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Web2.0とはなにか?

第32回 Web2.0的ビジネスの考察-3

今回はアップルの音楽ダウンロードサービスであるアイチューンズ・ストアを少し深堀してみます。アイチューンズは、いまやマイクロソフトが心から嫉妬する、音楽・映像コンテンツサービスとなりました。

解説:小川 浩(株式会社サンブリッジ i-クリエイティブディレクター)

[プロフィール]

お がわ・ひろし●1996年、デル、ゲートウェイの代理店としてマレーシアにて日系企業及び在住邦人向けのPC通販ベンチャーを創業するなど、アントレプレ ナーとして活躍。その後日立製作所を経てサイボウズにジョイン。feedpathの基本設計を考案し、フィードパス株式会社のCOOに就任するが、 2007年12月に退任。現在は㈱サンブリッジにて起業準備中。ブロガーとしてSpeed Feed、「Web2.0BOOK」「ビジネスブログブック」シリーズなどの著作がある。

アイチューンズ・ストアのビジネスモデル

アップルの音楽配信サービス、iTMS(アイチューンズ・ミュージックストア)が日本国内で有料音楽配信サービスを開始して早くも2年です。現在では音楽だけではなく動画コンテンツの販売も始まっており、名称がiTS(アイチューンズ・ストア)に改称されています。

iTSは世界で見ても日本国内においても、音楽コンテンツのダウンロードサイトとしては後発です。しかし2007年3月現在、既に他を圧倒する市場シェアを確保しており、文字通りの世界最強の音楽配信サービスです。

前述のように、iTSのコンテンツは徐々にその領域を広げています。楽曲の提供に加えてネットラジオ、動画、オーディオブックやポッドキャスティングなどの音声ファイル、日本ではまだサポートされていないが映画やテレビ番組の配信などの複数のコンテンツを提供しています。

iTSの、さまざまな外部コンテンツを一つのインターフェイス、一つのビジネスモデルの中に取り込みながら拡大していくというモデルは、技術とビジネスの組み合わせ、ソフトとハードの組み合わせによる新規価値創造という意味で、マッシュアップ的なサービスであるといえるのです。

コンテンツが拡大している「iTS」
コンテンツが拡大している「iTS」

CGM的要素を持ったiTS

iTSは、iTunes(アイチューンズ)という独自ソフトを経由して利用されますが、従来型の楽曲管理ソフトとは異なり、楽曲の仕訳を「よく聞いている曲(トップ25)」や「いつ再生したか(最近再生した曲)」などを基軸に行っています。つまりアーチスト側が行った編集結果(アルバムという形式)を完全に無視してしまうのです。プロが編集されたコンテンツを分解してしまい、ユーザー自身の嗜好に編集を任せてしまうことになります。

さらに、「iMix」というサービスでは、自分でセレクトした楽曲を、1つのアルバムであるかのようにまとめて、好きな名前を付けて第三者に一種のコンピレーションアルバムとして発表することができます。もちろん他のユーザーがこれを購入することも可能になっています。

iTSは、CDアルバムという、レイアウトされデザインされたパッケージ、アーチストの"編集"努力を完全に否定してしまう過激なサービスであることは特筆すべきです。一種のCGM(コンシューマー・ジェネレイテッド・メディア)といえるからです。

音声コンテンツを配信するフィード技術、いわゆるポッドキャスティングが流行しつつあることも、iTSがCGMであることを裏付けています。動画コンテンツを配信するフィードとしてボッドキャスティングもまた流行の兆しを生んでいます。また、YouTubeのような動画共有サイトの登場にもその傾向が見られているといえるでしょう。

リアルとのマッシュアップが進む


iTSでダウンロードした曲はもちろんパソコン上で再生できるわけですが、基本的にはiPodに保存して外出先で聞くことになります。もともとiPodがブレイクしたのはiTSのサービスが普及したためですが、今ではiTMSのほうがiPodの大ヒットに守られているといえるでしょう。

アップルは、iPodに接続して利用する周辺機器を作るメーカーに対して仕様を公開し、ライセンス料をとっています。いわゆる
iPod税です。周辺機器メーカーがさまざまなシーンに応じてiPodを利用できる機器をリリースしているため、いまでは、自宅にいるときには、iPod専用のアンプ付きスピーカーであるiPod Hi-Fiに愛用のiPodを差して音楽を楽しみ、歩いているときでも、車に乗っているときでもバイクにまたがっているときでさえも同じようにiPodを使えるようになってきています。

ナイキとの連携で、短距離限定ですが、iPodに通信機能がつくことなったことで運動しているときにもiPodを使う楽しみがさらに拡大しています。今後は省電力型で短距離の無線機能「Bluetooth」かなにかで携帯電話を介して、インターネットに接続しながら、緊急ニュースはスピーカーを通してドライバーやライダーに知らせるような機能が開発されるかもしれません。

リアルとWebのマッシュアップこそが真のWeb2.0のインパクトであるとは何度も繰り返していますが、なかなか理解されることがないのは残念です。

■今回のポイント

CGMはユーザー側に収集するべき情報の種類や、それらの価値を決定する権利を委ねることでもあります。アイチューンズ・ストアのビジネスにもその考えが当てはまります。

次回をお楽しみに!!
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