賞サイバーライオン・グランプリ「STILL FREE」だ。海外のバイラル事例を見てみると、こうしたバイラルムービーの事例が多く見受けられるが、図18もその例だ。

図18
図18
たとえば、You Tubeにアクセスすると、興味のあるキーワードを入力するだけで、欲しい映像を簡単に探し出すことができる。CMを見たり、おもしろい映像を見たり、好きな言葉をきっかけに欲求の向くままにあれこれ探して見られるわけだ。誰かに話したくて我慢できないような映像が見つかれば、ブログに貼り付けて仲間に広めたり、メールに添付して友達に送ったりしてバイラルが広まっていく。

マス広告では到底不可能なコスト効率で、計算できない広告効果を生み出してくれる。だからこそ、バイラルムービーに企業の視線が熱く注がれているのだ。

国内事例「ダイドーD-1」

2006年、新庄選手の引退表明で野球界が湧いた。マスコミ各社は、新庄選手の引退にまつわる報道を一斉に流した。報道とともに、新庄選手が出演する記者会見風のCM制作が進行していることが報じられた。

ちょうど時期を同じくして、「D-1プレゼンツ SHINJO引退記念キャンペーン」が展開された。引退報道と広告出演とが重なって、D-1コーヒーのPR効果は一気にヒートアップした。店頭では、特別なパッケージデザインのSHINJO引退記念缶が販売された。そして、ブログやSNSなどCGMへと話題が広がっていった。ところが、驚くのはそれだけではなかった。

図19のように、Webサイト上にバイラルムービー「新庄さんはまだですか?」をスタートさせたのだ。それは、You Tubeでも流され、個人ブログを中心に急激にブログへとバイラルが広まっていった。バイラルムービーには、記者会見場で新庄さんの到着を待つ、PRスタッフが登場する。新庄さんの到着を待ちわびる記者たちに、詰め寄られて困り果てる姿がなんともリアルである。

図19

図19
バイラルムービーの広まる要因のひとつは、プロの仕業か、素人の仕業か、わからないようなさじ加減によるクオリティが広まっていく鍵といえる。WEBに接触した人は、誰かに言いたくて仕方なくなる。アクセス効果だけでは測り知れない噂の火種が日常に広まっていく。

生活者を上から見下ろすような企業メッセージではなく、お客様と同じような目線での新たなコミュニケーションが始まっている。バイラル活用は、今後のブランド戦略に大きな効果を発揮しそうだ。

次回につづく
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