——プロのフォントの使い方を実例から解く——
気になるフォント、
知りたいフォント。
今回は、書籍『成金商家物語 ~ツンデレおじさんは美人な年下女性をイヤイヤ娶る~/江本マシメサ』のフォントをご紹介。本連載は、デザイン構成において重要な要素「フォント」について、その使い方や選び方をプロの実例ベースで紐解きます。(記事一覧はこちら)
2021年7月21日 取材・文 山口 優『成金商家物語 ~ツンデレおじさんは美人な年下女性をイヤイヤ娶る~/江本マシメサ』
●Illustrator:榎本
絵柄とギャップのあるデコラティブな文字で作品世界を印象深く表現
元騎士という異色の肩書を持つクールな美人妻が、いかつい顔の中年男性をお姫様抱っこしているという強烈なインパクトのイラストや、「暑苦しさ」と「可愛らしさ」のギャップを意識した少女漫画風のデコラティブなタイトル文字などで、作品のユニークな世界観が印象的に表現されている。
使用フォント1(メインタイトル)
「DFPロマン輝白抜W9」
デコラティブな書体で
装画に負けないインパクトを
当初は作品の舞台を意識して海外翻訳文学を想起させる異国感のある書体が検討されたが、馴染み過ぎて面白みに欠けてしまうと判断。そこで装画が持つインパクトや、タイトルの「成金」、「商家」などの言葉が持つ語感を生かすことを重視し、あえてビジュアルに馴染まない装飾過剰でいささかキッチュな印象を持つ書体が選ばれた。おじさんが主人公なのに少女漫画のタイトルに見える違和感を演出するのも狙い。
なお、同書体のバリエーションとして通常の黒塗り書体「DFPロマン輝W9」(ダイナコムウェア)もあるが、タイトルの文字サイズで使用すると印象が強くなり過ぎてしまうため、装画と組み合わせた際の抜け感やバランスのよさを留意して白抜き書体が選択されている。
使用フォント2(サブタイトル)
「筑紫アンティークLゴ B」
表情豊かな筆致の
ゴシック体を選択
サブタイトルの文字は、金属活字や写植文字の伝統を受け継ぎながらも現代的な新しさのある「筑紫アンティークLゴ B」(フォントワークス)に。「ツンデレおじさん」を表すような強いゴシック体のなかでも、筆致がたおやかで抑揚があり、語りかけるようなニュアンスを出せるため選択された。あえて詰め詰めに組んで「暑苦しさ」のようなものを強調する工夫もされている。
使用フォント3 (欧文)
「Rockwell Roman」
おじさんのイメージで
正統派のスラブセリフ体を選択
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