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Web2.0とはなにか?

第73回 2008年のネットトレンド Microsoft VS Google


前回に引き続き2月1日、あるニュースが世界を騒然とさせました。マイクロソフトがYahoo!に対して446億ドル(約4兆7600億円)で買収したいという提案したというのです。明らかにGoogle対抗のこの提案を、Yahoo!の取締役会は前向きに検討すると回答。Yahoo!の株価は急騰しています。こうした合従連衡が今後も続くと思われますが、いよいよIT業界はマイクロソフト対Googleの二極分立の様相を呈してきました。


解説:小川 浩(株式会社サンブリッジ modiphi事業部エグゼクティブプロデューサー)

[プロフィール]

お がわ・ひろし●1996年、デル、ゲートウェイの代理店としてマレーシアにて日系企業及び在住邦人向けのPC通販ベンチャーを創業するなど、アントレプレ ナーとして活躍。その後日立製作所を経てサイボウズにジョイン。feedpathの基本設計を考案し、フィードパス株式会社のCOOに就任するが、 2007年12月に退任。現在は㈱サンブリッジにて起業準備中。ブロガーとしてSpeed Feed、「Web2.0BOOK」「ビジネスブログブック」シリーズなどの著作がある。



インターネットをなぜか理解できていないマイクロソフト 

Googleは世界中の優秀な人材を積極的に集めていることで有名ですが、マイクロソフトもその点については人後に落ちることはありません。人材の豊富さでいえば、企業価値の高さと比例して、本当に優れた企業です。しかし、現状を見る限り、大男、総身に知恵がまわりかね、ということわざどおりに、その企業規模とあまりに多くの事業に手を付けてしまっているために、その実力を発揮できていない、という気がします。

マイクロソフトは、1995年12月8日にビル・ゲイツがいわゆる「インターネット宣言」をして、すべてのマイクロソフト製品をインターネット活用を前提に作る、という表明をしました。当時マイクロソフトはネットスケープ社との激烈なブラウザ戦争をしており、ネットという広大な宇宙につながる中空の穴=ブラウザのトップ争いをしていました。ご存知の通り、マイクロソフトはこの戦争に打ち勝ち、ブラウザ市場を押さえたのですが、彼らがやったことは、その中空の穴をIEというブラウザで塞いでしまうことであり、積極的にその穴を自身がくぐり、ネット自体を制圧しようとはしなかったのです。

代わりにネットの穴を、ブラウザというソフトウェアではない別の方法(=ポータル)で広げようと考えたのがYahoo!を代表とする新たなインターネット企業群です。マイクロソフトは慌てて、当初はISPとして作っていたMSNをポータルへと化粧直しして対抗しましたが、またしても出遅れ感は否めなかった。彼らはOSは知り尽くしていても、ネットについての感覚は常にどこかずれていたのです。

ネットにつながる穴をブラウザ、あるいはポータル、という方法でおさえようと、マイクロソフトがYahoo!らをおいかけているうちに、今度はその穴ではなく、穴の中自体を整理して、ネットそのものを制圧しようとする新たな挑戦者が登場していました。つまり、Googleです。

穴を塞ぐことにのみ血道をあげていたマイクロソフトには、穴の奥、その中の世界自体が急速に拡大していることを知ってはいても、そのサイズと成長速度を体感することができていなかった。ここでも彼らの感覚のズレは生じていたのです。



Googleの試み


反対に、Googleはインターネットを本当によく理解しています。

彼らがやったことは、検索エンジンによってインターネット全体を整理して、データベースとして成り立つようにすることです。検索エンジンはいったん検索対象のデータをサーバーにすべて格納し、インデックス化するというプロセスを行ないます。

Googleは、90年代末のインターネットのデータ量を正確に見積り、1週間くらいで自分のサーバーにほぼすべての情報をインデックスできると見積もりました。このことは重要なことです。インターネットのその時点でのボリュームと、成長速度を算出し、それを上回る規模と速度を持つ環境を自前で作り上げるわけですから、その環境を作るということ以上に、その環境を作るための試算がなされていました。

しかも正しい計算をしていた、ということが凄い。マイクロソフトとは違って、Googleは計算と肌感覚でインターネット自体を理解していたということになるのですから。


マイクロソフトとYahoo!の結婚は成立するか?


Yahoo!は去年、創業者であるジェリー・ヤンをCEOに据えて、インターネット業界のレジェンドを中心とすることによって社内の求心力と、世間に対するネット業界の老舗としてのブランド力の強化をはじめました。

現在のインターネット業界では、テクノロジーとブランドの両面での充実をしないことには生きていけません。単なるメディア事業では、成り立たなくなっているからこそ、Yahoo!はヤンをCEOにしたのです。しかし、残念なことにまだその効果は薄く、減益が続いています。だからこそ、Yahoo!の経営陣はこれまで幾度となくあったマイクロソフトからのプロポーズを断り続けてきた姿勢を改め、前向きに検討すると回答したのでしょう。

つまり、Yahoo!の側でもGoogleの躍進によって危機的な状況にいることを理解しており、自身で対抗することに自信を失いつつあったといえます。そこにもって日本円にして4兆円を超える持参金を提示されてしまえば、揺れ動くのもムリはないでしょう。


ジェリー・ヤンの米国Yhaoo!のCEO就任にみる、「スター」の必要性
Yahoo! ジェリー・ヤン氏「web2.0はMyMedia」??


ただ、この結婚がYahoo!というサービスにいいかどうかは正直疑問です。Yahoo!にも優れた人材は多く、Google対抗のサービスを作っていくだけの開発力はもっています。たとえば、複数のRSSフィードをつなぎ合わせてリミックスするYahoo! Pipesなどは、一般的な認知は低いがとても先進的なサービスです。

ネットのリテラシーが低い人だけを対象にするのではなく、ギーク層にも評価されるようなサービスを作らないと、テクノロジー企業としての魅力もブランドも作れないのです。


しかし、そうした優秀な人材が、マイクロソフトの元で働きたいか、というと、それは別の話です。マイクロソフトに買収されることによって得たお金を使って創業したり、既存のスタートアップベンチャーに人材が流出すれば、元の木阿弥なのです。



■今回のポイント
マイクロソフトとYahoo!の買収話に関する話題は、今年最大の業界ニュースです。この話はもう少し続きます。



次回をお楽しみに!!
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