アップル社渾身の新世代情報デバイス
iPadアップルジャパン
4月3日のアメリカでの発売以来、2ヶ月弱を経て、いよいよ日本でも出荷が開始されたiPad。ハード的には大きなiPod touchに思えるが、画面サイズの拡大や処理速度の向上、バッテリー駆動時間の延び、そしてiPad専用ソフトウェアの存在が、新鮮なユーザー体験をも たらす。ここでは、16GBのWi-Fiモデルを検証してみる。

iPad 16GB WIFIモデル-黒いフレームの中にスクリーンが浮かんでいるだけという印象のシンプルな表示面。フレームは、手に持って指で押さえたときに、ちょうど画面にかからないような幅に設定されている。画面下端のドックには、デフォルトではiPhoneやiPod touchと同じ4個のアイコンが並んでいるが、実際にはこのように6個まで登録可能だ
かつてないタブレット体験
iPadは、iPhone/iPod touchと基本的に同じOS(iPhone OS)を搭載したタブレット型の情報デバイスである。CPUには独自開発の低消費電力チップA4を採用し、視野角の広いIPS方式の9.7インチLCD画面をマルチタッチで操作する。メモリ容量(16/32/64GB)とネットワーク対応(Wi-Fiのみか、Wi-Fi + 3Gか)の組み合わせによって、6つのモデルが存在し、製品価格帯(16GB Wi-Fiモデルの48,800円から、64GB Wi-FI + 3Gモデルの81,800円まで)は、いわゆるネットブックと呼ばれる低価格ノートPCと競合するレベルにある。
アップル社は早くからネットブックを中途半端な仕様のローコスト製品として批判。それを乗り越えられる発想が得られるまでは、iPhoneとMacBookの中間的なクラスの製品市場への参入は控えるとしていた。
タブレット型と称されるコンピュータデバイスは、これまでにも存在したが、電子手帳のように個人情報管理系の機能に絞り込んだ製品を除けば、そのほとんどがデスクトップPC用のハードとOSを拡張してペン入力などに対応させたものだった。その結果、優れたユーザー体験を提供できなかったり、同等仕様のノートPCと比べて価格が割高となり、一部の医療向けや産業用のバーチカルマーケット以外には普及が進まずにいた。
これに対してiPadは、ハード仕様の絞り込み(たとえば、ハードウェアキーボードやカメラの割愛)と、必要とされる機能への投資(同じく、内蔵バッテリー容量やマルチタッチスクリーンの精度や応答性)を徹底して行い、定評のあるiPhone/iPod touch譲りの操作性を1024×768ピクセルのフルスクリーンに拡張して適用することで、まったく新しいタブレット体験を安価に提供することに成功している。大型の高精細画面が、様々な情報に指先で直接触れて操作しているような感覚を増幅し、iPhone/iPod touchの延長線上にありながら、より充足したメディア体験をもたらしてくれるのだ。
確実に生活を変える製品
iPadは、その画面サイズゆえに、横長のポートレートスタイルで使う際のソフトキーボードの幅が実物のキーボードに近いため、メール作成やメモ書きなどの際の文字入力が格段に行いやすい。また、iPadは、iPhoneでサポートされていない外付けキーボードやワイヤレスのBluetoothキーボードにも対応している。
同じようにiPadは、iPhoneで写真アルバムのスライドショーやビデオ再生時に限られている外部映像出力も、「iPad Dock Connector - VGA Adaptor」は必要であるが、アップル純正のプレゼンテーションツールKeynoteやその他の対応アプリから可能となっている。
さらに、ドキュメントプロセッサのPagesや、スプレッドシートのNumbersといった純正アプリも揃っているため、日常的な情報処理をある程度こなすことができる。
ある程度と書いたのは、iPad用のKeynote、Pages、Numbersの機能がMac用のプロダクティビティスイートiWorkに含まれる同名のアプリを再現したものではなく、サブセットであるためだ。たとえば、Keynoteでは画面転換のビジュアルイフェクトの種類がMac版よりも少なく、プレゼンテーション内で使用するビデオデータのフォーマットもiPadで再生可能なものに限られる。
その点には注意が必要だが、仕事内容によってiPadがあればノートPCは不要という人も出てくるだろう。また、アドビやオートデスクなどの大手ソフトハウスによるスケッチやドローイング系のアプリも充実していることから、アイデアを練る上で便利に使うようになるデザイナーも増えてくるものと思われる。
さらに、オプションのiPad Camera Connection Kitを利用すれば、デジタルカメラやSDメモリカード内のイメージデータを直接iPad内に取り込めるため、旅先や出張時などのフォトストレージの代わりにもなる。ISP方式のLCDスクリーンは視野角も広く、イメージが画面に貼り付いているかのように見える。この画質を活かしたフォトフレームモードも用意されており、iPadを使用していないときにもデジタル写真立てとしての利用が可能だ。
標準でインストールされているアプリ(カレンダーや、連絡先、マップ、ビデオ、YouTube、iTunes、Safariなど)もiPadの画面に合わせて画面構成やインターフェースが全面的に見直されて、一層使いやすくなっている。
現状では、購入直後のアクティベーションやOSのアップデートの際に、母艦となるMacintoshやWindowsマシンが必要となるため、その意味でPC自体が不要になることはなく、特に本格的なクリエイティブワークは今後ともハイエンドのパーソナルコンピュータ上で行われていくだろう。しかし、電子的な読書や写真・動画鑑賞、ネットブラウズ、ゲーム、メールのやりとりなど、一般的な生活の中におけるコンピュータ利用の場面は、そのほとんどがiPadに置き換わっていく。そんな可能性を十分に感じさせるプラットフォームである。

