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CGMから考えるWeb制作とコミュニケーション

7 CGM等の最新動向と企業コミュニケーションの方向性

7.3 SNSのオープン化と連携の動き


日本では招待制でクローズドなmixi(ミクシィ)がSNSの代名詞となっていますが、世界レベルではMySpaceやFriendStarといったオープンなSNSが主流です。昨年来、オープンな巨大SNS同士の連携の動きが盛んになってきています。この動向は、日本企業のビジネスコミュニケーションには、どのような影響をもたらしていくのでしょうか。

解説:加藤 智明(つくねパパ)



[プロフィール]かとう・ともあき● 株 式会社クリエイティブガレージ インタラクティブコミュニケーションプロデューサー兼株式会社グロース・パートナーズIRコミュニケーションコンサルタント。市場調査会社での R&D業務経験を活かし、1999年よりWebマーケティング、ネットビジネス支援、Eコマースコンサルティングに携わる。プライベートでは、 ペットのミニチュア ダックスフントを愛する「つくねパパ」としてblogging。



「OpenID」と「ソーシャル・グラフ(Social Graph)」がSNSをつなぐ

皆さんの中には、複数の異なるSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)に参加され、日々活用されている人も多いことと思います。登録しただけで放置状態になっているサービスも含めると、かえって複数SNS登録者のほうが多いのではないかとも推察されます。

現在のSNSにおいては、新規登録では各SNSが用意した手続きに従ってID・パスワード・名前などを登録しなければなりませんし、他のSNSで築いた友人関係やコミュニティでの関係性を、新たに参加するSNSに引き込もうとすると、関係をもった人にも新規SNSへの登録を促すといった「集団引越し」をしなければならないといった不便さがあります。

そんなユーザーの不便さを解消するサービスとして、昨年から注目を集めているのが「OpenID(オープンアイディー)」と「Social Graph(ソーシャル・グラフ)」ということができましょう。

OpenIDとは、SNSに限らないさまざまなサイトを越えて使用できる「認証システム」及び「そのシステムで利用できるID」のことを指します。ユーザーはOpenIDを管理するサイトに一度個人情報を記述したページを作りさえすれば、OpenIDを採用している他サイトへの新規登録においては、そのページURLだけの入力で済むようなるといったものです。

また、ソーシャル・グラフは、2007年8月に当時米国シックス・アパート社のチーフ・アーキテクトであったフィッツパトリック(Brad Fitzpatrick)氏が提唱したもので、SNS内の人と人の関係性を他のSNSでも共有できるようにすることで、ユーザーの利便性を向上させようとするものです。

2007年11月には、「DataPortability.org」というソーシャル・グラフ普及に向けた非営利団体が設立され、GoogleやFacebook、Microsoft、Plaxo、Yahoo!、MySpaceなどの大手SNSが参加を表明したことで、このソーシャル・グラフのデータがSNSユーザーに開放され各SNSが共有化するといったことが急速に現実味を帯び、注目されるようになりました。

フィッツパトリック氏はその後Googleに移り、2008年2月1日(米国時間)に、Googleの新サービス「Social Graph API」を発表するに至っています。




日本のSNSも追随?


OpenIDに関しては、日本でもすでに普及が始まっています。2007年2月14日から「OpenID.ne.jp」がいち早く日本語サイトでのOpenIDを発行はじめたのを皮切りに、2007年5月7日からライブドアが、そして、Yahoo!JAPANも米国Yahoo!に同調し、2008年1月30日に対応を始めています。

そして、2008年2月28日には、シックス・アパート、日本ベリサイン、野村総合研究所の3社が発起人となったOpenID普及のための団体「OpenID ファウンデーション・ジャパン(仮称)」の設立が発表されました。ここへの参加表明企業は、2008年3月段階でアセントネットワークス、イーコンテクスト、インフォテリア、テクノラティ・ジャパン、ニフティ、ミクシィ、ヤフー、ライブドアの8社となっています。

日本のSNSの代表的存在であるmixiのIDで、ブログ検索の「テクノラティ(technorati.jp)」やその他の多くのSNSへの新規登録ができるだけでなく、ひいては、決済サービス利用などにも適応されていくことが、将来的に目指されているものと考えられます。

ソーシャル・グラフに関しても、ゼロスタートコミュニケーションズがソーシャルグラフソリューション「zero-Matrix」(デモンストレーションサイト)をリリースするなど、具体的な動向が見え始めてきています。


広告のソーシャル化へ


このように「OpenID」「ソーシャル・グラフ」の導入の動きは、ユーザーの利便性向上ひいては利用者拡大に向けたサービスとしての発表内容となっていますが、導入する企業の狙いはそれだけなのでしょうか?

2007年11月6日に、米国を中心とした大手SNSである「Facebook」が発表した「Facebook Ads」は、SNSの友人関係を活用するといったSNSならではの特性を生かした新しいタイプの広告配信プラットフォームといえます。

Facebookメンバーのプロフィールデータから相応しいターゲットを抽出して、ダイレクトに広告を表示することができるターゲティング広告「Facebook Social Ads」は、広告というよりは、もはやリコメンデーションの域にも達するものと考えられます。

また、広告主が自分の企業(ブランド)サイトにFacebookユーザーが利用できるアプリケーションを用意する「Facebook Beacon」は、企業の広告がSNS上の友達のアクション(商品評価・購入等)を通じて語られる世界をつくりあげるわけで、新しいアフィリエイトの方向性を示しているようにも考えられます。

CGMやソーシャルメディアをとりまくWeb上の発言は、日本では、ユーザー数や登録ユーザーのアクティブ率・ページビュー・滞在時間など、リーチや提示頻度といった「レガシー広告指標」に基づいた評価を語られることが多く、特定ツール・サービスの伸び悩みデータからブログ限界説やmixiの成長性への疑問を投げかけるものも見受けられます。

ただし、上記のようなSNSのオープン化・連携の動きは、どのSNSを利用していても、また、どのブログツールを使っていても、ひとりのユーザーがプラットフォームとしてのWebに情報をアップロードし・共有するといった行動にはかわりがないという時代を導くわけで、結果的に「リード/ライト」インターネット環境や共有化経済(シェアリング・エコノミー)は、ますます促進されていくと考えられましょう。

ユーザーが、自身のWeb行動や友達ネットワークの行動内容から、自動的にいろいろとリコメンデーションされるといった世界も、ますます、現実味を帯びてきました。

SNSのオープン化・連携の流れは、リアルブランド企業にとっても、(リーチや提示頻度といった「レガシー広告指標」に基づかない)まったく新しいコミュニケーション対応をも求めることにつながっていくと考えられるのです。



次回もお楽しみに!!




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