
第78回 既に始まっているケータイ市場の生態系異変
先日、三菱電機が携帯電話開発をストップし、市場から撤退するというニュースが流れました。この三菱電機の決断は、さまざまな要因によるものではあると思いますが、iPhoneあるいはAndroidによる、ケータイ革命という巨大な津波がくる前の一つの予兆にすぎません。そもそも一つの市場に日本ほど多くのメーカーが集まっているところは他に無いのです。
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[プロフィール] お がわ・ひろし●1996年、デル、ゲートウェイの代理店としてマレーシアにて日系企業及び在住邦人向けのPC通販ベンチャーを創業するなど、アントレプレ ナーとして活躍。その後日立製作所を経てサイボウズにジョイン。feedpathの基本設計を考案し、フィードパス株式会社のCOOに就任するが、 2007年12月に退任。現在は㈱サンブリッジにて起業準備中。ブロガーとしてSpeed Feed、「Web2.0BOOK」「ビジネスブログブック」シリーズなどの著作がある。 |
モバイルインターネットの実情
先日、ケータイ向け公式サイトで着うた/着メロなどの配信事業を行っているベンチャーの、モバイルファクトリーの宮嶌社長と懇談する機会を得ました。
宮嶌さんによると、公式サイト以外、いわゆる勝手サイトで収益を上げているのはDeNAのモバゲータウン、あるいはmixiくらいのもので、その他の勝手サイトはなかなか広告枠を埋められず苦労している、ということでした。公式サイトにこそ、現在のモバイルネット市場の収益源がある、というのです。
一般的な見方をすると、Googleが参入し、ケータイとPCのWebの垣根が崩れ始めたことによって、公式サイトという名前のキャリア主導の囲い込みがすこしずつほころび始めているような感覚があったため、この指摘は非常に驚きでもありました。

鎖国状態を強める日本のケータイ
まず、キャリアを見ると、日本の三大キャリア(ドコモ、KDDI、ソフトバンク)は日本国内市場だけの、”水槽の中の”巨大魚であり、世界市場では全く存在感がありません。さらに携帯電話メーカーはNEC、シャープ、ソニーエリクソン、日立、パナソニック、京セラなど数社がしのぎを削っていますが、この1-2年に三洋電機と三菱電機がついに脱落し、いよいよ淘汰が始まってはいるものの、いまだに一つの市場の中には多すぎる状態です。しかも世界の携帯電話端末市場をみると、ノキア、モトローラ、サムソン電子の3社が70%近いシェアを独占し、日本メーカー全部のシェアを足しても十数パーセントにしかならない状況です。
日本のケータイは、ワンセグ対応や、電子マネー対応、SuicaやPASMOといった交通システムとの連携機能を取り込むことによって、独特の進化を遂げつつあります。これらの、日本国内にしか通じない特殊仕様は、日本人にとっては便利ではあり、他国のケータイにとっての参入障壁ではあります。しかし、逆に言うと、既に飽和しつつある日本市場にのみフィットすることで、海外市場への進出をどんどん阻んでしまうことにもつながる、非常に危険な兆候なのです。
PCとモバイルインターネットの融合が進む海外市場
日本のモバイルインターネットは、日本国内、および各キャリアの仕様に縛られた中で進化した、非常に特殊なものです。便利ではあるが、独特の決めごとに従うしか無い世界です。しかし、海外で始まっているモバイルインターネットの新しい波は、あくまでもPCと同じインターネットへの接続であり、狭い画面と不自由な使い勝手という制約を新しいインターフェイス(iPhoneのマルチタッチテクノロジーなど)によって乗り越えつつ、PCと同じ世界へとつながりはじめているのです。
日本のモバイル市場の現状はともかく、数年以内にこの状況は破壊されてしまうと筆者は考えています。ちょうど、日本のパソコンやワープロが世界標準のWindowsに完全に駆逐されてしまったように。
日本のモバイルインターネットはいまや世界的には単なる大きめの湖です。次回も、この危険な兆候に対する警鐘をならしていきます。
次回をお楽しみに!!





