CGMから考えるWeb制作とコミュニケーション
2 CGMがもたらすリアルビジネスへの影響
2.3 広告メディア・広告主のロングテール化
[プロフィール]かとう・ともあき● 株 式会社クリエイティブガレージ インタラクティブコミュニケーションプロデューサー兼株式会社グロース・パートナーズIRコミュニケーションコンサルタント。市場調査会社での R&D業務経験を活かし、1999年よりWebマーケティング、ネットビジネス支援、Eコマースコンサルティングに携わる。プライベートでは、 ペットのミニチュア ダックスフントを愛する「つくねパパ」としてblogging。 |
広告メディアのロングテール化
CGMが広告メディアとしても機能することにより、企業が制作した広告クリエイティブをできるだけリーチ人数の多いメディアに載せるといった、従来の広告の概念には収まらない広告手法がいろいろと登場してきています。
これらCGMを活用した「広告」を、「広告の目的」と「クリエイティブの主体」別にポジショニングしてみたのが、以下の図です。リーチ効率→マッチング効率へといった広告の目的の流れを横軸に置き、広告主によるクリエイティブ→ユーザー参加によるクリエイティブへといったクリエイティブの主体の流れを縦軸に置いてみました。
【CGMを活用した「広告」】
これに対し、Yahoo!のオーバーチュアやGoogleアドワーズのような「検索連動広告」に代表される、ユーザーが発信するさまざまな情報からそのユーザーに適切な広告を提示していく「マッチング効率」を図った広告の波がCGMを活用した「広告」にも押し寄せています。「検索連動型広告」とともにリスティング広告として広告主に提供されているGoogle AdSense(アドセンス)のような「コンテンツ連動型広告」は皆さんにもお馴染みのことと思います。その他、株式会社CGMマーケティングが提供している、広告主の出稿媒体意向とブロガーの掲載クリエイティブ意向をマッチングする「アドバタフライ」や、RSS等のフィードを広告メディアとする広告などが、これらの範疇にはいると考えられます。
◆AD-Butterfly(アドバタフライ)
一方で、リアルビジネス企業にとってハードルが高いのは、「ユーザー参加によるクリエイティブ」の広告の流れといえるのではないでしょうか?
最近、日本のリアルビジネス大手企業が「テレビCM用ビデオ素材をブログパーツに載せて多くのブログ上で配信する」手法を展開する事例はいくつか見られるようになりましたが、著作権や出演タレントとの契約・著作権の問題も手伝って、いくらリーチ効率が高まるといっても、ビデオシェアリングやクラシファイド(無料)広告にリアルビジネス大企業が「出稿」する事例はまだまだ少ないと言わざるを得ません。
その躊躇の背景には、一般生活者でも出稿できるようなソーシャルメディアへの「出稿」は、企業が長年培ってきた「このように見られたい(ユーザーに記憶して欲しい)像を相応のメディアに載せて情報提供していくブランド構築の考え方」にはかえってマイナスとなるといった認識が存在しているようにも感じられます。
また、大規模SNSでのコミュニティや企業ブログでの「炎上」のニュースなどを目の当たりにすると、いわゆるコミュニティマーケティングやクチコミマーケティングなどといった手間のかかる、かつ、内容の本質が問われやすいインタラクティブコミュニケーションに、大手企業が着手することに二の足を踏ませていることも考えられます。
Web担当者は、CGMを活用した「広告」にどう取り組むべき?
その取り組みの判断には、以下のような、大きな2つの基準があるといえるのではないでしょうか?
(1) いわゆる外部サービスとしての「広告」を活用すべきか?
(2) Webサイトを育てるための「広告」展開とは?
先ほど図示したように、CGMを活用した「広告」にもいろいろな種類が登場してきています。ただ、これらの「広告」のうちいくつかは、自サイトのコンテンツ・サービスとして提供できるものも多々あります。
●「SNS公式コミュニティの運用」 vs 「自サイトでのコミュニティ運営」
●「ASP(アフィリエイト・サービス・プロバイダー)」 vs 「(多くの直リンクを生成する)自前のアフィリエイトシステム構築・展開」
●「ブログPR広告」 vs 「企業ブログ・SNS等を活用したコミュニティマーケティング」
これら外部サービスとしての「広告」を活用すべきか、自前で提供すべきかどうかは、企業のマーケティング戦略に則った戦術としての予算・期間・目標・社内リソースの状況からしっかりと判断しなければならないことといえましょう。
また、ユーザーに良質な経験を提供しつづけるといったWebサイトの目的達成のためには、その「広告」は外部SEO(検索エンジン最適化)にもプラスになるか?SMO(ソーシャルメディア最適化)にもつながるか?といった視点が必要と考えられます。
よくWebキャンペーンなどにおいては、専用のランディングページが用意され、そこへの集中誘導広告が展開されている事例を目にします。折角の広告費なのですから、Web担当としては、サイトを育てるためにも有効に機能させないとモッタイナイと思いませんか?
Webサイトを育てるために「広告」を展開する視点での判断の積み重ねが、長期的に安定したトラフィック誘導やコンバージョンの獲得、良質なクチコミ・評判の獲得への近道なのだといえましょう。
「広告」についてここまで述べさせていただきましたが、結局、本稿で再三提示している、「リード/ライト」インターネットでのWebサイト&コミュニケーションのあり方に戻ってきてしまったようです。
企業のWeb担当が、「広告(効果)」をも管理するコミュニケーションのあり方が、「リード/ライト」インターネット時代には求められているともいえるのでしょう。