CGMから考えるWeb制作とコミュニケーション
2 CGMがもたらすリアルビジネスへの影響
2.2 メディア業界のロングテール化・アマチュア革命
[プロフィール]かとう・ともあき● 株 式会社クリエイティブガレージ インタラクティブコミュニケーションプロデューサー兼株式会社グロース・パートナーズIRコミュニケーションコンサルタント。市場調査会社での R&D業務経験を活かし、1999年よりWebマーケティング、ネットビジネス支援、Eコマースコンサルティングに携わる。プライベートでは、 ペットのミニチュア ダックスフントを愛する「つくねパパ」としてblogging。 |
米国ジャーナリズムに浸透するCGM
◆「EPIC2014」(日本語版)
このショートムービーでは、Googleとアマゾンが合併して「Googlezon(グーグルゾン)」という会社ができ、ひとり一人の嗜好に対応したニュースや広告・コンテンツをカスタマイズ配信していくことを武器に、新聞社などの既存メディア産業を将来的に駆逐していくという筋立てのものでした。
この「EPIC2014」がWebで話題になってから約3年、この筋立てのようなM&Aが現実化するかは未だ定かではありません。ただし、米国ジャーナリズムにおけるCGMやソーシャルメディアの影響力は着実に高まっていることだけは確かなようです。
米国時間の7月24日、米CNNが放送した民主党の大統領選候補の討論会で、YouTubeに事前に投稿された多数のビデオ質問状に対し、各候補者がその場で回答するといった、公開ビデオ質疑応答が展開されたことは、ご記憶に新しいところでしょう。このビデオ質疑応答の様子は、YouTube内の以下のディベート(討論会)コーナーでいまでも確認できます。
◆THE CNN ★ YOUTUBE DEBATS
CNNとYouTubeは、9月に予定されている共和党の大統領候補の討論会でも同様の放送を行う計画を発表しており、今後の候補者討論会での"デフォルト"にでもなりそうな勢いをみせています。
このような米国でのCGMやソーシャルメディアの影響力の増大に関し、ブログ検索サービスのTechnoratiがその公式ブログの中で、興味深い分析結果グラフを発表しています。クリエイティブ・コモンズライセンスが宣言されていますので、出典を明示し転載させていただきましょう。
出典 Sifry's Alerts: The State of the Live Web, April 2007
※クリエイティブ・コモンズライセンスが宣言されているため、出典明示し転載可能
さすがに上位にはCNNやYahoo!、MSN、BBCなどに混ざってasahi.comなどのニュースサイトが多く顔を連ねていますが、上位50サイトには9のブログ、上位100サイトまでみると22のブログがランクインしています。
結局、大手メディアサイトが影響力の強いサイトの多くを占めているといってしまえば、それまでなのですが、このグラフから、既存メディア(のビジネス)が安泰かというとそうも言っていられない状況といえましょう。
TOPランク周辺をみただけでも、ジャーナリズム産業の中で企業活動として展開しているサイトよりも影響力のあるブログサイトが増加しつつある訳ですし、よりロングテール部分に関しては、何百万~何千万というブログが活発にコミュニケーションを展開しているといった状況を理解することが大切なのだと考えられます。
日本では……
ただ、Web系の新興企業がメディア産業を牛耳るような話ではないにしても、CGMが牽引する「アマチュア革命」「メディアのロングテール化」に対応して、日本のメディア産業や情報サービス産業側がビジネスモデルを変化させる新しい取り組みは、各所でみられるようになってきました。
ブログや掲示板の書き込みを題材にした出版や映画化、テレビの情報番組などにおける「Web検索結果」や「集合知によるランキング」の番組コンテンツ化などはみなさんも身近に感じられていることでしょう。
放送と通信の融合については、数年前からそのあり方が議論されていますが、東京のUHFテレビ局であるTOKYO MXは、「BlogTV」という番組を対象に、放送後、ただちにYoutube、Revver、Google Video、FlipClip、i-revo、Ameba Visionなどのビデオシェアリングサイトに毎回の番組をUPし、放送コンテンツのインターネット上への開放という形で、さらなる視聴者の開拓を狙う取り組みを継続しています。
◆Blog TV 公式ブログ
「アマチュア革命」「メディアのロングテール化」への対応
そのような状況下、CGMが牽引する「アマチュア革命」「メディアのロングテール化に対応し、従来のメディア産業や情報サービス産業がビジネスモデルをも変化させつつある状況を確認してみました。
では、メディア産業でもなく情報サービスでもないリアルビジネス企業には、どのような対応が迫られるのでしょうか?
Webサイト(管理)に関しては、いままでも本稿で述べてきたように、「プラットフォームとしてのWebへのブランディング」の視点が必要になり、CGMからも多くのリンク引用を受けるような魅力的な「一次情報」の活発な提供により、一方的な情報発信ではなくコミュニケーションを展開していくメディア力を高めていく方向性が考えられましょう。
ただ企業サイトにおけるコミュニケーションを、上記のような方向性に本質的に導いていくためには、PR(パブリック・リレーションズ)やIR(インベスターズ・リレーションズ)、広告、販促活動といった従来からのさまざまなアウターコミュニケーションとともに、インナーコミュニケーションも含めた企業のトータルコミュニケーション活動の「目標」の持ち方と、その「管理・運用体制」のあり方の変革さえも、求められるようになっていくといえるのではないでしょうか。