CGMから考えるWeb制作とコミュニケーション
2 CGMがもたらすリアルビジネスへの影響
2.5 企業とユーザーの関係性の変化
[プロフィール]かとう・ともあき● 株 式会社クリエイティブガレージ インタラクティブコミュニケーションプロデューサー兼株式会社グロース・パートナーズIRコミュニケーションコンサルタント。市場調査会社での R&D業務経験を活かし、1999年よりWebマーケティング、ネットビジネス支援、Eコマースコンサルティングに携わる。プライベートでは、 ペットのミニチュア ダックスフントを愛する「つくねパパ」としてblogging。 |
「お客様は神様」ではいけない時代に!?
CGMの発展により、商品の素材・成分・品質・使い勝手などまでよく理解した上で、確信をもって購入に及ぶユーザーが増えることが予想されます。また、最も安く買える場を知る術やコストパフォーマンスをはかる術を得たユーザーは、定価やメーカー小売希望価格・売価といったものに厳しい目をむけることになります。
また、従来は死に筋として店頭では接触することはなかった商品情報も獲得することになり、自分にとっての最適なものを選べるようになった消費者は、各種マーケットにおいて、カスタマイズ性やオーダーメイド対応といった付加価値づくりへの対応を企業に求めることにつながっていくことでしょう。
このように、「商品選択における全ての決定権がユーザー側にあるといった状況」へと、CGM時代は導いていくとも考えられるのです。
主として広告という舞台で、着飾った「こう見られたいブランド像」を発信しつづけ、「お客さまは神様ですぅ」といった合言葉のもと、企業とユーザーが乖離していることを前提にしたコミュニケーションをするよりも、ブランドの裸の姿をもっと見えやすいようにユーザーにも舞台にあがってもらうとか、レントゲン写真まで配るといった態度をとるブランドが共感を呼ぶ(売りにつながる)ことが多くなるのでしょう。そうです、CGMの隆盛は、企業にますますオープン化・フラット化を要求してくるのです。
企業のコミュニケーション活動(管理)にもとめられる方向性は?
CGM登場以前のコーポレートコミュニケーション統合の考え方
「ピラミッド型組織からフラット化組織へ」「マスマーケティングからナノマーケティングへ」「トップダウンから創発(*1)へ」といったように、企業からの情報発信(管理)・企業のコミュニケーションのあり方に関しては、リアルビジネス企業も試行錯誤の状態といえましょう。
個人情報保護の観点からも情報セキュリティの重要性が叫ばれている昨今、社内情報環境を閉鎖的にする事例も見受けられます。隠蔽体質が企業の不祥事に結びつきやすくなっている中、オープン化・フラット化と情報セキュリティマネジメントの両立を図っていきたいところです。ただ、大企業であればあるほど、歴史のある企業であればあるほど、それを解決していくためのハードルは高いのかもしれません。
創発(そうはつ、emergence)とは、部分の性質の単純な総和にとどまらない性質が、全体として現れることである。局所的な複数の相互作用が複雑に組織化することで、個別の要素の振る舞いからは予測できないようなシステムが構成される。