
第57回 ネットビジネスも”iPod”を目指せ 前編
iPod touchを入手したひとも多くなってきたようです。Windowsユーザーにとっては嬉しくないバグが出ているようですが(苦笑)。iPodとはいったいなにか、今日はもう一度検証してみましょう。
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[プロフィール] お がわ・ひろし●1996年、デル、ゲートウェイの代理店としてマレーシアにて日系企業及び在住邦人向けのPC通販ベンチャーを創業するなど、アントレプレ ナーとして活躍。その後日立製作所を経てサイボウズにジョイン。feedpathの基本設計を考案し、フィードパス株式会社のCOOに就任するが、 2007年12月に退任。現在は㈱サンブリッジにて起業準備中。ブロガーとしてSpeed Feed、「Web2.0BOOK」「ビジネスブログブック」シリーズなどの著作がある。 |
ポータブル音楽プレイヤーの歴史
初代ウォークマンが登場したのはいまから十数年前のことです。この初代ウォークマンとiPodは音楽を携帯できる、という点については同じカテゴリに入るガジェットですが、実はまったく異なる製品でもあります。
この二つの大ヒット商品の最大の違いは、初代ウォークマンはメディアではなく、iPodはメディアであるということです。どういう意味かと言うと、ウォークマンはカセットテープというメディアにコンテンツ(楽曲)を記録し、そのメディアを再生するためのツールであり、iPodはそれ自体がメディアであるということです。
言ってみれば、初代ウォークマンに代表されるカセット型音楽プレイヤーからCDプレイヤー、及びMDプレイヤーに至るまでのポータブル音楽プレイヤーは、コンテンツ、メディア、ファンクション(再生機能)が、3つに分離しているわけです。
対してiPodに代表される、いわゆるMP3型音楽プレイヤー(ネットワークウォークマンなどの最近のすべての音楽プレイヤーは当然このタイプです)は、メディアとファンクションが一体化しています。
便宜上、前者を「メディア|ファンクション分離型」として、後者を「メディア|ファンクション一体型」と呼んでおきましょう。
とはいえ、CDをリッピングして音楽をPCやMacに取り込む作業をしなければならないうちは、「メディア|ファンクション一体型」とはいえ、メディアとファンクションの一体化のための”儀式”は結構めんどうなものでした。時間がかかるうえに、プレイヤーに記録できる楽曲数はわずかに数十曲。聴きたい曲は毎日違うわけで、たびたび曲を入れ替えるのは本当に面倒くさいものです。
この面倒くささをiPodはそれまでのフラッシュメモリやメモリスティックのようなメディアではなく、HDDを搭載することによって一気に1000曲分の記録を可能にしたうえ、USBを遥かに超える速度を持つファイアワイヤーという接続プロトコルを実装することによって、儀式の簡略化を成し遂げました。これがiPodが成功したゆえんです。

音楽プレイヤーの技術側面
メディアの進化・変遷と同時に、コンテンツの記録方式もまた変化します。つまり、MP3というフォーマットの採用です。そもそもMP3とはなにか、ですが、ここはWikipediaを引用してみましょう。
『MP3(エムピースリー、MPEG-1 Audio Layer-3)はデジタル化された音声を圧縮する音声ファイルフォーマットのひとつ。コンパクトディスクなどのPCM音声を、通常の鑑賞に堪える範囲で元データの約1/10まで圧縮することができる。』
出典:Wikipedia
つまり、JPEGなどの画像圧縮技術と同様で、音声データの圧縮技術であり、音楽を聞く上で十分な音質を保てるレベルと、記録容量をなるべく小さく済ませるという、相反する要求に応える技術なわけです。
実は、MP3プレイヤーは、従前の「メディア|ファンクション分離型」の進化形として登場したのではありません。そうではなくて、MP3というフォーマットの利用方法として考案されたガジェットなのです。「メディア|ファンクション分離型」のプレイヤーは、必ずしも音楽コンテンツの制作側とは対立していませんでした。音楽業界は、楽曲というコンテンツを売っているというより、コンテンツを含んでいるCDというメディアを売っています。メディアとファンクションが分離されているということは、CDを売ることの妨げにならないからです。ところがMP3プレイヤーは、「メディア|ファンクション一体型」プレイヤーは、メディアとコンテンツの分離を前提とします。iPodとiTunesの組み合わせは音楽業界に、メディア(CD)ではなくコンテンツ(楽曲)を売ることを迫ることになります。

MP3とRSS
ここで触れておきたいことは、MP3とRSSが非常に似た境遇にあるテクノロジーであるということです。XMLを用いて、主にテキストを中心としたコンテンツを配信するためのWebサービス、それがRSSです。MP3は数多のチープなMP3プレイヤーに失望させられ続けながら、 ついにiPodおよびiTunes という最高のパートナーを得ることによって、素晴らしい結婚を果たし、そして世界中へと広がっていきます。
RSSは、Blogというパートナーを得て世界中に広まりましたが、残念ながらいまだに利用状況は黒子のままであり、その機能を十分に使われているとは言えない状況です。Web2.0は何度も繰り返していますが、RSSの有効活用が真に為されて初めて次のステージにいけると考えています。そのためにはMP3がiPodに出会えて花開いたように、RSSもまた、大きく花開くために”iPod”が、最高のパートナーが必要です。これまでの、いわゆるRSSリーダーはiPodではなく従来のMP3プレイヤーのようなものです。RSSにとってのiPod、それを見つけたときに、Webは次のステージに向かうでしょう。
技術はよい使い道を得て進化します。すべての技術は、”iPod”を必要としているのです。
次回をお楽しみに!!





