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第59回 SNS - 事業化は易し、継続繁栄はなかなかに難し

2026.5.3 SUN

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Web2.0とはなにか?

第59回 SNS - 事業化は易し、継続繁栄はなかなかに難し


iPod touch、ようやく届きました。無線LANがあればWebの閲覧やYouTubeのコンテンツを楽しむことができることに、分かってはいても感動しました。FLASHやあまりにJavaScriptを多用するようなサイトは見ることができませんが、GmailやGoogleカレンダーの実用には堪えます。それはさておき、今回はSNSというビジネスモデルの持つある種の難しさについて考えていきましょう。

解説:小川 浩(株式会社サンブリッジ modiphi事業部エグゼクティブプロデューサー)

[プロフィール]

お がわ・ひろし●1996年、デル、ゲートウェイの代理店としてマレーシアにて日系企業及び在住邦人向けのPC通販ベンチャーを創業するなど、アントレプレ ナーとして活躍。その後日立製作所を経てサイボウズにジョイン。feedpathの基本設計を考案し、フィードパス株式会社のCOOに就任するが、 2007年12月に退任。現在は㈱サンブリッジにて起業準備中。ブロガーとしてSpeed Feed、「Web2.0BOOK」「ビジネスブログブック」シリーズなどの著作がある。



出会い系サイトからSNSへ


現在の日本のSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)は、筆者の持論ではWeb1.0時代のサービスであり、その進化をみればWeb1.9的、とよぶべき存在です。Ajaxなどの華やかなインターフェイスを持っているわけではなく、サービスも、その中にあるコンテンツも閉じられた世界に閉じ込められており、いわゆるデータサイロです。データサイロとは、データがしまい込まれて再利用や広く共有されていかない状態やサービスを指しますが、この点から考えると、mixiほど巨大な規模があって初めて、どうやら2.0的な要素を持てるサービスであると思います。

実際、1990年代後半にはいわゆるコミュニティサイトが今日のSNS的な機能を持ち始めていました。その多くは、継続的なコミュニケーションというよりは、新たな出会いの発生にサービスの軸を置いていたため、男女の出会いの場、いわゆる出会い系サイト、として見られることがほとんどでした。当時SNS的なサービスを志向したベンチャーは、どうやってその出会い系イメージを払拭するかに頭を悩ませたものです。

海外ではSixdegrees.comやOrkut、Friendsterなどの本格的なコミュニティが先行して立ち上がり、市民権を得つつSocial Networking Serviceという呼称を使用し始めたのが同じ時期です。特にSixdegrees.comは、シックスデグリー、つまり、知人の知人、そしてまたその知人、というように人脈をつなげていくと6人目の段階(Six Degrees of Separations)で世界中の人とつながる、という仮説をベースにサービスの考え方を示しました。この仮説は、あながちでたらめではなく、たとえば日本の高校生の携帯電話には平均して50-60人の電話番号が登録されているという報告がありますが、たとえば50を6乗して、この数字を当てはめてみると、世界人口を軽く超えることになります。

こうした仮説をネット上に置き換えたサービス、という言い方は、単なるコミュニティや出会い系とはひと味違う、科学的もしくは非常に友愛的なイメージをSNSに持たすことになったのかもしれません。出会い系イメージの払拭に必死になっていたコミュニティサイト側にとっては福音だったことでしょう。実際、GREEはこのSix Degreesからその名をとったとのことです。

mixi
GREE



SNSという事業モデルではなく特定のSNSが生き残った


コミュニティサイト冬の時代を生き延び、あるいはリニューアルもしくは新規挑戦をした結果、現在ではアメリカではMySpaceとFacebook、日本ではmixi、GREE、そしてケータイSNSであるモバゲータウンが主要なSNSとして成長を続けています。

しかし、彼らと同時に事業を開始したその他のSNSのほとんどは既に市場からの撤退をしているか、完全に成長が止まってしまったところばかりです。日本ではWeb2.0の代表例として語られることの多いSNSですが、事業モデルとしてはインターネットの黎明期から存在するものであり、かつリテラシーの高いパワーユーザーばかりを相手にしていては規模を巨大化できない。そして、巨大化しないと生き残れないモデルでもあるために、どうしてもAjaxに代表されるような新しいテクニックを前に出しづらく、結果として少し時代遅れの技術を引きずることになりがちなサービスです。もちろんそれが悪いわけではなく、事実としてそうなりがちだ、ということです。

SNSは基本的に無料で、ユーザーから何らかの代償を回収しようとすればかなりの人数の流出を避けられないということで、成長期には広告も課金もなく、ひたすらユーザーを喜ばすことに専念せざるを得ません。ある程度の人数を確保すれば滞在時間の長さを武器に広告収入を期待できますが、やはり最終的には何らかの手段でユーザーに課金するという道を考えるものです。

mixiの場合はプレミアムサービスという課金サービスもありますが基本は広告収入を最大化する道を選び、GREEは現在アバターなどのユーザー向け課金サービスの活性化を狙う道を選んでいます。モバゲータウンは現時点ではmixi、GREEの両者のよいところをうまく併せ持っているようにみえます。


不安定なコミュニティ運営のリスク


現在、ご存知の方は多いと思いますが、mixiとGREEのコミュニティ運営が若干荒れ気味です。

mixiは突然のインターフェイスの変更がユーザーの反感を呼んでいますし、GREEはアバターの利用が必須になったことが問題となっています。mixiの場合は多くは慣れの問題もあり、自然に沈静化するとは思いますが、GREEのケースはサービス開始当初からのユーザーはアバターのような少々若年層向けのインターフェイスにはついていけないことも多く、相当のダメージがあるように思えます。

もちろん、もっと上手な告知方法や緩やかな変化を進める方法があったかもしれませんが、彼らの決定が悪いわけでもなく、長い目で見れば次の成長のための小さな痛みであった、と振り返られるかもしれません。

ただここで言いたいのは、SNSという事業モデルそのもののは非常に難しい、ということです。SNS自体が優れたモデルであるということではなく、たまたまMySpaceやmixiらが生き残れた、というだけだということなのです。

ちょっとしたボタンのかけ違いで、従前に消えていったSNSたちと同じ運命を辿らないとは誰にもいえない。それはどんな事業モデルにもいえることですが、SNSは参入が易しそうに見えるだけに、本当の怖さ難しさがなかなか分からないようです。






■今回のポイント
SNSはまるで飛行機やヘリコプターのように、始終バランスをとりつつ、加速しつけなければすぐに失速し失墜しかねない難しさをはらんでいます。技術的な参入障壁が低いだけに新たにSNS的なサービスに取り組むことを考える企業も多いかもしれませんが、相応の覚悟が必要です。


次回をお楽しみに!!
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