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第80回 スタートアップ企業のありかたとは? その2

2026.5.3 SUN

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Web2.0とはなにか?

第80回 スタートアップ企業のありかたとは? その2


起業まもないベンチャーのことを、スタートアップ企業、もしくは単にスタートアップ、と呼びます。このスタートアップが成長軌道に乗るまでに、しなくてはならないことを考えていきます。Web2.0時代は新しい起業スタイルも生んでいく社会現象です。


解説:小川 浩(株式会社サンブリッジ modiphi事業部エグゼクティブプロデューサー)

[プロフィール]

お がわ・ひろし●1996年、デル、ゲートウェイの代理店としてマレーシアにて日系企業及び在住邦人向けのPC通販ベンチャーを創業するなど、アントレプレ ナーとして活躍。その後日立製作所を経てサイボウズにジョイン。feedpathの基本設計を考案し、フィードパス株式会社のCOOに就任するが、 2007年12月に退任。現在は㈱サンブリッジにて起業準備中。ブロガーとしてSpeed Feed、「Web2.0BOOK」「ビジネスブログブック」シリーズなどの著作がある。



カラカニス氏のアドバイス


さて、著名なシリアル・アントレプレナーであるカラカニス氏は、スタートアップの経営者としての心得をどのように書いているのでしょう。まず先週のおさらいをしながら、僕のコメントを書いていきます。


# Buy Macintosh computers, save money on an IT department
マックを買え。節約になる。

Macを買うことがなぜ情報システム部門の節約になるのか、ということには各所から異論がでてきそうです。本当のところはわかりませんが、シリコンバレーにはMicrosoft嫌いな人が多く、カラカニス氏もその一人、というだけかもしれません。


# Buy everyone lunch four days a week and establish a no-meetings policy. Going out for food or ording in takes at least 20-60 minutes more than walking up to the buffet and eating. If you do meetings over lunch you also save that time. So, 30 minutes a day across say four days a week is two hours a week... which is 100 hours a year. You get the idea.
週に4回はランチを社員におごれ。ランチで外出されると20-60分も返ってこないし、ランチをしながらミーティングすればいい。

ランチをおごる必要があるかどうかはわかりませんが、社員と極力コミュニケーションをとる必要があることはいうまでもないでしょう。昼休みくらい仕事のことを忘れて、世間話をしたほうが頭を休めることになる、と思わないでも無いですが、実際には人間の脳というものはそれほどヤワではないので、食事をしながら視点を変えて開発や販売戦略について、ブレーンストーミングをしてランチタイムを費やすことは一種のアクティブレストで良いことだと思います。


# Buy cheap tables and expensive chairs.
机は安物でいい、椅子はいいモノを買え。

これは正論で、机がどんなにいいものであっても疲労軽減には役立ちませんが、椅子は出来の悪いものであれば腰や背中への負担は重くなります。


# Don't buy a phone system. No one will use it. No one at Mahalo has a desk phone except the admin folks. Everyone else is on IRC, chat, and their cell phone. Everyone has a cell phone, folks would rather get calls on it, and 99% of communication is NOT on the phone. Savings? At least $500 a year per person... 50 people over three years? $75-100k
電話は買うな。みんなケータイくらいもっているし、チャットできる。

カラカニス氏がいうように、社内外とのコミュニケーションの99%はメールやチャットによるもので、既に電話のコストパフォーマンスはあまりにも割高です。会社として電話が無い、というわけにはいかないでしょうが、ほぼ受信専用となることは間違いないので電話機そのものは社員全員に買うような馬鹿なことはやめたほうがいいでしょう。


# Outsource accounting and HR---such a no brainer.
総務とか人事はアウトソースしろ。

これは難しい判断ですが、スタートアップであるという前提では、確かにそのほうがいい。事実、モディファイでもそうしています。


# Don't buy everyone Microsoft Office--it's too much money. Put Office on three or four common computers and use Google Docs.
MSオフィスは買うな、Google Docsでいいじゃないか。

# Use Google hosted email. $50 or free per user.... how can you beat that?!?! Why screw with an exchange server!?!?
メールもGmailでいい。メールサーバなんて買うな。

