
CGMから考えるWeb制作とコミュニケーション
5 話題性・評判を「目標」としたコミュニケーション管理
5.3 企業の不祥事発覚時のWebと広告
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[プロフィール]かとう・ともあき● 株 式会社クリエイティブガレージ インタラクティブコミュニケーションプロデューサー兼株式会社グロース・パートナーズIRコミュニケーションコンサルタント。市場調査会社での R&D業務経験を活かし、1999年よりWebマーケティング、ネットビジネス支援、Eコマースコンサルティングに携わる。プライベートでは、 ペットのミニチュア ダックスフントを愛する「つくねパパ」としてblogging。 |
企業の不祥事発覚とその背景
企業の不祥事の発覚は、今年に限ったことではありません。ここ数年で起きたものだけを拾っても、以下のように分類できるほどの不祥事がカウントされます。
● 食品関連・・・雪印集団食中毒事件(雪印乳業)、雪印牛肉偽装事件(雪印食品)、不二家消費期限切れ原料使用問題、ミートホープ牛ミンチ偽装事件(ミートホープ)、赤福餅製造日偽装問題(赤福)、白い恋人問題 等。
● 製品の不具合など・・・三菱リコール隠し(三菱自動車工業)、三菱ふそうリコール隠し(三菱ふそうトラック・バス)、湯沸器死亡事故(パロマ、リンナイ)、ナショナル石油ファンヒーター欠陥問題(松下電器産業)、エレベータ死亡事故(シンドラーエレベータ)等。
● マスコミの不祥事・・・NHKの不祥事(紅白歌合戦番組制作費着服事件など)(日本放送協会(NHK))、TBS連続不祥事(TBS)、『発掘!あるある大事典』捏造事件(関西テレビ放送)、朝日新聞の新党日本に関する捏造事件(朝日新聞社)等。
● 交通機関の重大事故・・・JR福知山線脱線事故(西日本旅客鉄道(JR西日本))等。
● 個人情報流出事件・・・「ジャパネットたかた」、Yahoo!BB顧客情報漏洩事件(ソフトバンクBB)、大日本印刷個人情報流出事件 等。
● 保険金不払い問題・・・(多数の保険会社)
● 消費者金融の強引な取立て・・・アイフル 等。
これら企業の不祥事の中には、特定社員による突発的な事件・事故もありますが、多くは、長年の内部統制の不備や隠蔽体質に起因しているもので、これらが、最近になって一気に明るみにでてきているといえましょう。この背景には、企業と社員との関係のあり方が変化し「内部告発」への障害が低くなってきたことや、CGM等従業員やユーザー自身もメディアを持つようになったことなどが要因として存在しているとも考えられます。
仮に不祥事が発生したとしても、世間の目から隠しとおせたならば、組織にとっての評判リスクや役員に対する責任追及等のリスクの顕在化は抑えられることになりますが、もう「臭いものには蓋をする」ことでは通用しない、企業の火消し広報にもオープン&フラットな組織体制が求められる時代となっているといえると考えられます。
企業の不祥事発覚後の広告自粛とWebサイト
さて、不祥事が明るみになると、企業はよく広告自粛を行ないます。ちょっと検索するだけで、企業の不祥事発覚後の広告自粛の例は、以下のようにいくつもあげることができます。
● 「ジャパネットたかた」は、顧客情報の漏洩で営業を自粛。高田明社長もテレビへの登場を自粛。(2004年)
● 尼崎JR脱線事故を受け、JR西日本は事故後、単体のテレビCMを自粛。神戸線や宝塚線(福知山線)を含む京阪神の主要路線の駅などで実施していたスタンプラリーを見送り。福知山支社(京都府福知山市)は、但馬地域など兵庫県内の旅館での昼食と特急切符をセットにした夏休み向け商品を販売しているが、折り込み広告などは控えた。(2005年)
● 強引な取り立てなどの違法行為を理由に、金融庁が消費者金融のアイフルに業務停止命令を出したことを受けて、消費者金融業界が全体的に広告出稿を自粛。(2006年)
● 「不二家」広告自粛で、札幌市のペコちゃん路面電車姿消す(2007年1月)
● 朝日新聞社は、写真記者の記事盗用問題を受け「ジャーナリスト宣言。」と題した企業イメージの向上を図る広告キャンペーンを自粛。(2007年2月1日~)
不祥事にも、その企業の存続にかかわるような重大なものから、従業員個人の不適切な行為までレベルはいろいろあり、自粛すべき企業活動内容の判断はいろいろあってよいのですが、広告特にテレビコマーシャルの自粛は、企業の「身を正した姿勢」を表すには効果的ということなのでしょう。それだけ企業自身や社会・マスメディアも、広告は訴求力のある社会との接点として認めてきた証ともいえます。
また、最近では、企業や行政自らが公式Webサイトで、不祥事までにはいたらぬようなネガティブ情報を積極的に公開したり、お詫びをこまめに掲載していこうとする取組例がみられます。
●損保ジャパン-「お客さまからの苦情」の開示等信頼回復への取り組み
●JAL - 【お詫び】操縦室内での写真撮影について
● 「消費者による選択・監視~事業者のネガティブ情報の公開~」について(国土交通省が保有するネガティブ情報等の公開のあり方に関する報告書)

不祥事発覚で自粛対象の矢面に立たされる「ハレ(非日常)の情報発信」としての(テレビ)広告と、自らのネガティブ情報を公開する「ケ(日常)のコミュニケーション」としての公式Webサイト。今後は、こんな役割が続いていくのでしょうか?
不祥事発覚でWebサイトまでをも閉じてしまう企業と、すべてのコンテンツを消しお詫びだけのせる企業、また、製品回収に向けすべての広告を中止しWebも製品回収のための専用告知に活用する企業など、企業によってWebサイトの位置づけはいろいろといったところが現状です。
広告も、地に足の着いた営業・業務(行為)として企業側が認識しているのなら、そう簡単に「自粛」の対象にはしなくてもよいのにと思いますが、広告とはある意味、余裕のある企業のみがなせる業でしかないのでしょうか?営業停止でもない限り、簡単には自粛できないだけの機能を、広告には発揮してもらいたいとも思います。
CGM隆盛の昨今、広告自粛だけでは風評を治めるのが容易ではなくなり、マスコミ対策というよりも普段のコミュニケーション・リレーションシップが、企業の(火消し)広報にも大切になってきているということも考えられましょう。