iPadでは、一部の特殊なアプリを除き、ホーム画面を含めて上下左右の区別がなく、どの向きでも使うことができ、表示が自動的に切り替わる。ただし、アイコンの縦と横の並びの数が異なるため、よく使うアプリなどを位置で覚えているような場合には、いざタップしようとして戸惑うことがある

ホームボタンやドックコネクタは、短辺の1つの外縁部に1個ずつのみが組み込まれている。従って、ドックに接続するような場合には、常に縦長のポートレートスタイルで行うことになる。また、ドックコネクタの右のほうに見える3連の扁平な穴は、スピーカーグリル(モノラル)だ

ホームボタンが下方にくるようにiPadを保持したとき、向かって右の縁の上部に、シーソータイプのボリュームスイッチとスライド式の画面位置ロックスイッチ(本体を回転させても、縦横をキープする)がある。iPhoneのようなミュートスイッチはないものの、ボリュームスイッチの長押しにより、音声をミュート/復帰させることが可能だ。上部に見える黒いスイッチは、電源オン/スリープ/スリープ解除機能の兼用ボタン

電源オン/スリープ/スリープ解除ボタンと反対の角には、イヤフォン端子とマイクホールがある。後者は極小のため、音質や感度が気になるが、実際には音声認識アプリにも利用されており、性能的にはまったく問題ない

アルミ製の裏面パネルは緩やかに湾曲しており、本体を水平に置いた状態で縦横に回転させる動作などがスムーズに行える形状。中央のアップルマークは樹脂製で、この部分にWi-Fiアンテナが内蔵されている。Wi-Fi+3Gモデルでは、さらに上辺近くに3G回線用とGPS用のアンテナが組み込まれ、その部分も黒い樹脂製カバーで覆われる

専用オプションのiPad Camera Connection Kitに含まれるUSBケーブルドングルを利用してデジタルカメラを接続したところ。自動的に、カメラ内のイメージデータの読み込みモードとなり、画面にサムネールが表示されるので、すべて、もしくは選択したイメージのみをiPad内に転送できる

同じくiPad Camera Connection Kitに含まれるSDカードドングルを利用して、メモリカード内のイメージをサムネール表示したところ。どちらの方法でも、快適にフル解像度のイメージデータをiPad内に取り込むことができる

やはり専用オプションとして用意されているiPad Keyboard Dock。iPadでは、アップル純正のMac用ワイヤレスキーボードを含めて、市販のBluetoothキーボードも組み合わせて使うことができる(ただし、対応製品のリストが公開されているわけではなく、一部非対応品もある模様)

ドックコネクタの位置の関係から、iPad Keyboard Dockを使う際には、iPadは必ず縦長のポートレートスタイルで利用することになる。重心位置が高くなるものの、Dockの自重と幅のあるキーボードによって、ぐらついたりすることなく安定してタイピングすることができる

他のワイヤレスキーボードにないiPad Keyboard Dockのメリットとしては、iPadの基本的なコントロールが可能な専用ファンクションキーの存在(最上段の左から、ホームボタン、Spotlight 検索ボタン、輝度調整ボタン×2、フォトフレームモード起動ボタン、ソフトキーボード表示/非表示ボタン)が挙げられる

同様に、最上段の右半分には、音楽再生コントロールボタンや、ボリュームスイッチ、スリープ/スリープ解除ボタン(鍵のアイコン)が並ぶ

標準で内蔵される純正アプリも、iPad用に一から新設計されている。たとえばiPhone用のシステム設定の画面では、このように設定項目リストが表示され、個々の項目を選ぶと、その設定画面に移行するが…

iPadでは、画面の広さを活かして、設定項目リストと設定パネルが並列した状態で表示される


同じく、カレンダー(スケジューラー)アプリも、iPhoneでは月表示や日表示などを使い分けることで小さな画面を有効活用しているが…

iPadでは、手帳の見開き状態のような表示モードなどが用意され、スケジュールを一度に多角的に把握できる
(大谷和利)
■価格 48,800円
■おもなスペック
縦×横×厚み:242.8×189.7×13.4mm/重量;Wi-Fiモデル0.68Kg。3G+WiFiモデル0.73kg/LCD:IPS方式9.7インチ/画面解像度:1024×768ピクセル/CPU;アップル製1GHz駆動A4/記憶装置:16GB、32GB、64GBのフラッシュドライブ/Wi-Fi(802.11n)とBluetoothを搭載/加速度センサー搭載/電子コンパス搭載/内蔵マイク搭載/ドックコネクタ搭載/公称バッテリー持続時間:10時間
■問い合わせ先
Apple Store
0120-993-993
http://store.apple.com/



