CGMから考えるWeb制作とコミュニケーション
3 CGMと企業Webサイトのあり方
3.4 企業によるコミュニティ運営
CGMというとミクシィなどのSNSを思い浮かべ、コミュニティというとそれらの「公式コミュ」を思い浮かべられる方もいらっしゃると思います。企業によるコミュニティ運営はCGM登場以前から行なわれていたことですが、CGM登場により本質的にどのような変化が起きているのでしょうか?
[プロフィール]かとう・ともあき● 株 式会社クリエイティブガレージ インタラクティブコミュニケーションプロデューサー兼株式会社グロース・パートナーズIRコミュニケーションコンサルタント。市場調査会社での R&D業務経験を活かし、1999年よりWebマーケティング、ネットビジネス支援、Eコマースコンサルティングに携わる。プライベートでは、 ペットのミニチュア ダックスフントを愛する「つくねパパ」としてblogging。 |
企業による顧客組織化とコミュニティ運営
例えば、RV車などでは「●●●クラブ」に入会すると、会報が配られ、専用ステッカーが配布されたり、クラブ会員のみのオートキャンプイベントが開催されたりといったことがよく行なわれていることと思います。
このような企業による顧客の「クラブ化・組織化・会員化」の事例は、それ自体がブランド広告表現素材となった例もあったとは思いますが、企業のマーケティング(ブランドコミュニケーション)予算で、顧客維持・マインドシェア獲得を主目的として展開されたものが多かったと考えられます。原則的は、企業がより深いブランド情報やブランド体験を顧客に提供するための組織化が多かったといえましょう。
その後、CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)の名のもとに、「クロスセル・アップセル」「人生の節目需要の創造」「アフターマーケットの創出」などといった販促リコメンデーション目的も手伝って、顧客情報取得・分析のための企業による顧客組織化が、活発に行なわれました。ダイレクトメール・メルマガにはじまり、カード会員化・ポイントプログラム(FSP)・マイページの提供・ワンツーワンリコメンデーションなど、この数年で、一挙に普通のこととなってきました。
SNSやサークル作成ツールなどのコミュニティ形成ツールが登場し、それらにより顧客の組織化の仕組みづくりができる環境が整い、顧客維持・マインドシェア獲得・クロスセル・アップセル・人生の節目需要の創造・アフターマーケットの創出、ひいてはLTV(ライフタイムバリュー)の創出を目的とした顧客組織化の展開は、仕組みを作る上では容易になってきたことといえるでしょう。
ただし、これらを目的にした企業による顧客の組織化も、予算年度を越えないと効果がわからなかったりすることで、リアルビジネスの消費財メーカーによる顧客組織化の成功事例は、なかなか挙げられないのが実情なのではないでしょうか?
この顧客組織化と、CGM(リード/ライトインターネット)時代の企業によるコミュニティ運営の違いはどのようなことなのでしょうか?
効果測定が難しいコミュニティ運営
このユーザー評価の共有と話題づくりの機能をあわせ、以下のような、製品開発からプロモーションまでのマーケティングプロセスを当該コミュニティ内で実現する例がみられるようになりました。
もともと生産財・産業財では、古くからユーザーが参加した製品開発があったわけですが、いま消費財でも消費者参加型商品開発が現実味を帯びてきています。
リアルビジネス企業による消費者参加型商品開発ともいえる事例としては、下記の通りです。
●オイシックスが、ネットユーザーの声を集めて企画しブログで開発状況をレポートした「ご褒美リッチマンゴープリン」。
●MP3レコーダー(ヤマハ「ミュージックイークラブ」)
この中で、下記のようなポイントをあげていらっしゃいます。
1)運営の目的を明確にする
2)ROI指標を決める
3)リソースを確保する
4)経営陣に支援者を確保する
5)エバンジェリストが運営する
6)終了時のやり方を決めておく
リアルビジネス企業によるオンラインコミュニティ運営のために、非常に参考になる情報と思われます。
2004年から2005年にかけて、コミュニティ形成目的で、リアル企業によるSNSの提供も多く展開されましたが、うまくいっている話はあまり聞けていない状況です。
キャンペーンとしてのコミュニティ運営は別として、企業が、公式サイトでオンラインコミュニティを継続的に運営していくためには、かなりの覚悟がと計画性が必要ということになります。