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Web2.0とはなにか?

第76回 ネットスケープへのレクイエム 前編


読者の皆さんは、既にほとんど使っておられないと思いますが、高機能ブラウザのパイオニアである、ネットスケープがついに、今年の3月1日にサポートを停止し、その激動の歴史にピリオドを打ちます。このネットスケープへの追悼の意を表して、彼らがなし得た革命について話をしていきます。


解説:小川 浩(株式会社サンブリッジ modiphi事業部エグゼクティブプロデューサー)

[プロフィール]

お がわ・ひろし●1996年、デル、ゲートウェイの代理店としてマレーシアにて日系企業及び在住邦人向けのPC通販ベンチャーを創業するなど、アントレプレ ナーとして活躍。その後日立製作所を経てサイボウズにジョイン。feedpathの基本設計を考案し、フィードパス株式会社のCOOに就任するが、 2007年12月に退任。現在は㈱サンブリッジにて起業準備中。ブロガーとしてSpeed Feed、「Web2.0BOOK」「ビジネスブログブック」シリーズなどの著作がある。



Webとはなにか 


今さらではありますが、WebとはWorld Wide Web(ワールドワイドウェブ)の略です。Webは、全世界規模で物理的に相互接続されたコンピュータのネットワークのことです。つまりインターネット上でテキストや画像などのデータをやり取りするためのプログラムです。

もう少し技術的な説明を少しすると、WebはHTML(ハイパーテキストマークアップランゲージ)と呼ぶ言語で書き出された文書(Webサイト)を、WWWサーバー(Webサーバーとも言います)に置き、HTTPというプロトコルを使って相互アクセスすることを可能としています。

どのWWWサーバーにどのHTML文書を置いたかを示すのがURLです。URLは本来IPアドレスと呼ぶ数字による表示ですが、人間にとって覚えづらいので、いわゆるドメイン(例:google.com)に置き換えられています。そして、Webを利用するためのソフトであるブラウザで、URLを指定してアクセスすることよってWWWサーバー上のHTML文書を読みこんでいます。つまり、Webとは、HTTPという通信プロトコル、HTMLというデータ記述方式、URLというデータのアドレス表現などの決めごとと、それらによって伝達されるデータを閲覧するソフト、ブラウザーの組み合わせです。

このWebというしくみを開発したのはイギリス出身の物理学者ティム・バーナーズ=リー氏です。ティムは、世界中の人との情報交換を実現するための手段として、テキストとテキストをリンクすることによってデータベース化するハイパーテキストというアイデアを応用してWebを考えたといいます。HTMLという比較的簡単な言語を採用したことと、Webの仕様を独占せずに一般に公開したことから、Webはインターネット上での情報共有システムのスタンダードとなりました。  

Webが普及し始めたきっかけは、Mosaicと呼ばれる高機能なブラウザーの登場です。イリノイ大学NCSA(国立スーパーコンピューター応用研究所)に所属する学生であったマーク・アンドリーセンが、友人達とともに世界初の画像表示可能なブラウザー Mosaicを開発したのは1992年のことです。Mosaicは無償で世界中に公開され、多くの人が画像付きのリッチな表現力を持ったWebを見ることが可能になります。しかも、Mosaicはウィンドウズ版のみならず、Macをサポートしており、いわゆるクロスブラウジング(複数のOSで利用可能)のはしりとなったといえます。


ネットスケープの登場とブラウザー戦争


その後Mosaicの権利関係で関係がこじれたことをきっかけに、アンドリーセンは著名な起業家のジム・クラークとともにモザイク・コミュニケーションズ、のちのネットスケープ・コミュニケーションズ(以下ネットスケープ)を創業することになりました。そして1993年、Mosaicよりはるかに高速で高機能なブラウザー、ネットスケープ・ナビゲーターを発表したのです。ネットスケープ・ナビゲーターは瞬く間に業界標準のブラウザーとして、世界中に広まり、その結果Webの普及に一役買うことになります。

ネットスケープの登場でWebの普及に弾みがつく中、この新興企業の躍進に恐怖を覚えたある巨大企業が、重い腰を上げます。他ならぬ、マイクロソフトです。1993年当時、同社はウィンドウズ3.1により世界のデスクトップ市場を独占しており、ウィンドウズというOSこそが、コンピューティングのプラットフォームでした。しかし、Webの普及によってインターネットこそが新しいコンピューティングであることが証明されたことによって、OSではなくブラウザーこそがプラットフォームになるのではないか、という論議が生まれ、それにマイクロソフトは苛立ったわけです。

そこで、ウィンドウズを引き続きプラットフォームの地位にとどめるために、新しいブラウザー(インターネット・エクスプローラー)を開発し、それを次期OSであるウィンドウズ95の一機能としてバンドルし始めます。この行為は後に独占禁止法に抵触するものとして係争の種となりますが、資金力に勝るマイクロソフトは裁判の決着がつく前にネットスケープのシェアを大きく奪うことに成功し、結果としてネットスケープはAOLに買収されてしまうわけです。ネットスケープは、したがって事業的には成功したと言いがたいのですが、ブラウザというインターネットへの窓を開けたことや、彼らに続くネット企業の成功を導いたという意味でも先逹として大きなリスペクトを得ています。また、SSLやRSSなどの技術革新はネットスケープによるものです。そして、その志は新たに設立されたMozilla Corporationが開発するオープンソース・ブラウザー Firefoxに受け継がれているのです)

マイクロソフトのこの行為は、ブラウザーあるいはWebを次世代のコンピューティングのプラットフォームとしてとらえていなかったことを如実に示しているといえるでしょう。インターネット・エクスプローラーをウィンドウズ95にバンドルしたのは、あくまでOSをプラットフォームとして考えていたことが分かるし、さらにインターネット・エクスプローラー6の開発以降、数年にわたりブラウザーの開発が停滞していたことはその明白な証拠です。その見方は、いまだに進歩していないような感じもしますが。

ともあれ、ネットスケープの退場により、インターネット・エクスプローラーが事実上唯一の世界標準ブラウザーとなったことによって、ブラウザーの仕様が統一されることになりました。このことはWebの進化に大きな影響を与えることになるのです。

ネットスケープユーザーの継続サポートはMozilla(Firefox)が担当
ネットスケープユーザーの継続サポートはMozilla(Firefox)が担当




■今回のポイント
ネットスケープは、マイクロソフトに敗れました。しかし、インターネットそのものが、いまや彼らを打ちのめそうとしています。



次回をお楽しみに!!
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