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バイラルクリエイター養成講座


エキスパート編 第3回 プレゼンテーション

「おもしろいラジオCMを聴いたことが無い人に、おもしろいラジオCMを提案しても伝わらないよ」と広告業界の大御所の先生は言った。その言葉を聞いてハッとした。Webだってそうじゃないか。おもしろいWebを見たことが無い人におもしろいWebの提案をしても伝わらない、とはじめて気づかされた。

解説:バイラルエンジン


[プロフィール]

バイラルエンジン●東京都出身。バイラルディレクター。オフライン・ソーシャルネットワーキング、完全紹介制の覆面クリエイターユニット「バイラルエンジン」代表。カンヌ国際広告賞、Eyeblaster Creative Awards、宣伝会議賞、東京インタラクティブ・アド・アワードなど受賞。世の中のムーブメントは、すべて人が仕掛けている。

プレゼンに説得は必要か?

クライアントへプレゼンテーションするとき、みんなはどうやってWebを説明しているだろうか。競合サイトを分析したり、ログ解析から課題を見つけ出したり、現状のサイトのダメなところを根こそぎ洗い出して良くするポイントを列挙したり、新しいWebマーケティングの理論に従って方向性や役割をまとめたりしているだろうか。

私の場合は、そんなことをやってきた。少しでもおもしろいWebをつくりたいと思いつつも、まずはプレゼンテーションの第一関門を突破するためにさまざまな説得手法を身につけてきた。クライアントをどう説得しようか、そんなことばかり考えていた。ところが、どんなマーケティングデータを引っ張り出したところで、説得はできないことにようやく気づいた。そう思うと、説得話法や企画書づくりがばかばかしいと感じるようになってきた。

見ること&見せること

Web広告業界のアワードを受賞して、Web業界誌にもいくつか採りあげられているようなWebは、わざわざ人に言うまでも無いと思い込んでいた。ところが、そうでもないのだ。どんなに業界で有名で、どんなに優秀なWebと評価を得ていても知らないものは知らない。それは、ぼくがラジオCMを知らないのに近いかもしれない。「去年、一番印象に残ったラジオCMはなんですか?」と聞かれたら、ぼくはきっと言葉が出ない。

おもしろいWebをやろうと思ったら、とにかく見ること&見せることが重要だ。まずは、おもしろいWebをたくさん見て、おもしろいWebをたくさん人に見せること。人に会ったら、おもしろいWebを知っているか聞く。知らなければ、おもしろいWebを見つけてメールを送る。あるいは見せに行く。そうやって、おもしろいWebを少しずつ共有するようにしていくと、なにをしたいか、どこへ向かいたいかが自分の中に見えてくる。
去年、一番印象に残ったラジオCMを一本聞かれたら、あなただったらなんと答えるだろう。誰もがおもしろいという一本を示すことができるだろうか。それとも、たまたま自分が知っていた少ない中で答えてしまうだろうか
去年、一番印象に残ったラジオCMを一本聞かれたら、あなただったらなんと答えるだろう。誰もがおもしろいという一本を示すことができるだろうか。それとも、たまたま自分が知っていた少ない中で答えてしまうだろうか

もしもクライアントだったら?

バイラルは、クチコミを仕掛けることとか、単なるおもしろムービーと思っている人もいるようだが、そうではない。クチコミを仕掛けるよりも、自然に人にしゃべりたくなるかどうかが大事である。人にしゃべる価値があるかどうか。あらゆる広告物が失いかけている基本中の基本ともいえる。人の心を動かすわくわくするようなエッセンスをつくることが、バイラルクリエイティブである。

ところが、どんなにおもしろい提案であっても、素地が無ければクライアントは「わからない」としか言えない。それでも、なんらかいずれかの判断しなければならない立場であれば、企画のメッセージが正しいか正しくないか。消費者に理解できるか理解できないか。ブランドにふさわしいかふさわしくないか。そんなことで選んでしまうに違いない。右脳を無視した左脳的な判断である。バイラルを企画したのに、バイラルしないものができあがってしまうパターンがこれである。

バイラルCMで、単なるおもしろムービーをつくりたい人はつくればいい。でも、バイラルクリエイティブをやりたい人は、あらためてトーカビリティ(人にしゃべる価値)を考えてみてほしい

バイラルCMで、単なるおもしろムービーをつくりたい人はつくればいい。でも、バイラルクリエイティブをやりたい人は、あらためてトーカビリティ(人にしゃべる価値)を考えてみてほしい

説得か、納得か?

ぼくは仕事上、毎月何件ものWebツールやWebデザインの売り込みを受ける。そのほとんどが知人を通じた紹介だったり、個人的に興味をもって直接問い合わせたりした場合である。いずれも、自分たちがつくったWebがいかにいいか、彼らはみんなどうにか仕事を得ようと言葉巧みに説得しようとしてくる。この、説得してやろう、という腹積もりが見えるとげんなりしてしまう。

デザインはデザインのまま見せてくれたらいいのに、プロモーションやブランディングを実現させるためにどうたらこうたらといった過剰な説明してくれるケースが多い。ぼくらはそれほど、Webの中だけで生活をしているわけじゃない。Web特有のマーケティングに、頭でっかちになりすぎてはいないだろうか。

なにかおもしろいモノは無い?というクライアントは多い。ここで言う「おもしろい」というのは、笑わせてくれよ、ということではなく、「心がわくわくするようなネタや目新しいネタはない?」と聞いているのだ。そんなときこそ、バイラルクリエイティブを見せてあげよう。説得するんじゃなく、納得するまで感じてもらうといいだろう。
人から無理やり説得されて気持ちよく思う人はいない。自分が納得して、いいと思ったものを買いたいと思っている。消費者もそう。クライアントもそう
人から無理やり説得されて気持ちよく思う人はいない。自分が納得して、いいと思ったものを買いたいと思っている。消費者もそう。クライアントもそう

次回につづく
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