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CGMから考えるWeb制作とコミュニケーション

3 CGMと企業Webサイトのあり方

3.2 情報投下・発信+「対話」へ

会社概要などを載せた典型的な企業サイトのプロモーション施策として、頻度の高い優良コンテンツの更新は重要です。ただ静的な情報をサイトにUPする図書館型のサイトでは、折角の更新も効果があまり期待できない時代になりつつあります。「更新頻度の高い企業サイト=企業が動的な対話をするサイト」といった考え方にもつながりそうです。

解説:加藤 智明(つくねパパ)



[プロフィール]かとう・ともあき● 株 式会社クリエイティブガレージ インタラクティブコミュニケーションプロデューサー兼株式会社グロース・パートナーズIRコミュニケーションコンサルタント。市場調査会社での R&D業務経験を活かし、1999年よりWebマーケティング、ネットビジネス支援、Eコマースコンサルティングに携わる。プライベートでは、 ペットのミニチュア ダックスフントを愛する「つくねパパ」としてblogging。


「ウィキスキャナー」で露呈した行政の"コミュニケーション欲求"

インターネット上のフリー百科事典である「ウィキペディア(Wikipedia)」のことは、皆さんもよくご存知でしょう。

Wikipedia

誰でも自由に執筆・編集ができるオンラインの無料百科事典「ウィキペディア日本語版」は、現在、40万件以上の項目・閲覧利用者は700万人を超すところまでに成長しているとのことです。
このウィキペディアの項目を編集した組織や企業がわかるツール「ウィキスキャナー(WikiScanner)」の日本語版が今年8月末に登場しました。

どの組織がウィキペディアを編集しているのか
どの組織がウィキペディアを編集しているのか


このウィキスキャナーを利用して、行政機関からのアクセスによるウィキペディア項目の編集履歴をみると、総務省や文部科学省、宮内庁などからさまざまな内容について編集があったことが判明したため、ネット系のニュースメディアからはじまり、大新聞までもが一面にとりあげるなど、話題となりました。

それらのニュース記事に対するソーシャル・ブックマーク・サービスでのネットユーザーからのコメントをみると、「これはひどい」「仕事しろ!」などの執務態度・世論操作意識を否定するものから、「気持ちはわかる」などの擁護論まで喧々諤々の状況となっています。

各省庁では「公用パソコンの業務外使用は、訓令や内規違反にあたる」という基本スタンスのようで、省庁内からのウィキペディアへの書き込ができないようにシステム的に対応する方向で収拾が図られている様子ですが、その行為者が広報担当であったならとか、その行為が自宅やネットカフェから行なわれたのならとかを考えていくと、そういった情報システムでの機械的規制による収拾策が、行政広報として望ましいものなのか?という疑問も残ってしまいます。

また、今年の2月~3月にかけて、経済産業省の消費経済部長が、個人で開設したブログ上で、業務案件をわかりやすく解説するエントリーを掲載していたところ、ブログ更新が平日の勤務時間内だったため「公務中の更新は問題」となり、結局、そのブログは閉鎖せざるを得ない状況になったことも、記憶に新しいところです。

上記の、公務員によるウィキペディアの編集や実名ブログの運用については、みなさんはどのような意見をお持ちでしょうか?匿名・実名の問題はあるにせよ、公務にかかわる広報・公聴を公務中にCGM利用で展開することについて、頭ごなしに規制してしまうことは、行政広報のあるべき姿からすると、かえってマイナスのなるのではないかというのが、私の基本的な見解ですが、いかがでしょうか?

市民も公務員個人もメディアを持つ時代のコミュニケーションのあり方について、法律が追いついていないように考えられるのです。


企業は公式サイトで、いかに"コミュニケーション"すべきなのか


さて、企業サイトの話に戻しましょう。国家公務員法の職務専念義務にあたるような法律をもたない企業の場合、社員個々はどのように、広義のコーポレートコミュニケーションに関っていくのが望ましいのでしょうか。さまざまなCGMで社員が企業人として会社やビジネスやパーソナリティを語ることに対しては、日本のリアルビジネス企業は、明確に規制するスタンスをとっているところが多いようにも思えます。

ただ、パソコン通信時代のフォーラムのころから、ネット上のブランドコミュニティやファイナンス掲示板などには、関係社員による「なりすまし」参加の例は、よく語られていましたし、また、飲食店や宿泊サービス業においては、お客さんのCGM上でのレビューに直接答えている例がみられるなど、「ユーザー参加型マーケティング」が求められる業種から、Web上での「オープン化」「フラット化」への取り組みは徐々に始まっているようです。

また、最近は、企業や行政自らが公式Webサイトで、不祥事までにはいたらぬネガティブ情報を積極的に公開したり、お詫びをこまめに掲載する例も多くみられるようになりました。

「消費者による選択・監視~事業者のネガティブ情報の公開~」について(国土交通省が保有するネガティブ情報等の公開のあり方に関する報告書)

信頼回復への取り組み/損保ジャパン:「お客さまからの苦情」の開示について

JAL - 【お詫び】操縦室内での写真撮影について


静的な情報投下・配信から、「対話」へ


よく、「Webでのコミュニケーションって、ダイナミックさに欠ける。」とか、「それは、マス広告もしていない小さな会社にはウケるだろうね。」といったコメントをいただくことがありますが、Webサイトは企業の広告活動における使用メディアのひとつではなく、「ダイナミック(動的)なコミュニケーションができる」有効な自社コミュニケーションツールと位置づけることが肝要といえましょう。

また、「ユーザーからのコメント・問い合わせに、いちいちWeb上で答えていたら、いくら時間があってもたりない」「企業サイトが炎上したら、どうする?」というコメントもよくいただきますが、企業サイトでのダイナミック(動的)なコミュニケーションとは、ユーザー個々への対応のオープン化・コンテンツ化とイコールではないと考えるべきではないでしょうか。

日々、アクセス解析やWebでの評判・引用のされかたを把握する中で、企業の公式情報をいかにコンテンツ化しタイムリーに掲載し、また、その反応も把握していくといった、管理ではなく運用のマネジメントが必要となることでしょう。

そういったサイト運用の中から、公式コンテンツとして社員個々の情報発信をどのように取り扱うのかといったところまで、管理するのが企業のWeb担当者に求められるともいえます。

抽象的なこと・難しいことを言っていると思われるかもしれませんが、上記のようなコミュニケーション実現のための手法について、次回から、具体的にお話を進めていきたいと思います。次回のテーマは「ビジネスブログ」について、となります。


次回もお楽しみに!!
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