これも100%同感です。Microsoft製品にお金を出すことは、スタートアップにとってはほぼ無駄です。この原稿もGoogle Docsで書かれています。また、Gmailの優秀なスパムフィルターは本当に素晴らしい出来です。


# Buy your hardest working folks computers for home. If you have folks who are willing to work an extra hour a day a week you should get them a computer for home. Once you get to three hours of work a week from home you're at 150 hours a year and that's a no brainer. Invest in equipment *if* the person is a workaholic.
働き者の社員には自宅用のパソコンも買ってやれ。そうしたら自宅でもガンガン働いてくれる。

正直PCを買い与えるほどの余裕がないスタートアップが多いと思いますが、少なくとも社員が自宅で働いてくれることを心のどこかで期待しないスタートアップ経営者はいません。


# Fire people who are not workaholics. don't love their work... come on folks, this is startup life, it's not a game. don't work at a startup if you're not into it--go work at the post office or stabucks if you're not into it you want balance in your life. For realz.
ワーカホリックじゃない社員はクビにしろ。スタートアップはゲームじゃない、時間通りバランスよく働きたいならスタバか郵便局で働くべきだ。

日本だと郵便局も民営化されましたので、この表現があたっているかは分かりませんが、少なくともスタートアップは人生賭けての勝負なので、ゲームじゃないことは確かです。時給換算で仕事をするのではなく、将来の成功を如何に早く引き寄せるかを考える以上、アンバランスかつ過度なオーバーワークこそスタートアップの美徳です。(健康には留意して・・・)


# Jura espresso machineGet an expensive, automatic espresso machine at the office. Going to starbucks twice a day cost $4 each time, but more importantly it costs 20 minutes. Buy a $3-5,000 Jura industrial, get the good beans, and supply the coffee room with soy, low fat, etc. 50 people making one trip a day is 20 hours of wasted time for the company, and $150 in coffee costs for the employees. Makes no sense.
美味しいエスプレッソマシンを買え。スタバにいちいち買いにいくのは時間の無駄だ。

# Stock the fridge with sodas---same drill as above.
冷蔵庫に飲み物を常に置いておけ。上と同じ理由。

実はモディファイでもオフィス移転の際にエスプレッソマシンを購入する予定です。 社内は禁煙なので喫煙者は外に吸いにいくことになりますが、僕自身が非喫煙者であることもありますが、基本的に今後は喫煙者を雇いたくない、とも思っています。


# Allow folks to work off hours. Commuting sucks and is a waste of time for everyone. Let folks start at 6am or 11am and you'll cut their commute in half (at least in LA).
時差通勤を認めろ。通勤時間を節約してもらえ。

時差通勤もそうですが、できれば会社を24時間操業にしたいと思うスタートアップ経営者は多いはずです。常にお客様のサポートができる体制にするということを目指したくない経営者はいません。


通常起業家というものは、学生時代か、ある程度の社会人経験を積んだ後に職を辞したうえで、自分のアイデアとわずかばかりの資金を元手に事業を興す人たち のことを指します。当然失敗する人もいるし、成功する人もいますが、起業家、といういい方をする際には、脱サラや継続性のある安定した中小企業を作るとい うのではなく、ベンチャー企業として大きな成功を目指すひと、というニュアンスが強いといっていいでしょう。

大きな成功、といういい方をしましたが、これはすなわちIPO(新規株式公開、上場)のことです。特に日本では、起業してベンチャーを興すということはす なわち上場を目指すということですが、それ以外の道、成功の形も存在します。それはM&A(企業売買)です。つまり、作った会社の企業価値を向上 させて、数倍の価値をつけた上で他の企業に買ってもらうのです。こうして、会社を作っては売り、売っては作るタイプの起業家を、シリアル・アントレプレ ナー(連続起業家)と呼びます。日本ではあまり多くないタイプの起業家といえるのではないでしょうか。

今回物議を醸し出す発言をしたカラカニス氏はある意味典型的なシリアル・アントレプレナーです。他にもテクノラティの創業者であるデビッド・シフリー氏 や、ネットスケープ創業者のジム・クラーク氏もシリアル・アントレプレナーであると言えるでしょう。日本では「一所懸命」という感じで、一つの会社に尽く すタイプというか、上場するまで頑張り通す形の起業家が好かれるきらいがあり、同時にM&Aを毛嫌いするムードもあるので、シリアル・アントレプ レナーは存在しづらいのかもしれませんが、米国では数多くのシリアル・アントレプレナーが活躍しています。



