バイラルクリエイター養成講座
エキスパート編 第2回 企業はどこへ行く?
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[プロフィール] バイラルエンジン●東京都出身。バイラルディレクター。オフライン・ソーシャルネットワーキング、完全紹介制の覆面クリエイターユニット「バイラルエンジン」代表。カンヌ国際広告賞、Eyeblaster Creative Awards、宣伝会議賞、東京インタラクティブ・アド・アワードなど受賞。世の中のムーブメントは、すべて人が仕掛けている。 |
テレビCM崩壊
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セイコーウォッチは、ルキアのクリスマス商戦において東阪のテレビCM媒体費へ割いていた予算を自社サイトや誘導のための広告出稿などに割り当てるという記事を出した。また大塚製薬は、ファイブミニのテレビCMを昨年は一度も流さず、その代わりに体内怪人キャラクターが登場するキャンペーンサイトを立ち上げた。
2006年は広告の過渡期だった。マス広告の効力が疑問視されるようになり、GRP(GRPはGross Rating Pointの略で広告効果の測定に使われる指標。CM本数に各番組視聴率を掛けた総視聴率)を大量投下すればモノが売れるマス広告神話が崩れ始めた。
ビジネス書籍では、「テレビCM崩壊」と題された本が売れた。CM崩壊というショッキングなタイトルに、マスコミ業界や広告主の間でさまざまな物議を呼んだ。もはやインターネットは無視できない存在となり、それ抜きでは広告が語れなくなったということだろう。
CMの続きはWeb!
富士通FMV「地底人の秘密」、サッポロ冬物語、エッセンシャル「かわいいをつくる.com」、ひかりONE「木梨と木村カエラの絵本プロジェクト」などCMからWebへ誘導するケースが続々と登場した。昨年はCMとWebがもっともコラボした年だったといるだろう。
CMはこれでいいのか。Webの役割はなんなのか。CMからWebは、果たしておもしろいのか。など、広告手法論が語られた年でもあった。AISASを唱えた結果にも思える。みんながみんなそっちを向きすぎちゃった。
クリエイティブ革命
CM崩壊の暗雲が広告業界に蔓延するなかで、バイラルへの期待が高まっていった。感度の高いクリエイターと広告主は、敏感にこれをキャッチしてバイラルにトライアルし始めた。日本型バイラルを模索し始めたのだ。映画配給会社、自動車メーカー、ゲームメーカー、飲料メーカー、化粧品メーカーなどが続々と乗り出した。いくつかの成功と失敗が見られた。
2007年、本格的なバイラルクリエイティブ元年を迎えた。代表的な例では、NIKE、AXE(アックス)とPEPSI NEXなどがある。NIKEはなにしろ新たなマーケティング戦略に果敢である。昨年から続く、NIKE COSPLAYは国内代表する好例といえるだろう。また、男性用フレグランス AXE(アックス)は、海外クリエイティブ作品がカンヌ受賞で話題になった。今年は、いよいよ日本にも製品が上陸するという報道が流れ、すでにCMとWebが急激に、ブログでうわさが拡大している。
一方、日本国内では、コカコーラに比べて圧倒的に広告予算が小さいペプシがWeb(バイラル)で本格的な巻き返しを図り始めた。昨春にWebで仕掛けたバイラルゲームが、ブログやSNSで日本のみならず海外にまでうわさが飛び火し、さらには国際視覚芸術賞W3awardsの銀賞を受賞。製品の気になる売れ行きは、コーラ市場におけるゼロカロリー分野で約半分のシェアに迫る勢いを見せている。コカコーラのマス広告に対して、バイラルクリエイティブで挑むペプシ。日本におけるコーラ戦争の勃発か。