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CGMから考えるWeb制作とコミュニケーション

4 CGMをマーケティングに活かす

4.1 乱立する"Webマーケティング"


これからしばらくは、マーケティング(・コミュニケーション)領域でのWeb活用についてお話ししたいと思っています。マーケティングという言葉そのものが多義に使われていることもあり、CGMをマーケティングに活かすといっても、まずは言葉の定義が必要となりましょう。

解説:加藤 智明(つくねパパ)



[プロフィール]かとう・ともあき● 株 式会社クリエイティブガレージ インタラクティブコミュニケーションプロデューサー兼株式会社グロース・パートナーズIRコミュニケーションコンサルタント。市場調査会社での R&D業務経験を活かし、1999年よりWebマーケティング、ネットビジネス支援、Eコマースコンサルティングに携わる。プライベートでは、 ペットのミニチュア ダックスフントを愛する「つくねパパ」としてblogging。



Webでリアル企業のマーケティング


米国マーケティング協会(AMA)が2004年8月、マーケティングの「定義」を19年ぶりに改訂しました。2004年の改訂までの19年間続いた定義は、製品・価格・プロモーション・流通の「マーケティング4P政策」のエッセンスを包含した馴染み深いものでありましたが、2004年の改訂では以下のような定義になっています。

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Marketing is an organizational function and a set of processes for creating, communicating and delivering value to customers and for managing customer relationships in ways that benefit the organization and its stakeholders.
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日本においても分衆・少衆論から20年あまり経過し、日本のマーケティング業界も、より一層「個客」「関係性」が重要視されていくのだろうと考えられます。

◆New Definition of Marketing - American Marketing Association
この定義でも明らかなように、マーケティングとは、広告やプロモーション(販売促進活動)だけを指すものでなく、顧客に向けて「価値」を創造しそれを伝達・提供したり、顧客との関係性を構築したりするための、企業内の機能及びその一連のプロセスであるといえましょう。

上記のようなマーケティングプロセスを踏まなくても、「大ヒット」「大成功」する商品が存在するのも確かなことではあるのですが、たまたま生み出された商品を「なんとかして売る」といった姿勢の連続では、経営としての不確実性があまりに大きく、マーケティング機能を導入・強化するということは、経営体として失敗しないための「企画・開発から販売促進までを含めた一連の大きなリスク低減のプロセス」の導入・強化といってもよいのだと考えられます。

そういったリアルビジネス企業のマーケティングの定義からみると、現在よく使われている"Webマーケティング"という言葉は、バイラルマーケティングやバズ(クチコミ)マーケティングなどの具体例が示すように、「Webサイトのプロモーション手法」「Webを使った広告・コミュニケーション」に置き換えられる使い方が多く、自らその守備範囲を狭めているように感じられます。

若者を中心としたメディア接触時間が、メールやSNS・ブログなどのCGMに費やされることが非常に多くなった環境で、また、ユーザーも企業も社員もそれぞれメディアを持つといった「リード/ライト」インターネット環境で、企業はそのマーケティングプロセスにおいて、自社サイトやプラットフォームとしてのWebをどのように活用していけばよいのでしょうか?


プロモーションだけでなく戦略を司るWebへ


Webサイトは多様な機能を持ち合わせています。「リードオンリー」インターネット時代に企業は、カタログや広告の新媒体としてWeb(サイト)を活用したり、質問紙によるアンケートの代わりにネットリサーチを活用したり、店舗の代わりにEコマースを活用するといったように、既存メディア・マーケティング手法の代替物として、Web(サイト)を構築・活用してきました。そして、Webマーケティングいうと、積極的に導入している企業でさえ、そのほとんどは、Web広告による自社のWebサイトへのユーザー誘導やWeb広告での商品の告知宣伝に終始していたことが多かったのではないでしょうか?

もちろん上記のようなWebマーケティング手法が、くなってしまうわけではないのですが、「リード/ライト」インターネット時代には、プロモーション領域においてもクチコミマーケティングといったようなCGMを広告メディアと見る考え方が付加され、また、ユーザーの商品・ブランドに対する評価やニーズも、ユーザーが自らWebにアップロードしている状態となります。企業の隠蔽体質や広告による誇大表現はアッという間に見透かされ、まさにユーザー主導の市場へと導かれていくことでしょう。

従来、企業は、セールスマンの数や広告投下金額といった、量的マーケティング資源投資を主な説明変数にし、需用予測や販売計画を組み立てていった訳ですが、「リード/ライト」インターネットのマーケティングでは、裸の商品の質のよさ、適正価格設定、コミュニケーションにおける表現といった質的マーケティング資源が、力を発揮していくことになるでしょう。

そうなのです、「リード/ライト」インターネット環境でよく語られる市場のブランドコミュニケーションでは、広告や営業活動といった量的な資源投下とともに、企業の質的コミュニケーション資源が重要な役割を果たすといえる状況なのです。

ブランディングから販売促進ひいては売り場の提供まで、Webの役割が増え、かつ、企業の質的コミュニケーション資源の拡充が重要な役割を果たすこの環境の中で、良質なWebマーケティングを実施していくためには、キャンペーンなどに代表されるプロモーション戦術としてのWebの活用法だけではなく、マーケティング戦略そのものの中心にWebを据える全社プロジェクトとしての考え方が必要となります。

その時、いわゆるWeb担当者(部門)は、戦略・戦術策定から社内調整までを専門で行える人材・組織である必要性が生じるのではないでしょうか?

これから、数回にわたって「CGMをマーケティングに活かす」方法論を考えていくに当たり、まずは、根本的な考え方を述べさせていただきました。
本来的な意味でCGMをマーケティングに活かすためには、まずは、経営陣の理解がなによりも必要といえるのかもしれません。


次回もお楽しみに!!
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