
第79回 スタートアップ企業のありかたとは? その1
最近、米国の有名なシリアルアントレプレナー(何回も起業を繰り返す起業家)であるジェイソン・カラカニス氏が自身のブログで、スタートアップ企業の経営者に対するアドバイスを書いたところ、賛否両論を沸き起こしています。カラカニス氏の発言は、一見すると、ワーカホリック礼賛であり、劣悪な労働環境に甘んじろ、とられかねない過激な内容だったからです。彼の真意を汲み取れば、非常に素晴らしい内容だと思うのですが、ともあれ、多くの批判を受ける結果になってしまいました。 企業間もないベンチャー企業、いわゆるスタートアップで働く、ということはどういうことなのか。Web2.0の実態とはなんなのか。一緒に考えていきましょう。
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[プロフィール] お がわ・ひろし●1996年、デル、ゲートウェイの代理店としてマレーシアにて日系企業及び在住邦人向けのPC通販ベンチャーを創業するなど、アントレプレ ナーとして活躍。その後日立製作所を経てサイボウズにジョイン。feedpathの基本設計を考案し、フィードパス株式会社のCOOに就任するが、 2007年12月に退任。現在は㈱サンブリッジにて起業準備中。ブロガーとしてSpeed Feed、「Web2.0BOOK」「ビジネスブログブック」シリーズなどの著作がある。 |
シリアル・アントレプレナーとは
通常起業家というものは、学生時代か、ある程度の社会人経験を積んだ後に職を辞したうえで、自分のアイデアとわずかばかりの資金を元手に事業を興す人たちのことを指します。当然失敗する人もいるし、成功する人もいますが、起業家、といういい方をする際には、脱サラや継続性のある安定した中小企業を作るというのではなく、ベンチャー企業として大きな成功を目指すひと、というニュアンスが強いといっていいでしょう。
大きな成功、といういい方をしましたが、これはすなわちIPO(新規株式公開、上場)のことです。特に日本では、起業してベンチャーを興すということはすなわち上場を目指すということですが、それ以外の道、成功の形も存在します。それはM&A(企業売買)です。つまり、作った会社の企業価値を向上させて、数倍の価値をつけた上で他の企業に買ってもらうのです。こうして、会社を作っては売り、売っては作るタイプの起業家を、シリアル・アントレプレナー(連続起業家)と呼びます。日本ではあまり多くないタイプの起業家といえるのではないでしょうか。
今回物議を醸し出す発言をしたカラカニス氏はある意味典型的なシリアル・アントレプレナーです。他にもテクノラティの創業者であるデビッド・シフリー氏や、ネットスケープ創業者のジム・クラーク氏もシリアル・アントレプレナーであると言えるでしょう。日本では「一所懸命」という感じで、一つの会社に尽くすタイプというか、上場するまで頑張り通す形の起業家が好かれるきらいがあり、同時にM&Aを毛嫌いするムードもあるので、シリアル・アントレプレナーは存在しづらいのかもしれませんが、米国では数多くのシリアル・アントレプレナーが活躍しています。
スタートアップ時の典型的成功例とは
その間に売上を上げて、利益を出せるようになればそれにこしたことはないのですが、小さな売上を目指すより数年後の大きな成功を得るために、スタートアップの多くは開発により多くの資金を割きます。
となると、すぐにお金は無くなってしまうわけで、創業者(とCEO)がこの数ヶ月の猶予期間にやるべきことは、ファイナンスです。とはいっても創業間もない企業が銀行で融資を受けられるはずはないので、たいていは投資家からの出資をあおぐことになります。この投資ラウンドをシリーズAといいます。シリーズAで、事業会社や個人投資家、あるいはベンチャーキャピタルなどからスタートダッシュに必要な十分な資金を得ることができるかどうかが、スタートアップの最初の試練であり、成功への第一歩、といえるのです。
シリーズAで必要な資金を得たスタートアップは、うまくいけばそのままIPOに向けて順調な成長をしますが、たいていはその金額では足りず、次のステップとして新たな資金調達をはかります。これがシリーズBです。ベンチャーによってはシリーズCやシリーズDにまでいくケースもあります。IPOまでに、どのような資金調達をしていくか、そしてその過程で自社の価値をどのように向上させていくかを考え、計画表に落とし込んだものを資金政策、といいます。
スタートアップの初期段階では、以下に上手に資金政策を策定し、それを軌道修正しながらも実行に移していくかが重要で、それがスタートアップ時期の成功、といえるのです。最初のファイナンスに成功するかどうか、スタートアップの創業者やCEOのプレッシャーはすさまじいものがあるということは、想像に難くないでしょう。
カラカニス氏のアドバイスとは
さて、今回の本題は、著名なシリアル・アントレプレナーであるカラカニス氏の発言についてです。彼はスタートアップの経営者としての心得を書いたのですが、まずカンタンにどんなことを言ったのかを下記に羅列しました。ちなみに日本語は僕の訳です。これら心得は、彼のブログから引用したものです。

# Buy Macintosh computers, save money on an IT department
マックを買え。節約になる。(僕的には同感)
# Buy everyone lunch four days a week and establish a no-meetings policy. Going out for food or ording in takes at least 20-60 minutes more than walking up to the buffet and eating. If you do meetings over lunch you also save that time. So, 30 minutes a day across say four days a week is two hours a week... which is 100 hours a year. You get the idea.
