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CGMから考えるWeb制作とコミュニケーション

7 CGM等の最新動向と企業コミュニケーションの方向性

7.2 顧客満足(CS)施策として捉えるSEO


SEO(検索エンジン最適化)というと、サイトプロモーション施策に捉えられがちです。ただし、プラットフォームとしてのWeb上でのあるべきブランディングや企業コミュニケーション活動を考えていくと、SEOはサイトプロモーション施策ではなく、また、サイトのユーザビリティ施策としての位置づけをもとびこえて、顧客満足(CS)施策として捉えるほうがしっくりくる一面も見えてきます。

解説:加藤 智明(つくねパパ)



[プロフィール]かとう・ともあき● 株 式会社クリエイティブガレージ インタラクティブコミュニケーションプロデューサー兼株式会社グロース・パートナーズIRコミュニケーションコンサルタント。市場調査会社での R&D業務経験を活かし、1999年よりWebマーケティング、ネットビジネス支援、Eコマースコンサルティングに携わる。プライベートでは、 ペットのミニチュア ダックスフントを愛する「つくねパパ」としてblogging。



プラットフォームとしてのWeb上での「真実の瞬間」

今から20年近くも前、1990年に出版された「真実の瞬間-SAS(スカンジナビア航空)のサービス戦略はなぜ成功したか」(ヤン・カールソン著)という本を、みなさんはご存じでしょうか?

この本は、当時業績不振に陥っていたスカンジナビア航空の社長に就任した著者の成功物語で、「サービスの本質」について世界中で議論を巻き起こし、「顧客満足(CS)経営」の礎を築くに至らしめたといっても過言でないビジネス書と位置づけられるものです。

「真実の瞬間」とは、スカンジナビア航空の社員が実際に顧客と直接応接する平均的な時間が15秒であったということから、このわずか15秒間にスカンジナビア航空に対する顧客の印象が刷り込まれることに着目し、この現場でのサービス力の向上のために、全社をあげてのサービス改善プロジェクトが実施され、結果的に失速寸前のスカンジナビア航空の業績が急浮上するに至ったというものでした。

サービス改善プロジェクトは具体的には147本にも及ぶものであったようですが、カールソンの主張の骨子は、最前線の従業員に「自らが顧客として望むようなサービス」を顧客に提供することを指示し、そのために現場に裁量権を移すというシンプルなもので、それをカールソン自らの強力なリーダーシップで推進することにより、当時のスカンジナビア航空の再生が実現されたということになります。

ヤン・カールソンがスカンジナビア航空の社長に就任したのが、1981年。そのときの情勢をカールソン自身「旧態依然とした上位下達のリーダーシップによる企業中心の経済活動の考え方から、『顧客本位の企業』につくり替えなければ企業は生き残れない時代」と本著で語っています。

主として企業から提供される情報・サービスを享受することが中心であった「リードオンリー」インターネットから、ユーザー自らが情報をアップロードし、プラットフォームとしてのWeb上で共有活動・コミュニケーションを盛んに展開する「リード/ライト」インターネットへ、という時代の変革期が現在です。

「この『ユーザー主導の市場形成』をも促進する情報環境の変化に対応しなければ企業は生き残れない」といったように、ヤン・カールソンの言葉を置き換えてみると、「リード/ライト」インターネット時代に企業が取り組むべき「サービスの本質」も見えてくるのではないでしょうか。

当時業績不振だったSASをヤン・カールソンが再興
当時業績不振だったSASをヤン・カールソンが再興。今もサービスの良さがうかがえる。


SEOを単にサイトプロモーション施策と捉えない企業姿勢


Web制作やWebコミュニケーションの管理・運用支援の業務を実施していると、よくクライアントから「(内部)SEO対策を施してどれだけトラフィックが増えるの?」とか「(内部)SEO対策を施しても、効果が現われるのに時間がかかってしまうんじゃないの?」という問いかけをいただくことがあります。SEO(検索エンジン最適化)を、サイトのプロモーション施策として捉えた発言といえましょう。

また、同じユーザーの検索行動でも、例えば、企業サイトに用意された「検索窓」から商品やサービス名で検索する機能については、そのレスポンスや結果表示のされ方が、よく、サイトユーザビリティ(使い勝手)の視点で語られたりもするものです。

ここで、「リード/ライト」インターネットの時代の「サービスの本質」を、このSEO施策を例にとって考えてみましょう。

Web2.0の議論でも盛んでしたが、「リード/ライト」インターネットやプラットフォームとしてのWebの立役者にGoogleのロボット検索結果表示のアルゴリズム(ロジック)があげられます。従来のディレクトリー型などの検索エンジンでは、「資金力」「権威」のある企業サイトが優先表示されやすかったところに、Googleのページランクをはじめとした検索アルゴリズムは、一気にインターネットでのコミュニケーション機会を平等化・民主化させたといえます。それを礎にブログ・SNSなど数多のCGMやソーシャルメディアが台頭するようになり、「リード/ライト」インターネットの時代に繋がっているともいえましょう。

SEO(検索エンジン最適化)とは、このプラットフォームとしてのWebの立役者であるこのGoogleをはじめとしたロボット型検索エンジンでの上位表示をねらう施策といえる訳ですが、平等化・民主化されたプラットフォームとしてのWeb上での企業の「サービスの本質」は、このSEOを「真実の瞬間の創造」と位置づける企業姿勢にこそ含まれるものと考えられるのです。

ヤン・カールソンの時代は、リアルな顧客接点の累積時間が平均15秒でした。
「リード/ライト」インターネット時代の本格的B to C to Cコミュニケーション実現のためには、SEOから始まる「真実の瞬間」のため、全社をあげてのサービス改善プロジェクトの導入と、その実現のための「現場」への権限委譲が必要ともいえるのかもしれません。



次回もお楽しみに!!




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