CGMから考えるWeb制作とコミュニケーション
1 CGM(消費者生成メディア)の隆盛
1.4 日本独特のクローズドSNS
[プロフィール]かとう・ともあき● 株 式会社クリエイティブガレージ インタラクティブコミュニケーションプロデューサー 兼株式会社グロース・パートナーズIRコミュニケーションコンサルタント。市場調査会社でのR&D業 務経験を活かし、1999年よりWebマーケティング、ネットビジネス支援、Eコマースコンサルティングに携わる。プライベートでは、ペットのミニチュア ダックスフントを愛する「つくねパパ」としてblogging。 |
会員数1,000万人を越えたmixi
そういったSNSの使われ方の状況を、日本において最も多くの社会的ネットワークを構築したSNSであるmixi(ミクシィ)のニュースリリースから確認してみましょう。
mixiが産声をあげたのは2004年2月。それから3年ほどたった2007年5月20日に、ユーザー数が1000万人を超えたとの発表がありました。
◆株式会社ミクシィ | プレスリリース:『mixi』、ユーザー数1000万人突破
この発表の中で、
●mixi全体のページビュー(PCからとモバイルからのアクセス合計)は、2007年3月末に月間109億PV(内訳:PCが約69億PV,モバイルが約40億PV)、サイトの月間滞在時間は、3時間15分。(ネットレイティングス社 2007年3月末現在調べ)
●ユーザー年齢層をみると、20代前半がPCからの利用者の33.8%、モバイル(携帯電話)での利用者の42.4%を占める。
といった内容が注目されます。
20代前半においては人口の約1/3がmixiを利用しているといった数字になるとのことで、若者の間では、例えば事件でも事故でもイベント情報でも何か気になることがあったときに、テレビでもラジオでもなく、まずモバイルで「mixi日記」を検索し、最新情報を仕入れるといった行為が日常的に行われている様子が想像できます。
この招待制でなおかつオープンインターネットに対してクローズドであるといった、世界の大規模SNSの中では珍しい独特の機能で出発したmixiが、ここまで利用を拡大できたのは、早くから日記投稿などをモバイル対応させていたことが大きな要因となっていると考えられ、今後、リアルビジネス企業がSNSを活用していくといったことを考えるにあたっても、このモバイル対応は非常に大切な視点となるといえるのではないでしょうか。
SNS機能は、いたるところに
世界最大のネットワークを誇るMyspace(マイスペース)や韓国No.1のSNSであるCyworld(サイワールド)、ブログ併設型のVoxなどが日本でもサービスを開始していますし、また、携帯専用ということでは無料ゲーム利用をサービスの核としたモバゲータウンがユーザーを拡大しています。また、これらの類似サービスもポータルサイトなどから続々と新規提供されるといった状況が続いています。
また、そういった新サービスとは別に、写真や動画共有サイトにはそもそもSNS機能が付加されたものが多いわけですし、ソーシャル・ブックマーク・サービスのPingKing(ピングキング)や、新しいところではStockCafe(ストックカフェ)といった投資情報サイトでもSNS(的)機能が付加されるようになってきています。
コミュニティ形成に企業サイトで運用すべきか、大規模SNSを利用すべきか
ただ、米国のウオルマートが2006年7月に立ち上げたばかりの自社SNS「The Hub」をわずか3ヶ月で閉鎖し、MySpace(マイスペース)に間借りして公認コミュニティを立ち上げたという事例にもみられるように、企業がブランドファン囲い込みのために自社WebサイトにSNSを導入し、コミュニティづくりに成功したという事例は、あまり報告されていないといったところが実状です。
そもそもリアルビジネス企業における長期的なユーザーコミュニティの形成は、その目標設定や効果測定が難しく、また、単にメルマガを配信するなどといったブランド情報提供のためだけでしたら、SNSを活用する必然性はないのではないかとも思われます。
Web担当者としてSNSをとらえる視点
では、リアルビジネス企業がSNSを導入・運用するといったことはありえないことなのでしょうか? 昨今、損害保険会社や通信会社などの大手企業による社内SNS導入でのインナーコミュニケーションの活性化やナレッジの共有といった成功事例がよくニュースなどで見られるようになりました。また、予備校・学習塾など会員型の長期的サービス提供ビジネスにおいては、ユーザー間及び企業とユーザー間のコミュニケーションの円滑化・活性化にSNSが貢献するようになっていくでしょう。
マーケティング以外では、就職内定者専用のSNSを設けたり、効率的な求人・求職情報の交差点としてのSNSが存在するなど、企業をとりまく各種ステークホルダーと企業の接点としてSNSが効果を発揮することが考えられます。
このようなところから企業の公式Webサイトを入り口とした有効なSNSの活用法が、今後開拓されていくのだろうと考えられます。