液晶ディスプレイ
日本が誇る国産メーカーから高色域AdobeRGB対応ディスプレイリリース!
RDT262WH
三菱電機株式会社
2009年春現在、一般的なsRGBディスプレイは下克上を迎え、激しい価格競争の並みに襲われている。そんな中で真剣にディスプレイの描写を重視するユーザー向けに リリースされたのが、三菱電機のAdobeRGBディスプレイ、RDT262WHである。一般的な低価格帯は韓国製がメインで、高品質モデルが国産とい う棲み分けの中で、この不景気に新しいディスプレイをリリースするパワーは賞賛に値するだろう。

RDT262WH(BK)
アウトライン
2009年3月現在の価格.com調べで、RDT262WHはおおむね14万円弱前後の価格である。一昔前であれば、CMSユーザー向けのAdobeRGB対応ディスプレイがこの価格帯でリリースされるのは驚異的なことだ。25.5インチ1920×1200ピクセルのビッグサイズであることを考えれば、安い・旨い・大きいと三拍子揃っているといえる恐ろしいディスプレイである。
専用キャリブレーションソフト、ハードウエアキャリブレーション、ノングレア表示面、別売のフードなど、カラーマネージメントを必要とするユーザーには必要なものは最低限揃っているが、キャリブレータも別売り。このあたりは、CMSユーザーであればモニタキャリブレータくらいは持っていることを想定しているであろうし、価格を下げる意味でもありがたいがディスプレイフードくらいは別売りにしないでほしい気がする。というのも、ディスプレイにとってフードは必須アイテムであり、色にこだわるユーザーなら当然用意すべきであるから、14万円前後でも別売1.48万円のディスプレイフードをたすと、だんだんお得感が薄れてしまう。
また、日本っぽいなーと思うのが、DVI-D、DVI-I、D-SUBと三系統用意しているところ。しかも、PCは三台つなぐことが出来る。これは何気に便利なのである。
基本的な部分として、IPS方式で(三菱ではH-IPSと表現しているがHが多い分が何なのかの記載は見あたらない)コントラスト比が1000:1、最高輝度は400cd/㎡、画素ピッチが0.287mm(72dpiよりわずかに大きい)、視野角は178度(ただしコントラスト比10の時)である。
気になる性能
スペックはともかく、実際に使えるのかどうかが知りたいところだろう。まず、実際に設置したら、ノンキャリブでは使えない。キャリブレーションをして使ってほしい。どう使えないかというと、デフォルトでは表示状態が芳しくない。ただ、これは車で言えばシートにビニールがかかっているようなものなのでたいした問題ではないが、設置しただけで安易に使うユーザーは注意してほしい。
12bitでハードウエアキャリブレーションをおこなっていると言うだけあって、キャリブレーション結果は満足行くものであった。また、キャリブをおこなっても、Webなどを見る場合、sRGBモードが必要になることがあるがそれらを瞬時に設定してくれる色域補正機能なるものがあって、かなり便利。
なお、動画性能に関しては、DVDを表示させて見たが何ら問題はない。応答速度は5msだ。これらを見る際は、ピクチャーモードを切り替えると便利だろう。そういった多種多様なユーザー・用途に向けてマルチに対応しているキャリブレーションディスプレイでは珍しく、痒いところに手が届く仕様だ。
なお、このサイズは表示領域で550.1mm×343.8mmだが、実にちょうどいいサイズと言えるだろう。A3をドブ付きパレット表示付きでカバーできるのはありがたい。液晶ディスプレイではビッグサイズでのキャリブレーション表示には限界があるため、おそらく実用レベルの最大値くらいのはずだ。
専用のキャリブレーションソフトの使い勝手は極めて簡単。詳細モードでも一覧で見えるため、ある程度解っているユーザーであれば(用語の意味がわかるレベルなら)よどみなく使えるだろう。色の再現性については、AdobeRGB系のモニタの中ではかなりよい部類に入るだろう。ナチュラルかつ滑らかで使いやすい。再現の難しい赤や緑、青の奥行き深いトーンのあたりも、美しい。これに見慣れてしまうと海外のモデルは使えなくなってしまう。
注意事項として、性能を引き出すのならDVIでコネクトすべきだし、ビデオボードの性能にも左右されてしまうから十分に性能がよい環境で接続しよう。キャリブレーション時はUSBをコネクトしていないとハードウエアキャリブレーションが出来ない。それとディスプレイフードがないとキャリブレーションの結果を堪能できないから、必須アイテムだ。
その他
設置時に気になったのは、ケーブル類の接続がしにくいこと。一回設置したら頻繁に動かすものではないから気にするレベルではないが、モニタをひっくり返さないと接続しにくい関係で画面保護するものをひいてから作業することを強くお薦めする。設置時は接続部分をカバーするフタが突いているがこれも外しにくいことこの上なくて、割れちゃうのではないかという心配をしながら外さなければならない。
スタンドは、ちょっと珍しいダブルヒンジと呼ばれるもの。使い慣れない反面、安定度はピカイチ。筆者は設置したら必ずゆすってみるのだが、バランスの悪いモニタはわずかな揺れでぐらぐらして見にくいがこのスタンドはそういうことはない。しかし、高さを変えるのに画面が前後してしまうなど、使用上注意点は多い。こういったレビューでは長く使うことがないので筆者が「慣れない」為に違和感があるが、実際使い慣れれば高評価になる可能性もある。見たことがない「なんじゃこりゃ?」は必ずしも否定されるものではないからだ。
意外なところで、機動のステイタスを示すランプがブルーのLEDであるところがすごくポイントが低い。まぶしすぎる上に視界に入るのですごく気になる。筆者が購入したらテープでも貼ってしまいたいところだ。
AdobeRGBの色域を約107%抑えると言うのだが、実際、sRGBの表示に比べて輝度と彩度が上がってしまう。見た目上はsRGB表示も狂っているようなイメージすらあるが、このあたりはもっと深い理解がメーカーに必要だろう。これほどの製品を作っているのに少しもったいない。
視野角178度であるが、画面が広すぎる関係で周囲にムラが発生して、少し暗い。当然正面から見れば問題はないが、一般的なディスプレイへの観察距離である50センチ前後ではこのディスプレイサイズでは一番端っこで60度くらいで、左右合わせて120度であるから、コントラスト比最大で178度はスペック上の「見える」レベルであって、端までカラーが維持できる値ではない。普通、そんな端まで使わないから問題はないが気になるところだ。なぜなら、立ち会い校正時など複数人でひとつのディスプレイを見る場合、問題が出てしまうからだ。
ムラ補正機能(シェーディング補正)が搭載されていないため、正対した場合でもムラがある。当然、これらのムラ補正は価格に直結だから我慢すべし、である。いずれも感覚的なものではなく、測定器具を使って測定した結果である。気のせいで記事は書けないから何度も測定して平均を取り比較した。
筆者が必ず行うキャリブレーション後のグラデーション表示の測定では、シャドウ部にねじれが発生しやすい傾向を見た。RGBレベルで5前後のところであり、キャリブレータを変えたりキャリブレーションをやり直すと結果も変わるので、おそらくキャリブレーションの測定誤差であろう。そういったことも確認しやすい高精細とも言えるし、回避するコツとして、キャリブレーションした結果をチェックする癖をつけてダメならちゅうちょせずやり直してほしい。

