7.4 動画クリエイティブ共有化とSMO | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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CGMから考えるWeb制作とコミュニケーション

7 CGM等の最新動向と企業コミュニケーションの方向性

7.4 動画クリエイティブ共有化とSMO


企業の動画クリエイティブというと、テレビCM用CF(コマーシャルフィルム)をはじめさまざまものがあげられます。公式サイトにこれら動画クリエイティブをコンテンツとしてのせている企業もよく目にします。ビデオシェアリング(動画共有)サービスをはじめ動画配信プラットフォームの選択肢が増える中で、企業は動画クリエイティブをどのように配信・管理すれば、コミュニケーションの効率化につなげられるのでしょうか?

解説:加藤 智明(つくねパパ)



[プロフィール]かとう・ともあき● 株 式会社クリエイティブガレージ インタラクティブコミュニケーションプロデューサー兼株式会社グロース・パートナーズIRコミュニケーションコンサルタント。市場調査会社での R&D業務経験を活かし、1999年よりWebマーケティング、ネットビジネス支援、Eコマースコンサルティングに携わる。プライベートでは、 ペットのミニチュア ダックスフントを愛する「つくねパパ」としてblogging。



選択肢が増えた動画配信プラットフォーム


ひと昔前までは、テレビ受像機以外で企業のCF(コマーシャルフィルム)に接する機会といえば、ロードショー映画の上映前広告やイベントでのビデオ上映くらいしかありませんでした。

ブロードバンド化によるリッチコンテンツ閲覧環境整備は、動画ポータルや企業サイトが提供するコンテンツだけでなく、YouTubeやニコニコ動画のようなビデオシェアリングの登場を招き、ユーザーにパソコンだけでなく携帯電話・ゲーム機などのデバイスからも動画に接する機会を急激に増やしました。その他、ポッドキャスティングやワンセグでの端末への配信、街頭キオスク端末や電車内・エレベーター内ディスプレイの動画対応等、ユーザーが動画に接する機会は増え続けています。

そういった対応し、企業のCFもテレビ放送の広告枠での配信にとどまらず、自社サイトや屋外・電車内・館内などいろいろなところで陽の目を見るようになってきています。

また、テレビCFだけではなく、DVD配布・イベント用商品広告・商品取扱説明、リクルート・PR・IR用企業紹介や社長挨拶といったインフォマーシャルなどなど企業の動画クリエイティブは多岐にわたっています。中にはテレビショッピングの「ジャパネットたかた」のように、スタジオを社内にもち、自社販促活動をTV番組化しているところもあるぐらいです。

TV広告高視聴率番組というと世帯視聴率が35%を超えるのが当たり前で、家族揃ってお茶の間でテレビが見られていた時代には、単一クリエイティブを繰り返し出稿することでも、ユーザーの認知・商品理解促進などのブランディング効果を得られた商品・ブランドが多かった訳ですが、昨今では、メディアミックスでリーチを広げ、クロスメディアで説得性を高めるなど、企業のマーケティング・コミュニケーション(MC)担当にとって、効率的な広告配信のためには手間がかかる時代となっているようです。

OWNメディアも含めた広告媒体のメディアミックス・ビークル選択により、動画クリエイティブを有効に活用している例としては、先ほどあげた「ジャパネットたかた」が好例といえましょう。「ジャパネットたかた メディアミックスショッピング」サイトでは、テレビショッピングでみた動画クリエイティブを再認できることに加え、独自の24時間番組配信・ラジオショッピングの再認・Webチラシなども含め、まさにコンバージョンに向けての各所クリエイティブが目白押しとなっています。


ジャパネットたかた メディアミックスショッピング


リーチ&フリクエンシーとは違う評価軸


「ジャパネットたかた」のケースは、テレビ・ラジオ・チラシといった既存広告メディアとOWNメディアであるWebサイトを活用した、メディアミックス&クロスメディアの事例でした。

では、CGM・ソーシャルメディアの隆盛で、ユーザーも自作動画を無料で配信・共有することがかなり一般化されるようになった今日、自社サイトだけでなくプラットフォームとしてのWebでどう配信(共有)すれば、動画クリエイティブの有効活用につながるのでしょうか?

