CGMから考えるWeb制作とコミュニケーション
5 話題性・評判を「目標」としたコミュニケーション管理
5.6 バズ・マーケティングからバズ・ブランディングへ
[プロフィール]かとう・ともあき● 株 式会社クリエイティブガレージ インタラクティブコミュニケーションプロデューサー兼株式会社グロース・パートナーズIRコミュニケーションコンサルタント。市場調査会社での R&D業務経験を活かし、1999年よりWebマーケティング、ネットビジネス支援、Eコマースコンサルティングに携わる。プライベートでは、 ペットのミニチュア ダックスフントを愛する「つくねパパ」としてblogging。 |
止まらない「リード/ライトインターネット」潮流
大手ポータルサイト@niftyがブログサービス「ココログ」の提供を始めたのが2003年12月、mixiやGREEといった和製大規模SNSが産声をあげたのが2004年、「web2.0」が日本においてネット上で盛んに議論され始めたのが2005年、梅田望夫氏の「ウェブ進化論-本当の大変化はこれから始まる」(ちくま新書)の出版や株式会社ミクシィの上場、YouTubeへの日本からのアクセス急増が話題になったのが2006年でした。
「web2.0」や「mixi」が流行語としても取り上げられブーム化した2006年に比べ、2007年はCGMやソーシャルメディア関連の話題は比較的落ち着いたものであったと言えそうです。確かに、鳴り物入りで投入された世界最大のSNS「MySpace」や「セカンドライフ」の実利用者数、また、いわゆるブログASPサービスからのエントリー数の伸び悩みなどのニュースも聞こえてきます。では、一部の企業からの一方的な情報を享受することが中心であった「web1.0」・「リードオンリーインターネット」から、「リード/ライトインターネット」への潮流は減速しているのでしょうか?決してそんなことはないと考えられます。
「web2.0」という言葉のブーム期は過ぎ去りました。また、現在脚光を浴びているweb2.0的な各サービスが、それぞれいつまで盛んに利用されるかもわかりません。ただし、情報を自らアップロードすることの楽しさ・情報を共有することの便利さを経験した若者を中心としたユーザーが圧倒的多数となった以上、「多様なデバイスを通じたCGMやソーシャルメディアでのコミュニケーション」と「集合知という価値フィルター」の存在は、後退することはないと考えられます。
消費行動においては今後もますますweb上の評判が与える影響が高まりますし、個人投資家による投資行動や学生の就職活動における情報収集などでも、またしかりと考えられます。
売上げや利益といった数値目標をもちやすいマーケティング・コミュニケーションにおいては、話題(性)づくりを目標とした「バズ・マーケティング」へのアプローチが盛んに行なわれるようになってきました。ブログを活用したキャンペーンサイトの構築・運営、リスティング広告やアフィリエイト広告、サイトへの誘導を訴求するマス媒体広告、外部SNSでの公式コミュニティ運営などなど・・・。
産業構造が生まれて以来初めて、消費者がメディアになったのですから、CGMの発展は企業と消費者の関係性そのものに大きな影響を与え、企業からの一方的な情報発信内容が記憶されることにより形成されていたいわゆるブランド(力)の在り方も、「集合知」のフィルターにさらされ、変化しました。
綿密なマーケティングリサーチでの受容予測に基づく生産計画の下、価格政策・流通政策・コミュニケーション政策を展開するPDCAサイクルをしっかり回してきた企業ほど、このコミュニケーション環境の変化がもたらしつつある「誤差」に既に気づかれていることに違いありません。
これら多くのバズ・マーケティングへの取り組みアプローチは、その新規性故に話題になったりもした訳です。ただし、これらのような効率が測れるコミュニケーション施策としてのバズ・マーケティングへのブーム的アプローチではなく、コーポレート・コミュニケーション戦略としての「バズ・ブランディング」ともいえる取組みの必要性を、企業に投げかけ始めたのが2007年ともいえるのではないでしょうか。
"戦略"としての「バズ・ブランディング」における企業サイトのあり方
コミュニケーション戦術・施策としてではなく、コーポレート・コミュニケーション"戦略"として「バズ・ブランディング」を位置づけるということになると、企業サイトはどのようにあるべきということになるのでしょうか?
まず、バズ(話題性)の発生状況を捉える効果測定の仕組みが必要となることは間違いありません。
そして、次に、企業広報・PR部門、IR、マーケティング、人事部門等が連携した、または統括された組織によるバズ・プランニング(話題発生を目的としたコミュニケーション計画)が必要となります。
そして、そのバズ・プランニングで設計されるWebコミュニケーションには、きっと「企業サイトにおける定期コンテンツ更新・情報発信」といった価値ではなく、「プラットフォームとしてのWebも見据えた運用型コミュニケーション」といった価値が求められることになるでしょう。また、携帯サイトなど多様なデバイスへの対応も必然的に導かれるのではないでしょうか。
上記のようなコミュニケーション(体制)は、ITベンチャーなどにおいては、かえってそれほどハードルは高くなく、既に実施している企業も多いのですが、リアルビジネスブランドの縦割り組織でのコミュニケーションを展開していきた大企業にこそ、そのハードルは高いのだといえるのかもしれません。
2007年もだいぶ押し迫った12月20日、日本の大企業の典型ともいえるトヨタ自動車が、ユニークな企業サイトサービスをリリースしました。
◆トヨタ自動車:ニュースリリース―自動的に情報を構成するホームページ『etoyota.net』を開発(12/20)
ここで紹介されている「etoyota.net」は、お客様の個別ニーズに合わせて自動的に「マイページ」ともいえる専用ページを提供するものです。企業広報サイト「toyota.co.jp」とマーケティングサイト「toyota.jp」など複数のWebサイト内に点在するコンテンツ中から瞬時に情報を選択・構成し、個々のお客様ニーズに最適なページを提供するといった、まったく新しい企業サイトの考え方ともいえましょう。