スタートアップの重要用語

スタートアップの最重要かつ緊急な仕事は資金調達であると書きました。スタートアップ経営者が知っておくべき用語を以下に書いておきます。

第三者割当増資
その名の通り、第三者、つまり現時点の株主以外(別に現行の株主が参加しても良いのですが)の投資家に対して株式を売ることによって、資金を調達することです。
後から入ってくる株主なので、現在の株主が購入した株価よりも高い金額で売ることになります。もし現在10000株の発行株式があるとすれば、そのうちの何株かを売る(=例えば10000株のうち1000株を売る)ということもありますが、増資の結果会社に入ってくる金額が少なくなるので、通常は別途発行します。つまり、10000株の発行株式数の会社が2000株を新たに発行して資金を得れば、増資後は12000株、となります。

企業価値(バリエーション)
発行株式数に株価を掛けた金額を企業価値といいます。発行株式数が10000株で、一株あたり10万円とすれば、企業価値は1億円です。もしこの会社を買収しようとすれば、少なくとも51%の株式を入手しなくてはなりませんので、5100万円の資金がいるということになります。

プリマネー
第三者割当増資を行う際には、投資家に対して株式を売らなければなりませんので、一株あたりいくら、と金額を提示しなくてはなりません。
上述の例なら、1億円の企業価値なら、一株あたり10万円で提示することになります。通常は、直近の増資の時点よりも成長しているはずという理由でプレミアムをつけて提示します。この場合なら、プレミアムを20%とすれば、12万円が株価、1億2000万円が企業価値です。
増資前の企業価値(この場合は1億2000万円)をプリマネーといいます。

ポスト
ポストというのは、増資後の企業価値です。上述の例なら1億2000万円のプリマネーに対して、仮に6000万円の増資を行ったとすれば、ポストは1億8000万円になります。この場合、株価が12万円ですから、発行した新株は5000株になります。つまり、増資後の発行株式数は15000株となります。

資本政策
上述のような考え方をベースに、自社の成長と株価をリンクさせ、必要な時期な必要な資金を増資しながら上場へと向かうための戦略を資本政策といいます。
スタートアップの経営は、資本政策をどれくらい正確に実行できるかにかかっているといえるでしょう。

ストックオプション
主に創業メンバーに与えられる特権で、予め安い金額(例えば設立時なら、一株5万円で設立したとすれば、その金額)で新株を発行してもらえるという権利を得られる制度です。これによれば、首尾よくスタートアップが成長し、上場を果たしたときに株価が50万円になれば、50万円の株式を5万円で購入できます。つまり、単純計算で45万円の差額が利益になるわけです。実際には税金がかかりますし、その権利の行使条件が厳しかったりと、以前ほどうまみはなくなっていますが、これがスタートアップで働く最大のメリットです。


スタートアップの基本的な考え方
スタートアップの基本的な考え方



スタートアップに入りたい?


スタートアップで働くことが非常にハイテンションで、ストレスが多いことは容易に想像できると思います。実際に資金調達がうまくいかずに胃に穴があいたり、点滴をうっている経営者をよく知っています。

経営者のみならず、本来は社員にも同じようなプレッシャーがかかります。これが少なくとも数ヶ月は続くのですから、スタートアップで働きたいと考える前に、自分の適正を考えた方がいいかもしれません。

それに、昨今の株式市場をみていると、上場してもそれほど多くのリターンはなく、上場成金やにわか億万長者という言葉は今や死語です。

しかし、それでも、宝探しにロマンを感じる人がいまだにいるように、スタートアップに身を投じて誰も生み出したことのない新しい事業を興すという試みをすることに、たまらないほどの興奮を覚えるという人は多いのです。



■今回のポイント
スタートアップとは、創業間もないベンチャーのことです。スタートアップの基本的な知識を今回得られたと思います。活用してみてください。


今回の80回をもって、「Web2.0とはなにか?」は終了です。

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