CGMから考えるWeb制作とコミュニケーション
5 話題性・評判を「目標」としたコミュニケーション管理
5.4 IRと投資家向けカテゴリーページ
[プロフィール]かとう・ともあき● 株 式会社クリエイティブガレージ インタラクティブコミュニケーションプロデューサー兼株式会社グロース・パートナーズIRコミュニケーションコンサルタント。市場調査会社での R&D業務経験を活かし、1999年よりWebマーケティング、ネットビジネス支援、Eコマースコンサルティングに携わる。プライベートでは、 ペットのミニチュア ダックスフントを愛する「つくねパパ」としてblogging。 |
個人投資家の重要傾向
ライブドア事件以降、外資系ファンドなどによる買収なども目立つようになったことも手伝って、金融機関や取引先企業を中心とした「安定株主」づくりの傾向が再びみられているようですが、インターネット上でのオンライントレーディングの普及・一般化、企業同士の持ち合い株の売却の動き、銀行の財務内容が悪化に伴う融資先企業の株式の売却、時価会計・財務の健全化の要請などを背景に、バブル経済崩壊以降、個人投資家が保有する上場企業株式の割合は依然高水準となっています。
単元株の引き下げ・株式分割を行なったり、株主優待制度を導入したりして、個人投資家向け対策を講じている企業も依然多いようです。
従来、企業のIR担当の仕事というと、ディスクロージャー(情報開示)や機関投資家を対象としたリレーションシップ活動となっていましたが、いよいよ個人投資家を意識した施策の展開が迫られ、情報提供・情報開示にとどまらない本来的なIRをロングテール対象に実施しなければならない時代に入りつつあるといえるのではないでしょうか。
既に、個人株主専用の電話相談、IR説明会の実施といった具体的な施策例が見受けられますが、こと企業サイトでは「IRのページ」「投資家の皆様へ」において「個人投資家の皆様へ」のコーナーを設けているとしても、いまだ情報提供・情報開示にとどまっているところが多いようです。
「PR/IRの融合」とサイトのあり方
IRの目的は「資本(調達)コストの低減」や「適正株価の形成」などとよく言われます。ただし「短期的な株価の値動き」と「良好なIR」との因果関係を証明することは至難の業ですし、また、投機をあおるようなコミュニケーションはIRの本質から外れることもあり、IRはよく効果測定が難しいと言われています。それゆえ、IR予算やIR担当者人数の制約に結びつき、義務化された情報開示だけで精一杯といったIRの実情もよく耳にします。
また、いくら企業が個人株主重視と叫んでみたところで、個人投資家には、その日その日の値動きに応じて株の売買益をねらうデイトレーダーが多い実情の中、なんとか潜在株主の裾野を広げるとともに、「個人投資家を安定株主化」させることによって、株価の安定ひいては買収防衛にもつなげるといったIR目標を改めて見出し、それを目標にしたIR活動が要請されつつあり、IR担当の負荷も大きくなっていることでしょう。
「キャピタルゲイン(売却益)よりもインカム・ゲイン(配当益)を重視する環境整備」とともに、「企業の理解度・信頼度・好感度向上」といった広報・PRとも共有できる目的が、個人投資家向けIRには明確に課せられるようになってきている風潮です。
実際、IR担当部署は、従来の総務部や経理財務部中心の組織ではなく、広報部や経営・企画部、社長室においている企業も増えてきているとはいえ、上記のような目標達成のためには、企業の長期的なブランド戦略の一環として、PR(パブリック リレーションズ)と融合したIRが求められ、場合によってはマスメディアとのメディアリレーションとともに、OWNメディアであるWebサイトでのコミュニケーションに関しても、PR担当とIR担当が連携することが戦略達成には必要となってきているのではないでしょうか。
さて、こういった状況を鑑みると、企業サイトの「個人投資家向けコンテンツ」や、Webコミュニケーションにおける個人投資家向けIRの効果測定のあるべき姿を考えることが重要となってくることでしょう。
ディスクロージャーから本来のリレーションズへ
ブログの導入などは一見すると、IRのCGM対応のようにも感じてしまいますが、実際には「B to C」「1 対 多」のコミュニケーションの延長であったり、「1 対 1」コミュニケーションへの窓口機能であったりで、「B to C to C」「多 対 多」のコミュニケーションまでには至っていないものが多いようです。
これはIRだけに限ったことではなく広報・PRにもあてはまると思われますが、Webをプラットフォームとした評判把握や「話題性」発生を目的としたコミュニケーション管理が実現されているところはほとんどないのではないでしょうか。
マーケティングにおける「B to C to C」「多 対 多」コミュニケーションへの取り組みからすると、具体的なコミュニケーション施策としては、
● 株主をエバンジェリスト、インフルエンサーと位置づけた企業情報の伝播
● Web上での、株主コミュニティへの企業としての参画・発言
● PDFデータや動画コンテンツのソーシャルメディアへの配信
● IRコンテンツのリンク引用・ブックマークを促すSMO(ソーシャルメディア最適化)
● 株主と従業員・IR担当者とのオープンなコミュニケーションの場の提供
● クローズドSNSなどでのIR担当者と株主とのネットワーキング
● 「話題性」を目的とした広告コミュニケーション管理
● Web上での評判把握とそれに応じた、更新頻度の高いWebサイト運営
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などが、あげられましょう。
コンプライアンス遵守が大切なことはもちろんなのですが、昨今では、下記「ストックカフェ」のような株式投資コミュニティを活用した「企業のIR支援サービス」も提供されるようになってきています。