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バイラルクリエイター養成講座


実践編 第3回 バイラルメガホンの投入

バイラルは、ともすればうわさの伝播に時間がかかりがちだ。のんびりとそれを待っていては、広告キャンペーンが成立しない。うわさがブレイクした頃には、商品が店頭から棚落ちしてしまっていては話にならない。このため、広告視点でバイラルクリエイティブを実現するために、バイラルメガホンの存在が必要になってくる。

 
 
 
解説:バイラルエンジン
 
 


[プロフィール]

バイラルエンジン●東京都出身。バイラルディレクター。オフライン・ソーシャルネットワーキング、完全紹介制の覆面クリエイターユニット「バイラルエンジン」代表。カンヌ国際広告賞、Eyeblaster Creative Awards、宣伝会議賞、東京インタラクティブ・アド・アワードなど受賞。世の中のムーブメントは、すべて人が仕掛けている。


バイラルワードの重要性

人から人へとクチコミが広がるとき、個人的な印象や感想などが随時加味されたり、当初の言葉とは違う言葉に置き換わったりしがちだ。とくに商品名が覚えにくく難しいときや、機能用語や効用の説明が難しいとき。また、デザインイメージが印象に残りにくく、キャッチコピーが覚えにくいときなど、いつの間にかインフルエンサーがつくったバイラルワードに入れ替わってしまうことが多々ある。

このバイラルワードが散漫になればなるほど、受け手の印象は曖昧となり、いつの間にかバイラルの勢力が弱まってしまう。バイラルの勢力を強く維持し続けるためには、あらかじめ伝達浸透力をもったバイラルワードを想定して、サイトタイトルやキャンペーンタイトル、キャッチコピーを考える必要がある。
バイラルメガホンの概念図
バイラルメガホンの概念図
たとえば、アイドルが一日駅長を務めてテレビのニュースや情報番組に流れるケースがある。ここでは、一日駅長のアイドルがバイラルメガホンというわけだ。もしも、Webでバーチャル大学を開校するならば、バイラルメガホンになりそうな有名人を大学の学長役に起用して、マスコミ向けに就任イベントを開催するのもひとつの手であろう。
アイドルが一日駅長を務めてテレビのニュースや情報番組に流れるケース。アイドルがバイラルメガホンだ
アイドルが一日駅長を務めてテレビのニュースや情報番組に流れるケース。アイドルがバイラルメガホンだ
たとえば、ヨガマットのCMにあるタレントが登場したとしよう。そのタレントが実はCMに登場する何ヵ月も前から、自身のブログで「最近、ヨガにはまっちゃって」と語り、コアなファン層の間でヨガマットの話題がふくらみ始めていたとしたら、それはバイラルメガホンといえよう。

せっかくのバイラルシーズ(うわさのタネ)があっても、バイラルメガホンを用意しないと広まるのに時間がかかったり、ほかの情報に埋もれてしまったりする。バイラルを広げるきっかけとして、声を大にして誰に言ってもらうか。バイラルメガホンは、バイラルの発端を担う重要な存在である。「火に油をそそぐ」という言葉があるが、そんな油のような存在ともいえる。

事例研究"got milk?"

海外の広告キャンペーン"got milk?"を例に考えてみよう。牛乳の消費落ち込みによる現代人のカルシウム不足など、そうした社会背景を受けて始まったのが、"got milk?"である。93年に開始して以来、十数年続いているキャンペーンで、アメリカでは知らない人がいないほど有名。この"got milk?"が、「宇宙人による牛誘拐」をテーマにバイラル展開して話題になった。
牛を誘拐されて困る酪農家たちの悲鳴がWebに掲載された。どうやら、宇宙人が牛を誘拐しているらしい。そんな事件を裏付けるかのように、UFOが牧場周辺を飛来する証拠写真が続々と掲載された。このとき、まだ誰も"got milk?"キャンペーンであることを知らない。

「牛を誘拐されては大変だ」と対策を講じる酪農家たちは、「ウチは牛にトナカイの角をつけているから大丈夫」「ウチは牛に牧草のような緑色の服を着せてカモフラージュしているから盗まれない」など、涙ぐましい努力をWebインタビュームービーで吐露した。いったい誰が何のためにこんなことを仕掛けたのか、疑問の声がブログに広まっていく。その約1ヵ月後、宇宙人のCMとWebが立ち上がる。牛乳不足で骨がもろくて困っている宇宙人が、牛を連れて帰るという落ちだ。

 

"got milk?"キャンペーンのバイラルメガホン

バイラルメガホンは誰だ?

"got milk?"キャンペーンの登場人物は、宇宙人、牛、酪農家だ。バイラルメガホンはこの中の誰かお分かりだろうか? 宇宙人、牛、酪農家のうち、火に油をそそぐ油のような存在といえばわかるだろうか。答えは、酪農家である。

バイラルメガホンの酪農家 

バイラルメガホンの酪農家
もし、この広告が従来の伝統的な広告手法に従ってつくられたならば、キャンペーンの主役は宇宙人と牛だけだったかもしれない。酪農家は、あくまでもエキストラに近い存在だったかもしれない。

ところが、宇宙人が牛を誘拐するだけのCMをつくるだけでは、もはや誰も振り向かないかもしれない。そこで、「宇宙人が牛を誘拐する」というテーマに対して、「牛を誘拐されて困る酪農家」という存在を登場させることで、人々の注意を引き、振り向かせたのである。

バイラルを成功させたポイントは、酪農家というバイラルメガホンを設定したことにあったといえる好例だ。


次回につづく
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