バイラルCMは、15秒とか30秒といった時間や表現コードの制限がはずれた中でこそできるクリエイティブの質が伝播の推進力となるもので、予算の限られたプロジェクトでのコミュニケーション手法としてお勧めですが、バイラル単独ではどんなに頑張っても老若男女の過半数にリーチするのは難しいと判断されます。

また、よくバイラルCMポータルで外国企業のおもしろCFに接し楽しむことはありますが、こと日本国内で配信済みのテレビCFクリエイティブをバイラルポータルにのせたところで、日本市場ユーザーに伝播されるのか?バズを発生させることができるのか?については疑問符がたくさん登場してしまいます。

コカ・コーラのブログパーツ提供によるTVCF「Happiness Factory」の配信や、ドリトス(菓子ブランド)や自動車のGMが2007年のスーパーボウル中継で配信したようなCGCM(消費者作成CM)のような、マスメディア活用前提の中でのリーチ&フリクエンシー(再生回数)補完に加え、バズ発生やコンバージョン率といった従来の広告評価軸とは違った目標を明確化しての総合的アプローチが、広告業界側の動画クリエイティブ扱いの今後の売りになるのだろうと考えられます。

ただ、広告媒体を購入(広告出稿)しなくとも、OWNメディアとCGM(ビデオシュアリングやブログパーツ等)活用で2~3割までのリーチまでなら確保できフリクエンシーを高められる術を企業はもつようになっている訳で、日本全国の老若男女に広く告知するブランディングが必ずしも効率的とはいえない商品・ブランドやスモールプロジェクトにとっては、動画クリエイティブの共有化(配信)だけでもコミュニケーション目標を達成できる可能性は大となっており、ブランドマネージャーやWebマスター(このどちらなのかが大事なのですが・・・)の腕のみせどころといえましょう。


SMO素材としてとらえる動画クリエイティブ


さて、サイトプロモーションの視点としてのSMO(ソーシャル・メディア最適化)については、本稿でも「1.6リンクを促すCGMと企業サイトのSEO& SMO」の章でふれました。


この章で紹介したSMOの手法(ルール)の中に、「Help your content travel 動画ファイルなどがあったら、ソーシャルメディアに自らアップロードしコンテンツを遠くに伝播させよう」というのがありました。

クチコミマーケティングとしても、ユーザーが自由に引用・使用できる素材(画像、データなど)をサイトで提供することは主要な手法とされていますが、知的所有権や管轄部門の違いなども手伝ってなのでしょうか、企業サイトとしては、動画ファイルをブロガーに提供したりビデオシェアリングで共有を図ったりすることは、ハードルが高いようにも見受けられます。

そんな中、最近になってYouTubeでは、企業や地方公共団体・政党などが公式に「チャンネル」を設け、所有している動画コンテンツの配信とともに、サイトプロモーション施策に結び付けている事例も見られるようになっていますので、みなさんもYouTubeの「チャンネル」を検索して確認なさってみてください。

厳密には企業サイトではないので恐縮ですが、動画コンテンツでのSMOの好例として、明治学院大学のWebサイトをあげておきます。

◆明治学院大学 TOP

MG Video [動画コンテンツ] | 明治学院大学

この明治学院大学のサイトでは、昨年から「本学の学生であれば、誰でもMGVideoに動画を投稿することが出来ます。方法についてはMGVideo動画投稿方法ページを参照して下さい。」との説明のもと、

1.YouTubeに動画を投稿
2.URLを広報室までメールで動画のURLを送信
3.広報室でチェック後、公開

といったステップで、学生が作った動画コンテンツを学校紹介ビデオとして、公式サイトで紹介してきた実績があったのですが、2008年3月10日に、いよいよYouTubeに明治学院大学公式チャンネルが公開されたことが報じられています。

MG Video [動画コンテンツ] | 明治学院大学

企業サイトにおいては、ブランドコミュニケーションの一環として、CFの出稿期間にあわせそのCFをWebにも掲載するメディアミックススタンスでのアプローチや、「桃屋CM博物館」のように企業のあゆみを物語るコンテンツとして過去のCFを紹介するアプローチなどが見受けられます。また、CF以外のPR/IR・リクルート・商品説明といったさまざまな目的に応じた動画クリエイティブを紹介しているサイトも多くなっています。

「リード/ライト」インターネット時代の有効なコミュニケーション実現のためには、この既存の動画クリエイティブをWebでも紹介するといったアプローチにプラスして、ソーシャルメディアやCGMを中心とした「プラットフォームとしてのWeb」で広く伝播されることを目的とした動画クリエイティブの制作・収集能力及びそのコミュニケーション(効果)管理能力も、Web担当には求められるともいえそうです




次回もお楽しみに!!




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