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CGMから考えるWeb制作とコミュニケーション

2 CGMがもたらすリアルビジネスへの影響

2.1 シェアリングエコノミー(共有型経済)

CGMが牽引する「リード/ライト」インターネットの登場は、既存のプロのクリエイターとアマチュアの境界線をあいまいにし、かつプロのクリエイターと消費者をつなぐメディア構造をもすっかり変えようとしています。CGMがもたらすリアルビジネスへの影響としては、著作権をはじめとした知的財産権を守っていかに企業の利益に結びつけるかといった従来の「All Rights Reserved」のビジネスモデルとは違った動きを、まず、あげることができます。

解説:加藤 智明(つくねパパ)


 


[プロフィール]かとう・ともあき● 株 式会社クリエイティブガレージ インタラクティブコミュニケーションプロデューサー兼株式会社グロース・パートナーズIRコミュニケーションコンサルタント。市場調査会社での R&D業務経験を活かし、1999年よりWebマーケティング、ネットビジネス支援、Eコマースコンサルティングに携わる。プライベートでは、 ペットのミニチュア ダックスフントを愛する「つくねパパ」としてblogging。


著作物のコピーや再配布の許可を与えるクリエイティブ・コモンズ

今年の3月末、「WEB2.0の未来 ザ・シェアリングエコノミー」という一冊のムックが、インプレスR&Dより発売になりました。

WEB2.0の未来 ザ・シェアリングエコノミー | Impress R&D

このムックは、2006年9月に開催されたデジタルガレージ主催のカンファレンス「THE NEW CONTEXT CONFERENCE2006(The Future of Web2.0)」の講演内容をまとめたもので、スタンフォード大学ロースクール教授のローレンス・レッシグ氏や慶應義塾大学環境情報学部教授の村井純氏などが「インターネットの未来への論点」を語り、Joi(伊藤穰一)が解説を加えています。また、「セカンドライフ」や「ラスト・エフエム」等の企業トップが自社のビジネスを詳しく解説もしてくれているので、内容的にもおすすめの一冊です。

ただ、なんといっても注目すべきは、この本の原稿テキストが「クリエイティブ・コモンズ」のライセンスにもとづき、その原稿(テキスト部分)が、上記の公式サイトで公開されていることです。

先日日本でもサービスが開始された「Google ブック検索」をはじめ、アマゾンの 「なか見!検索」やネットでの「立ち読み」など、販促目的で原稿(の一部)をネットで公開する書籍は、珍しくなくなっていますが、編著者が、(1)原著作者のクレジット表示、(2)営利目的の利用ではない-という条件付きで、掲載されている文章の複製や二次利用を認めるのは、出版ビジネスモデルとして異例なことといえましょう。

クリエイティブ・コモンズで自由に使えるコンテンツを探す

クリエイティブ・コモンズは、スタンフォード大学ロースクールのローレンス・レッシグ教授らによって設立された非営利目的の団体で、文章や音楽、画像、ビデオといったオンライン上のコンテンツを対象に、「クレジットの表示」「商用利用の禁止」など各々に設定された条件のもと、その著作物の共有(使用)や再配布の許可を与えるクリエイティブ・コモンンズ・ライセンスの整備を行っています。
日本では、2003年にNPO法人「クリエイティブ・コモンズ・ジャパン」が設立され、以下のサイトを中心に、ライセンス発行ツールの日本語化や日本の著作権法に則したローカライズなどが行われています。

Creative Commons Japan - クリエイティブ・コモンズ・ジャパン
Creative Commons Japan - クリエイティブ・コモンズ・ジャパン

このクリエイティブ・コモンズ・ジャパンのサイトの「探す」のメニューを経由すると、インターネット上の自由に使えるコンテンツ(文章・音楽・画像・ビデオなど)を、GoogleやYahoo!のサーチエンジンを利用して探すことが可能となります。

また、音・教育・映像・画像・文章などのジャンルごとに「素材集」へのリンクもつくられています。それぞれのコンテンツごとに利用・加工・変更などの条件が指定されていますので、利用にあたっては注意が必要ではありますが、サイト制作や動画づくりなどにも有効に活用できるのではないでしょうか。

企業に求められる?シェアリングエコノミー(共有型経済)との共生

「WEB2.0の未来 ザ・シェアリングエコノミー」(インプレスムック)において、クリエイティブ・コモンズの提唱者であるローレンス・レッシグ氏は以下のように語っています。

『もちろん私が主張する内容は、海賊版を推奨するものではないし、市場を破壊しようとするものでもない。課題は、あくまで「商取引」と「共有」のバランスなのだ。なにも、ブリトニー・スピアーズの音楽に無償でアクセスすることを考えてくれ、といっているのではないのだ。無償のコンテンツをどのように提供していくかではなく、二つの経済をどのように融合させるかが課題なのだ。』
出典:ローレンス・レッシグ『WEB2.0の未来 ザ・シェアリングエコノミー』(インプレスムック)

二つの経済とは、著作権をはじめとした知的財産権を保持することにより利益確保を追及する(企業が「All Rights Reserved」を売りにする)「オールドエコノミー」と、「シェアリングエコノミー(共有型経済)」のことを指しています。

あらゆるコンテンツの「使用」がコピーを生んでしまうデジタルの世界、そして「リード/ライト」インターネットは、全てのユーザーにあらゆる著作物へのアクセスを可能にし、自由な表現の機会を与えています。

その自由な表現の機会をできるだけ奪わずに、かつ折角の企業の著作物をパブリックドメイン(「No Rights Reserved」)化させてしまうのではなく、ビジネスとして成立させるために、クリエイティブ・コモンズの「Some Rights Reserved」精神をいかに取り込んでいくかということが企業活動の課題となる時代をも、CGMの隆盛は導きつつあるといえましょう。

次回もお楽しみに!!
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