週に4回はランチを社員におごれ。ランチで外出されると20-60分も返ってこないし、ランチをしながらミーティングすればいい。
# Buy cheap tables and expensive chairs.
机は安物でいい、椅子はいいモノを買え。
# Don't buy a phone system. No one will use it. No one at Mahalo has a desk phone except the admin folks. Everyone else is on IRC, chat, and their cell phone. Everyone has a cell phone, folks would rather get calls on it, and 99% of communication is NOT on the phone. Savings? At least $500 a year per person... 50 people over three years? $75-100k
電話は買うな。みんなケータイくらいもっているし、チャットできる。
# Outsource accounting and HR---such a no brainer.
総務とか人事はアウトソースしろ。
# Don't buy everyone Microsoft Office--it's too much money. Put Office on three or four common computers and use Google Docs.
MSオフィスは買うな、Google Docsでいいじゃないか。
# Use Google hosted email. $50 or free per user.... how can you beat that?!?! Why screw with an exchange server!?!?
メールもGmailでいい。メールサーバなんて買うな。
# Buy your hardest working folks computers for home. If you have folks who are willing to work an extra hour a day a week you should get them a computer for home. Once you get to three hours of work a week from home you're at 150 hours a year and that's a no brainer. Invest in equipment *if* the person is a workaholic.
働き者の社員には自宅用のパソコンも買ってやれ。それしたら自宅でもガンガン働いてくれる。
# Fire people who are not workaholics. don't love their work... come on folks, this is startup life, it's not a game. don't work at a startup if you're not into it--go work at the post office or stabucks if you're not into it you want balance in your life. For realz.
ワーカホリックじゃない社員はクビにしろ。スタートアップはゲームじゃない、時間通りバランスよく働きたいならスタバか郵便局で働くべきだ。
# Jura espresso machineGet an expensive, automatic espresso machine at the office. Going to starbucks twice a day cost $4 each time, but more importantly it costs 20 minutes. Buy a $3-5,000 Jura industrial, get the good beans, and supply the coffee room with soy, low fat, etc. 50 people making one trip a day is 20 hours of wasted time for the company, and $150 in coffee costs for the employees. Makes no sense.
美味しいエスプレッソマシンを買え。スタバにいちいち買いにいくのは時間の無駄だ。
# Stock the fridge with sodas---same drill as above.
冷蔵庫に飲み物を常に置いておけ。上と同じ理由。
# Allow folks to work off hours. Commuting sucks and is a waste of time for everyone. Let folks start at 6am or 11am and you'll cut their commute in half (at least in LA).
時差通勤を認めろ。通勤時間を節約してもらえ。
さあ、あなたはどう思いますか?
このアドバイスに対する解説+僕の意見は次回に詳しく書きます。
スタートアップとは、創業間もないベンチャーのことです。スタートアップが成功するためのステップ、およびその間の強烈なプレッシャーについてしばらく解説します。
次回をお楽しみに!!