専用ソフトのコントロール画面。こちらは簡単設定のモードだ。ここでは「自動」が選ばれているが、自動は危険だろう。キャリブレーション自体はこの設定がメインで後は機械任せ

設定の詳細モード。妙に細かく見えるが、設定項目は基本を抑えたつくりで無駄がない。注意したいのが、このアプリケーション、終了させるのにツールバーメニュー内に「終了」がない。その為ショートカットの終了(Macなら?+Q)が出来ない。必ずこのウインドウで終了ボタンを押すかウインドウ右上の×をクリックするしかない

白色点をマニュアル補正できるツールがある。これを使うとSOHOレベル(自分プリンタで出すだけ)ではOKであるがCMSをした意味が無くなるのでデータ出稿は出来ない。注意してほしい。どうしてこういういらん機能を高級モデルにつけるのか理解に苦しむ

キャリブレーション画面。i1pro版。どうせだったら簡単なシェーディングを手動で出来るようにすればいいのに、と思う筆者だ

ハードコントロール画面はCRT時代から踏襲された使い勝手。キャリブレーションを優先しているとカラーコントロールなど選べないメニューがある。その際、解除して指定設定にすることが簡単にできるし、すごいのはそこからキャリブレーション状態に簡単に戻せる

電源表示とハードコントロール時の十字キー。LEDランプ左横の大きめのボタンがで、十字キーに見えないのでちょっと解りにくい

こちらがダブルヒンジ。動きは硬いが、その分、丈夫

AdobeRGBモードでキャリブした表示を撮影したもの

sRGBモードに色域補正機能で表示を変換した例。ボタンひとつで出来るのが便利。ただし、彩度が下がってしまうため、単純にマッピングを変えただけ、という感じ

横倒しにして、コネクタ部分を撮影した。蓋を開けてもアクセスしにくい。くれぐれも強引な作業でピンを折ったりしないように
(矢部國俊)